骨盤内うっ血症候群

女性の3人に1人がかかる「骨盤内うっ血症候群」とは?

女性の3人に1人がかかる「骨盤内うっ血症候群」とは?通常であれば血液は卵巣から重力に逆らって、静脈を通り、心臓へ血液が返っていきますが、骨盤内うっ血症候群では静脈の弁不全により、重力に逆らえず、骨盤に血液がたまり、特に夕方や立ち仕事、重労働時などに下腹部の痛みやだるさなどの慢性骨盤痛が出現します。

骨盤内うっ血症候群の原因となりやすい人

骨盤内うっ血症候群の原因となりやすい人妊娠、出産、生理などで血流が増加し、静脈に負担がかかることによって静脈弁が壊れることが原因とされています。
他にはホルモンが骨盤うっ血症候群に関与している可能性があります。エストロゲンは、静脈をより拡張します。
これが、閉経後にもこの症状が生じることがあり、その原因としてエストロゲンなどのホルモンが静脈を拡張し、骨盤うっ血症候群を引き起こす可能性があります。

骨盤内うっ血症候群のリスク

妊娠時に子宮や卵巣に血流が豊富になり、静脈弁に圧がかかりやすくなるため、特に複数の子供を出産した場合、骨盤内うっ血症候群のリスクが高くなる可能性があります。
また、ご家族の中に骨盤うっ血症候群の方がいらっしゃる場合も、リスクが高くなる可能性があります。

骨盤内うっ血症候群の症状

骨盤うっ血症候群の主な症状は、6カ月以上続く慢性の骨盤痛です。
この痛みは、多くの場合、妊娠中または妊娠後に初めて起こり、妊娠後、悪化することもあります。重い感じや鋭い痛みを呈することもあります。通常、痛むのは左側が多いとされています(6~7割)が、時には、右側だけもしくは両側に痛みを感じることもあります。
また痛みは立ち仕事や夕方ごろにかけて悪化し、横になると症状が軽くなります

痛みを悪化させる要因

痛みを悪化させる要因

以下のことで症状が悪化する可能性があります

  • 姿勢を変える
  • 性行為をする
  • 長時間の立ち仕事
  • 長時間歩くこと
  • 重労働

骨盤内うっ血症候群の診断

骨盤内うっ血症候群の診断

骨盤うっ血症候群の診断は簡単ではありません。骨盤の痛みは一般的で、さまざまな原因があります。一般的な診断の流れとしてはまず婦人科、泌尿器科、消化器内科で、他に異常がないかを確認します。
異常がなければ、造影CTや超音波、MRIを行い、卵巣静脈の逆流、拡張などが見られた場合、骨盤内うっ血症候群が疑われます。血管造影で実際に卵巣静脈が逆流しているかどうかを確認し、初めて確定診断となります。

骨盤内うっ血症候群の治療

当院は、骨盤内うっ血症候群に対するカテーテル治療の経験数が、日本で有数のドクターが診療を担当いたします。
JSAWIという、婦人科医、放射線診断医、血管内治療医が一同に集まる学会でもレクチャーもさせていただいております。
安心してご相談ください。

治療は大きく内服薬やホルモン療法による保存的、カテーテル治療、手術に分けられます。

ゴナドトロピン放出ホルモン薬

卵巣の機能を阻害し、痛みを和らげます。

黄体ホルモン剤

痛みを和らげる効果があります。

漢方薬

桂枝茯苓丸

経皮的静脈塞栓術

経静脈的にカテーテルで逆流した卵巣静脈を金属コイルや液体塞栓物質、硬化剤、ゼラチンスポンジなどで塞栓する方法。

手術

逆流した静脈を結紮する手術、もしくは子宮と卵巣を摘出する手術

女性の3人に1人がかかる「骨盤内うっ血症候群」とは?

一般的にはまず薬の服用を開始し、それでも症状が緩和されない場合、カテーテルや手術が必要となります。 当院では薬物療法では痛みのコントロールができない患者様に対してカテーテルによる低侵襲な治療を積極的に行っています。
骨盤内うっ血症候群に対するカテーテル治療は欧米では広く認知されており、エビデンスのある治療です。
具体的には右足の付け根を局所麻酔後、約3mmの細い管(カテーテル)を静脈内へ挿入し、X線透視を見ながらカテーテルを両側の卵巣静脈まで進めます。卵巣静脈の造影で機能不全・逆流を来している卵巣静脈を確認した後、液状塞栓物質や金属コイルを用いて塞栓を行います。 手術と違い、針穴程度の傷で、治療中の痛みをほぼ感じる事なく、治療可能です。治療後はカテーテルを抜去して穿刺部位を圧迫止血します。止血後は約30~1時間の安静が必要となりますが、当日歩いて帰宅することができます。
また効果がある方に関しては当日から症状が軽くなり3カ月程度かけて徐々に症状が緩和します。 治療の奏効率としては文献によりますが、80~90%です。

カテーテル治療の有効性・安全性

合併症はほとんど稀です。 またカテーテル治療により、症状が悪くなることはほとんど報告されていません。 骨盤内うっ血症候群による不妊症(性交時痛など)の患者さんに対してもカテーテル治療は行われており、カテーテル治療前後でも月経周期やホルモンの状態に変化は見られません。

症例

60歳代女性

1年ほど前から誘因なく、左優位に慢性骨盤痛を自覚した。
婦人科にて超音波で卵巣静脈の拡張が指摘された(図1)。
造影CTでは、左卵巣静脈の拡張および、逆流を疑う所見が見られたため(図2~4)、骨盤内うっ血症候群が疑われた。
確定診断目的に卵巣静脈にカテーテルを挿入し、左卵巣静脈の逆流を認めたため(図5)、骨盤内うっ血症候群が診断された(図6)。
金属コイルにて左卵巣静脈を塞栓し、術当日~翌日にかけて症状の改善を自覚した。
2年経過後の現在でも症状の改善を維持している。

骨盤内超音波(図1) 造影CT(図2) 造影CT(図3)
骨盤内超音波(図1)卵巣静脈の拡張(左図)及び
逆流を疑う血流(右図)を認める
造影CT左卵巣静脈の拡張および、
卵巣静脈の造影剤の濃染
造影CT骨盤内静脈の拡張および蛇行
造影CT(図4) カテーテルによる選択的左卵巣静脈造影
(図5)
金属コイルで左卵巣静脈を塞栓後の血管造影
(図6)
造影CT左巣静脈の拡張 カテーテルによる選択的左卵巣静脈造影通常であれば卵巣静脈は描出されませんが、
逆流し、左巣静脈および右卵巣静脈が描出されている
金属コイルで左卵巣静脈を塞栓後の血管造影左卵巣静脈の描出は消失し、手技終了とした
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