コラム

2025.07.30

下肢静脈瘤と水分摂取の重要性〜適切な水分量と効果的な摂取法

下肢静脈瘤と水分摂取の関係性

下肢静脈瘤は、足の静脈が拡張して蛇行し、血液が逆流してしまう状態です。静脈内にある「逆流防止弁の機能不全」が生じることで発症することが多いとされています。この状態になると、足のむくみやだるさ、こむら返りなどの不快な症状が現れることがあります。

実は、この下肢静脈瘤と水分摂取には密接な関係があるのをご存知でしょうか?

多くの方が「むくみは水分の取りすぎが原因」と考えがちですが、実はその逆のケースも少なくありません。水分不足が足のむくみを悪化させる可能性があるのです。体内の水分が不足すると、体は自然に体内の水分を保持しようとするメカニズムが働き、結果として下半身に余分な水分がたまりやすくなります。

血管外科の専門医として、下肢静脈瘤の患者さんに適切な水分摂取の重要性をお伝えしています。体重50kgの方が1日に摂取する水分量の目安は1.5リットルとされていますが、個人差があるため、自分の体調や活動量に合わせた調整が必要です。

特に下肢静脈瘤がある方は、血液の流れをスムーズにするために適切な水分補給が欠かせません。水分が不足すると血液がドロドロになり、血栓ができやすい状態になってしまうからです。

下肢静脈瘤患者さんが知っておくべき水分摂取の基本

下肢静脈瘤の症状改善や予防には、適切な水分摂取が重要です。ただ単に「水をたくさん飲む」だけでは効果的とは言えません。

まず知っておきたいのは、一度に大量の水分を摂るよりも、こまめに少量ずつ摂取する方が理想的だということです。これにより、体内の水分バランスが安定し、血液の流れがスムーズになります。

また、すべての飲み物が水分補給に適しているわけではありません。アルコールやカフェイン飲料(コーヒーや紅茶、一部のお茶など)は、飲みすぎると利尿作用により尿量が増え、かえって体内の水分が失われることがあります。下肢静脈瘤の方は特に注意が必要です。

水分摂取のタイミングも重要です。朝起きたとき、食事の前後、運動の前後、そして就寝前に少量の水分を摂ることで、一日を通して水分バランスを保ちやすくなります。特に起床時は、夜間の水分不足を補うために200ml程度の水を飲むことをお勧めしています。

下肢静脈瘤の症状がある方は、足の血流を改善するために、水分摂取と併せて適度な運動も取り入れることが効果的です。ふくらはぎの筋肉を動かすことで、静脈内の血液が心臓に戻りやすくなります。

ただし、塩分の摂りすぎには注意が必要です。塩分を過剰に摂取すると、体内に余分な水分が溜まりやすくなり、むくみの原因となります。バランスの良い食事と適切な水分摂取を心がけましょう。

効果的な水分摂取法と下肢静脈瘤症状の緩和

下肢静脈瘤の症状緩和には、効果的な水分摂取法を知ることが大切です。単に水を飲むだけでなく、どのように飲むかが重要なポイントになります。

常温の水を少しずつ飲むことをお勧めします。冷たすぎる水は胃腸に負担をかけ、体が吸収するまでに時間がかかります。一方、常温の水は体に吸収されやすく、血液循環の改善に効果的です。

水分摂取と一緒に、足を少し高くして休むことも効果的です。例えば、夕方に水分を摂りながら15分程度足を心臓より高い位置に上げると、静脈の血液が心臓に戻りやすくなり、むくみの軽減につながります。

私が臨床で見てきた多くの患者さんは、水分摂取を意識するだけでなく、同時に足の運動も取り入れることで症状の改善を実感されています。例えば、水を飲んだ後に足首を回す、つま先立ちをするなどの簡単な運動を行うと、ふくらはぎの筋肉が収縮して血液循環が促進されます。

水分摂取のタイミングも大切です。特に長時間同じ姿勢でいる前後には意識的に水分を摂ることをお勧めします。デスクワークが長い方は、1時間に一度は水分を摂りながら、少し立ち上がって足を動かすとよいでしょう。

また、食事と一緒に水分を摂ることも効果的です。食事中の水分摂取は消化を助けるだけでなく、食事に含まれる塩分の影響を緩和する効果もあります。

どうでしょうか? 日常生活の中で少し意識するだけで、水分摂取の効果を高めることができるのです。

下肢静脈瘤予防のための適切な水分量

下肢静脈瘤の予防や症状緩和のためには、適切な水分量を知ることが重要です。では、実際にどれくらいの水分を摂ればよいのでしょうか?

