コラム

2025.07.04

下肢静脈瘤の初期症状を見逃さないための7つのサイン

下肢静脈瘤とは?足の血管がコブになる病気の基本

下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)とは、足の表面を走る静脈がコブのように膨らむ病気です。静脈内にある逆流防止弁が壊れたり緩んだりすることで、血液が下方向へ逆流し、足に滞留するようになります。その結果、血管が内側から押し広げられて蛇行し、皮膚表面に青く浮き出てくるのです。

この病気は命に関わるものではありませんが、慢性的な足のだるさやむくみ、重だるさ、夜間のこむら返りなど、生活の質(QOL)を低下させるさまざまな症状を引き起こします。また、進行すると皮膚の変色や潰瘍といった重篤な合併症を招くこともあります。

発症には体質や遺伝のほか、長時間の立ち仕事、妊娠・出産などの環境要因も関係しています。特に出産経験のある女性の約半数が経験しているといわれ、30歳を超えると潜在的な患者も増加すると報告されています。

初期症状は見た目に出ないことも。7つのサインを見逃さないで

多くの方が「血管がボコボコしてきたら下肢静脈瘤」と思いがちですが、ぼこぼこした血管がなくとも気づかぬうちに下肢静脈瘤になっていることもあり、見た目に変化が現れる前の初期段階にこそ、重要な兆候があります。これらを見逃すと、気づいたときには病気が進行してしまっている可能性も。

ここでは、初期段階で現れる7つのサインを詳しく解説します。ひとつでも当てはまれば、早期に専門医の受診を検討してください。

1. 足のむくみ(特に夕方に悪化)

朝は普通に履けていた靴が、夕方になるときつくなる——このような経験はありませんか?これは下肢静脈瘤のごく初期に現れるむくみのサインです。

静脈の逆流が始まると、血液やリンパ液がうまく戻れず、重力の影響で足に溜まりやすくなります。特に、長時間の立ち仕事やデスクワークなど、同じ姿勢を続けている方は注意が必要です。

むくみは足首からふくらはぎにかけて現れやすく、指で押すとしばらく跡が残るのが特徴です。また、むくみは朝よりも夕方に悪化する傾向が強く、毎日続く場合は要注意です。

2. 足の重だるさ・疲労感

「足が鉛のように重い」「階段を上るのがつらい」など、原因のはっきりしない重だるさを感じることがあります。これは足に溜まった血液や老廃物が、静脈の逆流でうまく排出されないためです。

立ち仕事やデスクワークの後に強く感じることが多く、座って足を上げると楽になるという場合、下肢静脈瘤の可能性が高まります。初期の段階では一時的に症状が消えることもありますが、繰り返し起こる場合は注意が必要です。

3. 夜間や明け方のこむら返り

睡眠中や起床時にふくらはぎが激しくつる「こむら返り」も、初期症状の一つです。これは足の静脈の血流障害が原因で筋肉が酸欠状態になり、収縮異常を起こしている状態です。

静脈の逆流によって酸素供給が不十分になり、電解質のバランスも崩れることでこむら返りが発生しやすくなります。頻繁にこむら返りが起こるようになったら、下肢静脈瘤の初期段階を疑いましょう。

4. 皮膚の表面に静脈が浮き出る

目に見える変化が出始める初期の段階では、細く青い血管が皮膚の表面に浮き出て見えることがあります。特にふくらはぎや足首周辺にくねくねと蛇行した血管が確認できる場合、それは静脈が逆流を始めているサインかもしれません。

この段階での発見であれば、圧迫療法や生活習慣の見直しなど、比較的軽い処置で改善が期待できます。

5. 足のほてりやかゆみ

血流が滞ると、皮膚の表面温度が上昇し、夜間に足が熱く感じることがあります。また、皮膚が乾燥しやすくなり、かゆみが出ることも。これは皮膚の栄養状態が悪化しているサインです。

この段階で保湿や冷却などの対処を行っても、根本原因が改善されない限り症状は繰り返されます。軽度の皮膚トラブルも、静脈瘤の兆候である可能性があるのです。

6. 皮膚の色素沈着(茶色い変色)

進行段階に入ると、足首まわりに茶褐色の変色が現れることがあります。これは血液中の赤血球成分が皮膚に漏れ出し、酸化されて沈着することで起こります。

色素沈着は一度できると自然に消えることは少なく、放置すると皮膚が硬くなったり、かゆみ・痛みを伴うこともあります。このような症状が見られたら、自己判断せずに専門医の診察を受けることが重要です。

7. うっ滞性皮膚炎・潰瘍

最終的に起こり得る合併症が、皮膚の炎症や潰瘍(かいよう)です。足首の周囲が赤く腫れたり、皮膚が破れて滲出液が出るような状態にまで進行すると、治癒に時間がかかります。

潰瘍は非常に痛みを伴い、歩行や入浴などの日常生活にも支障をきたします。さらに感染リスクも高まるため、速やかな医療介入が必要です。

専門医による早期診断と治療がカギ

これらの症状は、単なる疲労や加齢のせいと思いがちですが、下肢静脈瘤が背後に隠れている可能性があります。早期に超音波検査(エコー)を受けることで、静脈弁の機能不全や血液の逆流状態を確認できます。

特に、下肢静脈瘤の専門医がいるクリニックであれば、診断から治療まで一貫して行うことができます。治療には弾性ストッキングなどの保存的療法のほか、日帰りで受けられるカテーテル治療もあり、早期なら治療成績も良好です。

まとめ:下肢静脈瘤の初期症状は”見えない”サインから始まる

下肢静脈瘤は、最初から血管がボコボコと浮き出るわけではありません。むくみや重だるさ、夜間のこむら返りなど、日常の小さな不調の中に”見逃せないサイン”が潜んでいます。

以下の7つの兆候を覚えておきましょう:

  1. 足のむくみ(特に夕方)

  2. 足の重だるさ・疲労感

  3. 夜間や明け方のこむら返り

  4. 血管が皮膚に浮き出る

  5. 足のほてり・かゆみ

  6. 茶色い皮膚の変色(色素沈着)

  7. うっ滞性皮膚炎や潰瘍

どれか一つでも思い当たるなら、下肢静脈瘤の専門医に相談してみましょう。

【専門医による診療のご案内】

西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、下肢静脈瘤に特化した専門医が、エコー診断から最新の日帰り手術まで対応。気になる症状がある方はお気軽にご相談ください。

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リウマチと寿命の関係について

著者

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

略歴

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

所属学会・資格

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。