コラム

2025.11.02

足の血管が浮き出る原因と対策〜下肢静脈瘤との関連性

足の血管が浮き出る現象とは?下肢静脈瘤の可能性

足の血管が浮き出て見える症状に悩んでいませんか?この現象は単なる見た目の問題ではなく、下肢静脈瘤という病気のサインかもしれません。

足の血管が浮き出る現象は、多くの方が経験する症状です。特に立ち仕事やデスクワークが多い方、妊娠・出産を経験した女性に多く見られます。血管がボコボコと盛り上がったり、青い線のように透けて見えたりする状態は、放置すると徐々に悪化する可能性があるのです。

下肢静脈瘤は、足の静脈の逆流防止弁に異常をきたし、血液が溜まってしまうために静脈が太くなってしまう病気です。日本国内では約10人に1人の割合で見られる、実は身近な疾患なのです。

この記事では、足の血管が浮き出る原因や下肢静脈瘤との関連性、効果的な対策法について詳しく解説します。症状に心当たりのある方はぜひ最後までお読みください。

足の血管が浮き出る原因とメカニズム

なぜ足の血管は浮き出るのでしょうか?そのメカニズムを理解することが、適切な対策の第一歩となります。

私たちの体内では、心臓から送り出された血液を全身の臓器へと運ぶ「動脈」と、その血液を心臓や肺へと戻す「静脈」という2種類の血管が働いています。足の静脈は、重力に逆らって血液を心臓に戻すという重要な役割を担っているのです。

下肢の血液を心臓・肺に戻す時には、重力に逆らった力が働くことになります。その働きを支える機能として、下肢静脈には「逆流防止弁」が備わっています。この弁が正常に機能していれば、血液は一方向にのみ流れ、足に戻ることはありません。

しかし、様々な原因でこの逆流防止弁が壊れたり、変形したりすると、血液が下肢静脈に溜まり、静脈の壁が引き伸ばされて太くなります。これが足の血管が浮き出る主な原因なのです。

足の血管が浮き出る主な原因には、以下のようなものがあります:

  • 長時間の立ち仕事やデスクワーク
  • 妊娠・出産(女性ホルモンの影響と腹部圧迫)
  • 加齢による血管の弾力性低下
  • 遺伝的要因
  • 肥満
  • 激しい運動

特に女性は男性よりも発症しやすく、出産経験のある女性では約半数に見られるという調査結果もあります。

足の静脈に血液が溜まると、「うっ血」と呼ばれる状態になります。これにより足のだるさやむくみ、痛みといった症状が現れるのです。

下肢静脈瘤の種類と症状

下肢静脈瘤には、症状の現れ方や見た目の特徴によって、いくつかの種類があります。自分の症状がどのタイプに当てはまるのか確認してみましょう。

伏在静脈瘤

伏在静脈瘤は、下肢の皮膚の比較的浅いところにある最も太い静脈である伏在静脈にできる静脈瘤です。瘤(こぶ)の存在が見た目からでもわかりやすく、下肢の皮膚にボコボコした部分ができるのが特徴です。

「大伏在静脈瘤」と「小伏在静脈瘤」の2種類があり、特に多いのは膝の内側に静脈瘤ができる大伏在静脈瘤です。これは足の付け根部分にある静脈弁の機能不全が原因で起こります。小伏在静脈瘤は膝の後ろの静脈弁の機能不全が原因で、ふくらはぎに瘤ができます。

側枝静脈瘤

側枝静脈瘤は、伏在静脈から枝分かれした細い血管である側枝静脈に発生します。伏在静脈の弁に機能不全が起こったために逆流した血液によって側枝静脈が拡張することで生じます。

ふくらはぎや太ももの内側で起こるケースが多く、見た目からでも瘤がわかりやすくはある分、伏在静脈瘤より目立ちます。逆流する血液の量も少ないため、発症しても無症状か軽い症状であるケースがほとんどです。