一般的には、体重1kgあたり約30mlの水分が必要とされています。例えば、体重60kgの方なら1日に約1.8リットルの水分摂取が目安となります。ただし、気温や湿度、運動量、健康状態によって必要な水分量は変わってきます。

下肢静脈瘤がある方や予防したい方は、少し多めの水分摂取を心がけると良いでしょう。特に暑い季節や運動後は、通常より多めの水分補給が必要です。

ただし、一度に大量の水を飲むのではなく、1日を通してこまめに水分を摂ることが大切です。朝起きたとき、各食事の前後、運動の前後、そして就寝前に少量ずつ飲むことをお勧めします。

水分摂取の目安として、尿の色をチェックする方法があります。健康的な水分バランスが保たれていれば、尿の色は薄い黄色になります。濃い黄色の場合は水分不足のサインかもしれません。

私の臨床経験では、水分摂取を適切に行うことで、下肢静脈瘤の症状が軽減したケースをたくさん見てきました。ある60代の女性患者さんは、水分摂取を意識的に増やしたことで、足のむくみやだるさが明らかに改善しました。

水分摂取と一緒に、塩分の摂りすぎにも注意しましょう。塩分の過剰摂取は体内に水分を溜め込む原因となり、むくみを悪化させることがあります。バランスの良い食事と適切な水分摂取の組み合わせが、下肢静脈瘤予防の鍵となります。

あなたも今日から、意識的に水分摂取を心がけてみませんか?

水分摂取と併用したい下肢静脈瘤対策

適切な水分摂取は下肢静脈瘤対策の重要な要素ですが、より効果的な予防や症状緩和のためには、他の対策と併用することをお勧めします。

まず重要なのが、長時間の立ち姿勢や座り姿勢を避けることです。同じ姿勢が続くと、足の筋肉が動かず、血液循環が悪くなります。1時間に一度は姿勢を変えたり、簡単なストレッチをしたりすることで、血流を促進しましょう。

弾性ストッキングの着用も効果的です。弾性ストッキングは足を外側から適度に圧迫し、静脈内の血液が逆流するのを防ぎます。特に立ち仕事や座り仕事が長い方は、ストッキングを着用することで足の疲れやむくみが軽減されることが多いです。

就寝時に足を少し高くすることも良い方法です。足を心臓より少し高い位置に保つことで、静脈の血液が心臓に戻りやすくなります。座布団1枚分程度の高さでも効果があります。

適度な運動も欠かせません。特にウォーキングや水中歩行、自転車こぎなどの有酸素運動は、ふくらはぎの筋肉を動かし、血液循環を促進します。激しい運動よりも、軽い負荷で定期的に行う運動が効果的です。

私がいつも患者さんにお勧めしているのが「足の指グーパー体操」です。座った状態で、足の指をグーパーと閉じたり開いたりするのを繰り返します。足の指で布をつかむようなイメージで行うと良いでしょう。1回の運動につき10回ほどグーパーを繰り返し、これを1日に数回行うことで、足の筋肉がほぐれ、血液循環が改善します。

食生活の改善も大切です。塩分の摂りすぎを避け、カリウムを多く含む野菜や果物を積極的に摂ることで、むくみの予防につながります。

これらの対策を水分摂取と併用することで、下肢静脈瘤の予防効果が高まります。あなたの生活スタイルに合わせて、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

下肢静脈瘤患者さんの水分摂取Q&A

下肢静脈瘤と水分摂取に関して、患者さんからよく質問される内容をQ&A形式でご紹介します。日常生活での疑問解消にお役立てください。

Q1: 水分を多く摂るとむくみが悪化しませんか?

