コラム

2025.07.16

下肢静脈瘤と塩分制限の効果〜医師が教える最適な食事法

下肢静脈瘤とは?症状と原因を理解しよう

下肢静脈瘤は足の静脈にある逆流防止弁が壊れることで血液が逆流し、静脈血がうまく心臓に帰れずうっ滞する疾患です。

足がだるい、重い、むくむと、ぼこぼこした血管やくり返す蜂窩織炎いった症状に悩まされている方は、下肢静脈瘤の可能性があります。進行すると見た目の問題だけでなく、夜間のこむら返りや皮膚炎、さらには潰瘍といった深刻な症状が現れることもあるのです。

下肢静脈瘤は女性に多く見られる疾患で、成人の約半数に何らかの症状が見られるほど身近な病気です。命に関わることは少ないものの、日常生活の質を大きく低下させる要因となります。

代表的なリスク要因としては、遺伝的要因、加齢、妊娠、長時間の立ち仕事や座り仕事、そして肥満などが挙げられます。特に美容師や調理師など立ち仕事の方は発症リスクが高いとされています。

どうですか?心当たりはありませんか?

塩分摂取と下肢静脈瘤の関係性

塩分の過剰摂取は下肢静脈瘤の症状を悪化させる要因の一つです。塩分(ナトリウム)を多く摂ると、体内の水分バランスが崩れ、むくみが生じやすくなります。

むくみによって足の静脈にかかる圧力が増加すると、すでに弱っている静脈の壁や弁にさらなる負担がかかります。これにより、下肢静脈瘤の症状が悪化する悪循環に陥ってしまうのです。

塩分制限は下肢静脈瘤のむくみ防止に有効で、静脈への負担軽減に役立ちます。具体的には、カップ麺や梅干し、たらこなどの塩漬け品を減らしたり、しょうゆやソースの量を控えめにするといった工夫が効果的です。

味が物足りなく感じる場合は、だしやスパイス、酸味を効かせたメニューを取り入れると良いでしょう。これらは塩分に頼らずに風味を楽しむ方法として有効です。

ただし、食事療法だけで下肢静脈瘤を完全に治すことはできません。塩分制限は症状の緩和や進行の抑制に役立つものの、すでに拡張した静脈を元に戻すわけではないことを理解しておきましょう。

医師が推奨する下肢静脈瘤に効果的な食事法

下肢静脈瘤の症状改善には、塩分制限だけでなく総合的な食事管理が重要です。血管の健康を維持し、症状を緩和するための食事法をご紹介します。

まず大切なのは繊維質の多い食品を積極的に摂ることです。便秘は腹圧を高め、下肢の静脈に負担をかけるため、食物繊維を摂取して便通を整えることが重要になります。

血流改善に役立つ栄養素と食品例

血管の健康を維持するためには、以下の栄養素を意識的に摂取しましょう。

  • 食物繊維:全粒穀物、野菜、果物、豆類、きのこ、海藻類
  • 抗酸化物質(ビタミンC・E):ベリー類、柑橘類、葉物野菜、ナッツ類
  • オメガ3脂肪酸:サーモン、マグロ、サバなどの青魚、亜麻仁油、クルミ

私が患者さんによく伝えているのは、水分補給の重要性です。十分な水分摂取は血液の流動性を保ち、循環を促進します。水やカフェインの少ないお茶を1日2リットル程度飲むことを目標にしましょう。

一方で、塩分の多い加工食品やインスタント食品、外食は控えめにすることが大切です。これらには想像以上の塩分が含まれていることが多いのです。

体重管理の重要性

肥満は下肢静脈瘤の発生リスクの一つです。体重が増えると下肢の静脈にかかる圧力も増加するため、適正体重の維持が重要になります。

急激なダイエットは逆効果になることもあるため、毎日の食事量を少しだけ減らす方法が続けやすいでしょう。例えば、毎日の食事の量を100kcalだけ減らすと、2ヶ月ほどで1kgの減量が期待できます。