網目状静脈瘤とクモの巣状静脈瘤

網目状静脈瘤は、皮膚のすぐ下にある細い静脈が拡張してできた静脈瘤です。太ももの外側やくるぶしに見られることが多く、網目状をしていて、青色に浮き出て見えます。

クモの巣状静脈瘤は、皮膚のすぐ下にある細い静脈が拡張し、赤い蜘蛛の巣状に浮き出て見えます。太ももの外側や膝の内側にできることが多く、中高年の女性によく見られるのが特徴です。

これらの静脈瘤は、伏在静脈瘤や側枝静脈瘤と比べると血管が細いため、ボコボコした瘤状にはなりません。自覚症状もほとんどなく、治療する必要もありませんが、見た目が気になるために治療される方もいます。

主な症状

下肢静脈瘤の主な症状には、以下のようなものがあります:

  • ふくらはぎを中心としたボコボコの血管
  • 血管が浮き出る、透けて見える
  • 色素沈着、皮膚潰瘍、皮膚硬化
  • 足のだるさ、重さ
  • 足のむくみ、火照り
  • 足のしびれ、痒み、違和感
  • 足がよくつる(こむら返り)

これらの症状は午後から夕方に強くなるのが特徴です。長時間立ち仕事をした後や、暑い日に特に悪化することがあります。

下肢静脈瘤を放置したからといって、命にかかわる事態に陥ることはありません。しかし、妊娠・出産を原因とするような一部の症例を除き、自然に治ることはなく、次第に症状が悪化していく可能性があります。

下肢静脈瘤の検査と診断方法

足の血管が浮き出る症状がある場合、まずは専門医による適切な検査と診断を受けることが重要です。下肢静脈瘤の検査には、主に以下のような方法があります。

ドプラー検査

ドプラー検査は、血管に超音波を照射し、血流速度の変化を調べる検査です。血管内での逆流の有無が分かります。プローベという器具を皮膚の上から血管に当て、ふくらはぎを手で圧迫すると血液が押し上げられ、特徴的な音として聞こえます。

ふくらはぎの圧迫を解くと、血管が正常で逆流を起こしていない場合には何も音がしませんが、逆流があると検査機からザーという音がします。この音の大きさと長さで逆流の程度を診断します。

短時間で済み、痛みを感じることもないため、下肢静脈瘤の診断に必要な基本的な情報を得るのに適しています。

カラードプラー検査(超音波検査)

カラードプラー検査は、血管に超音波を照射し、その血流をカラー画像で表示する検査です。血液の逆流や血管の内径、血流の速度などが分かります。

現在では最も一般的で有効な検査とされており、血管の太さや逆流を視覚的に画像で確認することができます。血流の様子を色分けして表示するため、逆流の程度や範囲を詳細に把握することが可能です。

これらの検査によって、下肢静脈瘤の有無だけでなく、その程度や範囲、原因となっている血管の特定も可能になります。検査結果に基づいて、医師は最適な治療法を提案します。

足のむくみが気になる方は、簡単なセルフチェックとして、夕方に足首のサイズを測定してみましょう。朝と比べて明らかな差がある場合は、下肢静脈瘤の可能性があります。また、足の血管が目立つ、足がだるい、こむら返りがあるといった症状がある方は、専門医への相談をおすすめします。

下肢静脈瘤の効果的な治療法

下肢静脈瘤の治療法は、症状の程度や種類によって異なります。軽度の場合は保存的治療から始め、症状が重い場合や美容的な改善を希望する場合は外科的治療を検討することになります。

保存的治療:弾性ストッキング

軽度の下肢静脈瘤や、手術ができない状況の方には、医療用弾性ストッキングの着用が推奨されます。弾性ストッキングは、足首から上に向かって圧力が徐々に弱くなる「段階圧」という特徴があり、血液の逆流を抑えてむくみを軽減する効果があります。

市販の着圧ソックスとは圧迫力や耐久性が異なるため、必ず医師の処方に基づいて適切なサイズと圧迫力のものを選ぶことが重要です。朝起きたら履き、寝る前に脱ぐというのが基本的な使用方法です。

間違った弾性ストッキングを選ぶと、むくみがひどくなったり、締め付けが強すぎて血行障害を起こしたりする可能性があるので注意が必要です。

日帰り手術による治療

症状が進行している場合や、美容的な改善を希望する場合は、以下のような日帰り手術が選択肢となります。

高周波カテーテル治療(RFA)