多くの方が「水分を摂るとむくみが悪化する」と心配されますが、実は適切な水分摂取はむしろむくみの改善に役立ちます。水分不足になると、体は水分を保持しようとして、かえってむくみを悪化させることがあります。

ただし、一度に大量の水分を摂取するのではなく、1日を通してこまめに少量ずつ飲むことが重要です。また、塩分の摂りすぎにも注意しましょう。塩分は体内に水分を溜め込む原因となります。

Q2: どのような飲み物が下肢静脈瘤に良いですか?

基本的には水やノンカフェインのハーブティーがおすすめです。カフェインやアルコールには利尿作用があり、飲みすぎると体内の水分バランスを崩す可能性があります。

また、スポーツドリンクは糖分や塩分が含まれているため、日常的な水分補給には適していません。激しい運動後や暑い日の屋外活動後など、汗をたくさんかいた時に限定して飲むようにしましょう。

Q3: 水分摂取の効果はどれくらいで実感できますか?

個人差はありますが、適切な水分摂取を始めてから1〜2週間程度で、むくみの軽減や足のだるさの改善を感じる方が多いです。ただし、下肢静脈瘤の状態や生活習慣によって効果の現れ方は異なります。

継続することが大切ですので、すぐに効果が感じられなくても、毎日の習慣として続けてみてください。

Q4: 夜間に水分を摂ると、トイレで起きてしまいます。どうすれば良いですか?

就寝前2〜3時間は水分摂取を控えめにすると、夜間のトイレ回数を減らせる可能性があります。その代わり、日中はこまめに水分を摂るように心がけましょう。

また、就寝前に足を少し高くして休むことで、日中に足に溜まった水分が排出されやすくなり、むくみの軽減につながります。

Q5: 下肢静脈瘤の手術を予定していますが、手術前後の水分摂取で注意することはありますか?

手術前は医師の指示に従ってください。一般的には、手術の種類や麻酔方法によって絶飲食の時間が指示されます。

手術後は、血栓予防のためにも適切な水分摂取が重要です。手術後の回復期には、医師の指示に従いながら、こまめに水分を摂るよう心がけましょう。

これらの質問以外にも、個別の状況に応じた疑問があれば、遠慮なく医師や医療スタッフに相談してください。下肢静脈瘤の治療や予防は、専門家のアドバイスを受けながら進めることが大切です。

まとめ:下肢静脈瘤と水分摂取の関係を理解して健康な足を維持しよう

下肢静脈瘤と水分摂取の関係について、重要なポイントをまとめてみましょう。

適切な水分摂取は、下肢静脈瘤の予防や症状緩和に重要な役割を果たします。水分不足は血液をドロドロにし、血栓のリスクを高める可能性があります。一方で、適切な水分摂取は血液の流れをスムーズにし、むくみの軽減にも役立ちます。

1日の水分摂取量の目安は、体重1kgあたり約30mlです。ただし、一度に大量の水分を摂るのではなく、1日を通してこまめに少量ずつ飲むことが効果的です。

水分摂取と併せて、長時間の同じ姿勢を避ける、適度な運動を行う、弾性ストッキングを着用するなどの対策も効果的です。特に「足の指グーパー体操」のような簡単な運動は、日常生活に取り入れやすく、血液循環の改善に役立ちます。

また、塩分の摂りすぎに注意し、バランスの良い食事を心がけることも大切です。カフェインやアルコールの過剰摂取は避け、水やノンカフェインのハーブティーを中心に水分を補給しましょう。

下肢静脈瘤の症状でお悩みの方は、まずは専門医に相談することをお勧めします。適切な診断と治療計画に基づいて、水分摂取を含めた生活習慣の改善を進めていくことが大切です。

健康な足を維持するためには、日々の小さな習慣の積み重ねが重要です。今日からできることから始めて、足の健康を守りましょう。

下肢静脈瘤でお悩みの方は、専門医療機関での相談をお勧めします。西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、下肢静脈瘤の日帰り手術や各種治療を提供しています。お気軽にご相談ください。

詳細はこちら:西梅田静脈瘤・痛みのクリニック

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。