コラム

2025.08.12

下肢静脈瘤〜専門医受診が必要なタイミングとは

下肢静脈瘤とは?足の血管が浮き出る原因を解説

下肢静脈瘤は足の血管の病気です。足から上半身に向かう静脈内の血液の逆流を防止する静脈弁が、必要以上に開いたり壊れたりすることで発症します。この状態になると、血液が逆流して足の静脈の血管内に徐々に溜まり、静脈の血管がコブ状に膨らんでしまうのです。

足の血管が浮き出て見える、足がむくむ、足がだるい・重い・疲れやすい、こむら返りが起こる、足の皮膚に色素沈着が起こるなどの症状があれば、下肢静脈瘤の可能性があります。

下肢静脈瘤は2人に1人が発症するとも言われる非常に一般的な疾患です。特に女性、妊娠経験のある方、長時間立ち仕事をする方、高齢者に多く見られます。

放っておくと徐々に進行し、自然に治癒することはありません。症状が進行すると、皮膚の変色や潰瘍形成などの合併症を引き起こす可能性もあります。

下肢静脈瘤の種類と症状〜あなたはどのタイプ?

下肢静脈瘤には主に4つの種類があります。それぞれの特徴を理解することで、自分の症状がどのタイプに当てはまるのか把握できるでしょう。

大伏在静脈瘤(太もも)

足にある静脈の血管のうち表面に近い太い静脈です。内くるぶしから膝の内側、太ももの内側の伏在静脈に発生する静脈瘤です。最も一般的なタイプで、太ももの内側から膝にかけて血管が浮き出て見えることが特徴です。

このタイプは手術適応となることが多く、血管内焼灼術などの治療が効果的です。症状が進行すると、足のむくみや重だるさが強くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。

小伏在静脈瘤(ひざ下)

ふくらはぎから膝の後ろに発症する静脈瘤です。膝の裏から踵に至る表在血管が拡張して発症します。こむら返りや足のだるさを感じることが多いです。

私の診療経験では、小伏在静脈瘤の患者さんは「夜中に突然足がつって目が覚める」という訴えが多いように感じます。これは血液の循環不全が原因で起こるものです。

網目状静脈瘤

細い静脈が網目状に膨らんで発症する静脈瘤です。主に太ももや膝周辺に発生し、網目のようなパターンで青みがかった血管が見えます。美容的な問題として気にされる方が多いですが、痛みやかゆみを伴うこともあります。

網目状静脈瘤は硬化療法という治療法が効果的なことが多いです。注射で硬化剤を注入し、血管を閉塞させる治療法です。

クモの巣状静脈瘤

より細い静脈が拡張し、青白い色や赤紫色に見える静脈瘤です。表面近くの毛細血管が拡張したもので、主に美容上の問題として認識されることが多いですが、かゆみや軽い痛みを伴うこともあります。

クモの巣状静脈瘤も硬化療法が効果的です。ただし、より細い血管を対象とするため、専門的な技術が必要となります。

下肢静脈瘤の症状チェック〜専門医受診の目安

下肢静脈瘤は緊急性はありませんが、自然治癒することはなく徐々に進行します。以下の症状が当てはまる場合は、静脈瘤の専門医を受診することをお勧めします。

早い段階で専門医による適切な治療を受けることで、症状の進行を防ぎ、より簡単な治療で済む可能性が高まります。重症化した場合は入院による手術が必要になることもあります。

初期症状〜見逃しやすいサイン
  • 足がむくむ、重い、だるい、疲れやすい
  • こむら返り(足がつる)、特に夜間に多い
  • 靴下のあとがつく(むくみの目安)
  • 足の冷えが続く
  • 足の血管がチラチラと見える