膝のあたりの血管からカテーテルを挿入し、高周波によって加熱して静脈瘤を焼灼します。一般に、レーザーカテーテル治療と比べて、より高い効果が期待できるとされています。局所麻酔で行われ、傷跡も最小限に抑えられるため、患者さんの負担が少ないのが特徴です。

レーザーカテーテル治療(EVLA)

レーザーを用いて血管内から静脈を焼灼する治療法です。カテーテルの先端からレーザーを照射し、静脈の内側から熱を加えて閉塞させます。高周波治療と同様に局所麻酔で行われ、日帰りで受けられます。

グルー治療

医療用瞬間接着剤(シアノアクリレート)を、カテーテルを通して静脈瘤へと注入する治療です。これにより、静脈瘤の血管を閉塞させます。熱を使わないため周囲組織へのダメージが少なく、術後の痛みも少ないのが特徴です。また、弾性ストッキングの着用が不要なため、術後の生活制限が少ないというメリットもあります。

ストリッピング手術

脚の付け根に約2センチの切開を加えて、大伏在静脈を切断します。その上で、膝の内側に約1センチの切開を加え、ストリッピングワイヤーを挿入します。最後に、ワイヤーを大伏在静脈ごと抜去します。根治性の高い治療ですが、他の治療法と比べると侵襲性が高いため、現在では血管内治療が第一選択となることが多いです。

硬化療法

極細の針を静脈瘤に刺し、硬化剤を注入することで、静脈瘤の血管を固める治療です。その後、弾性ストッキングを着用して残った血管を潰します。小さな静脈瘤や網目状静脈瘤、クモの巣状静脈瘤に適しています。

これらの治療法は、患者さんの症状や静脈瘤の状態、生活スタイルなどを考慮して選択されます。治療後は、日常生活での予防策を継続することで、再発を防ぐことが重要です。

日常生活での予防と対策

下肢静脈瘤の予防や症状の軽減には、日常生活での対策が非常に重要です。以下のようなセルフケアを心がけましょう。

立ち仕事やデスクワークが多い方は、長時間同じ姿勢を続けないよう意識することが大切です。1時間に一度は足を動かしたり、つま先立ちや足首の回転運動などの簡単なエクササイズを行いましょう。

ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」とも呼ばれ、血液を心臓に戻すポンプの役割を果たします。適度な運動でこの筋肉を鍛えることで、静脈の血流を改善することができます。ウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。

足を高く上げて休むことも効果的です。就寝時に足の下に枕を置いたり、休憩時に足を心臓より高い位置に上げたりすることで、血液の流れを促進します。

  • 長時間の立ち仕事やデスクワークを避ける
  • 適度な運動でふくらはぎの筋肉を鍛える
  • 休憩時に足を高く上げる
  • 肥満を防ぐための食生活の見直し
  • きつい下着や靴下を避ける
  • 熱いお風呂や長時間の入浴を避ける
  • 医師に処方された弾性ストッキングを正しく着用する

これらの対策は、下肢静脈瘤の予防だけでなく、すでに症状がある方の症状軽減にも役立ちます。しかし、すでに明らかな静脈瘤がある場合は、セルフケアだけでは改善が難しいことも多いため、専門医への相談をおすすめします。

どうですか?足の血管が浮き出る原因と下肢静脈瘤の関連性について理解が深まりましたか?

下肢静脈瘤は決して珍しい病気ではなく、日本国内では約10人に1人の割合で見られる身近な疾患です。早期発見・早期治療が重要なので、足の血管が浮き出る、足がだるい、むくむなどの症状がある方は、一度専門医に相談することをおすすめします。

現在では、痛みや負担の少ない日帰り治療も多く開発されており、早期に適切な治療を受けることで、症状の改善や進行の予防が期待できます。日常生活での予防策と合わせて、足の健康を守りましょう。

足の血管の浮き出りや下肢静脈瘤でお悩みの方は、血管外科と整形外科を専門とする西梅田静脈瘤・痛みのクリニックにご相談ください。下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医・実施医の資格を持つ医師による専門的な治療を提供しています。日帰り手術も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。