ご飯なら茶碗半分、ビスケットなら3〜4枚、ビールなら250mlが100kcalに相当します。このような小さな変化から始めてみてはいかがでしょうか。

下肢静脈瘤の症状を緩和する生活習慣

食事管理と並行して、日常生活での工夫も下肢静脈瘤の症状緩和に大きく貢献します。特に運動と姿勢の管理は重要なポイントです。

下肢静脈瘤の方におすすめの運動として、ウォーキングや軽いジョギング、自転車こぎ、水中ウォーキングなどが挙げられます。これらの運動はふくらはぎの筋肉を動かし、「第二の心臓」と呼ばれるポンプ機能を活性化させます。

ただし、下肢静脈瘤がある方は避けるべき運動もあります。加圧トレーニングや高重量を扱う筋力トレーニング、フルマラソンなどの過度な運動は静脈への負担を増やし、症状を悪化させる可能性があります。

長時間の同じ姿勢も避けるべきです。立ち仕事や座り仕事が多い方は、1時間に1度は姿勢を変えたり、簡単なストレッチをしたりすることをお勧めします。

圧迫療法の活用

弾性ストッキングや弾性包帯を用いた圧迫療法も効果的です。これらは静脈の拡張を物理的に抑え、血液の逆流を防ぐ働きがあります。特に症状が出始めた初期段階での使用が推奨されます。

就寝時には足を少し高くして寝ることも効果的です。これにより、重力に逆らって血液が心臓に戻りやすくなります。枕やクッションを使って10〜15cm程度足を高くするだけでも効果が期待できます。

あなたの日常生活に取り入れやすい方法から始めてみませんか?

下肢静脈瘤の治療法と最新動向

食事療法や生活習慣の改善だけでは症状が改善しない場合は、医療機関での治療を検討する必要があります。現在の下肢静脈瘤治療は、体への負担が少ない日帰り手術が主流となっています。

最新の治療法としては、「レーザー治療」「高周波治療」「グルー治療」などがあります。これらは静脈内にカテーテルを挿入して内側から処置を行う方法で、傷跡も小さく、日帰りでの治療が可能です。

特に2019年12月から保険適用となった「グルー治療」は、瞬間接着剤(グルー)を静脈に注入して塞ぐ方法で、静脈を焼かないため局所麻酔も必要なく、治療後の制限もほとんどありません。

これらの治療法はいずれも効果はほぼ同等で、患者さんの状態や希望に応じて最適な方法を選択することができます。治療を検討される際は、下肢静脈瘤の治療に精通した専門医に相談することをお勧めします。

治療のタイミング

下肢静脈瘤は放置すると徐々に進行し、症状が悪化する傾向にあります。足のだるさや痛み、むくみなどの症状が日常生活に支障をきたす場合は、早めに専門医に相談することが大切です。

特に、皮膚の変色や硬化、湿疹や潰瘍などの皮膚症状が現れている場合は、早急な治療が必要です。これらの症状は静脈うっ滞が進行している証拠であり、適切な治療が遅れると回復が難しくなることがあります。

下肢静脈瘤の治療は年々進化しており、以前よりも痛みや負担が少なく、効果的な方法が増えています。症状でお悩みの方は、専門医療機関での相談をご検討ください。

まとめ:下肢静脈瘤と上手に付き合うための食事と生活

下肢静脈瘤の症状改善と進行予防には、食事管理と生活習慣の見直しが重要です。特に塩分制限はむくみを軽減し、静脈への負担を減らす効果があります。

食事面では、塩分を控えるだけでなく、食物繊維や抗酸化物質を豊富に含む食品を積極的に摂取し、適切な水分補給を心がけましょう。また、適正体重の維持も静脈への負担軽減に効果的です。

生活習慣においては、適度な運動でふくらはぎの筋肉を活性化させ、長時間の同じ姿勢を避けることが大切です。弾性ストッキングの活用や就寝時の足の位置にも気を配りましょう。

下肢静脈瘤は特定の食べ物で治る病気ではありませんが、血管にやさしい食習慣や運動を意識することで、予防や悪化の防止につながります。症状が気になる方は、専門医への相談をお勧めします。

西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、下肢静脈瘤の日帰り手術や最新の治療法を提供しています。血管外科の専門医による適切な診断と治療で、あなたの足の健康をサポートいたします。お気軽にご相談ください。

詳しくは西梅田静脈瘤・痛みのクリニックのホームページをご覧ください

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。