これらの症状は下肢静脈瘤の初期症状として見られます。多くの場合、疲れやストレスによるものと思われがちですが、実は血流の問題が原因かもしれません。

私のクリニックを訪れる患者さんの中には、「長年足のむくみに悩まされていたが、単なる疲れだと思っていた」という方が少なくありません。早期発見が重要です。

中期症状〜受診を検討すべきサイン
  • 足の血管が明らかに浮き出て見える
  • 足に瘤(こぶ)ができている
  • 足の痒み(かゆみ)がおさまらない
  • 長時間の立ち仕事や歩行後に強い痛みやだるさを感じる

これらの症状が現れたら、専門医への受診を検討すべきです。血管の逆流が進行している可能性が高く、適切な治療が必要な段階です。

中期症状では、日常生活に支障をきたすことも増えてきます。仕事や家事に集中できない、夜間の足のつりで睡眠が妨げられるなど、生活の質が低下することも少なくありません。

重症症状〜早急に受診すべきサイン
  • 足の皮膚に色素沈着(変色している状態)が起こる
  • 足の皮膚に湿疹や炎症が起こる
  • 足の皮膚に潰瘍(やけどのような状態)ができた
  • 静脈瘤からの出血

これらの症状は下肢静脈瘤が重症化している証拠です。早急に専門医を受診してください。皮膚の変化は血流障害が長期間続いていることを示しており、適切な治療が必要です。

特に皮膚潰瘍は治りにくく、感染症のリスクもあるため、専門的な治療が不可欠です。放置すると症状が悪化し、治療が困難になる可能性があります。

下肢静脈瘤の治療方法〜最新の選択肢

下肢静脈瘤の治療方法は症状の程度や静脈瘤のタイプによって異なります。現在では様々な治療選択肢があり、多くは日帰りで受けられるようになっています。

保存的治療〜弾性ストッキング

弾性ストッキングは下肢静脈瘤の基本的な治療法です。足首が一番圧が高く、上に行くほど圧が弱くなる「段階圧」が特徴で、これにより血液の逆流を抑え、よどんだ血液・リンパ液を押し流す効果があります。

市販の着圧ストッキングと医療用弾性ストッキングは異なります。医療用は圧迫圧が高く、段階圧がしっかりしており、長持ちします(半年程度使用可能)。必ず医師に処方してもらい、正しい履き方の指導を受けることが重要です。

朝起きたら履き、寝る前に脱ぐのが基本です。しわを伸ばしながら履くことで効果を発揮します。ただし、傷が化膿している時は使用を避けてください。

血管内焼灼術〜日帰りカテーテル治療

血管内焼灼術は下肢静脈瘤の主要な治療法として広く普及しています。カテーテルを用いて熱を加え、拡張した血管を閉塞させる治療法です。大きな傷跡が残らず、痛みが少なく、局所麻酔で行えるため体への負担が少ないのが特徴です。

手術時間は片足約10〜20分程度で、すぐに歩くことができます。治療法には主に以下の2種類があります。

  • レーザー焼灼術(EVLA):レーザーファイバー先端からレーザーを照射し血管壁を焼灼閉鎖
  • 高周波(ラジオ波)焼灼術(RFA):ラジオ波で血管壁の蛋白を直接熱凝固変性させて血管壁を閉鎖

どちらの治療法も手術時間、合併症、再発率に大きな差はありません。静脈瘤の状態(蛇行、太さなど)や皮膚の薄さなどによって使い分けることが一般的です。

血管内塞栓術(グルー治療)

比較的新しい治療法で、カテーテルからシアノアクリレートという接着剤(医療用グルー)を血管内に注入して血管をくっつける方法です。熱を使わないため周囲の組織へのダメージが少なく、術後の圧迫療法が不要または短期間で済むという利点があります。

VenaSeal(ベナシール)クロージャーシステムと呼ばれる治療システムが使用されることが多いです。日本でも多くの医療機関で導入されています。

硬化療法

細い静脈瘤に対して有効な治療法です。硬化剤を静脈瘤に直接注射し、血管を閉塞させます。網目状静脈瘤やクモの巣状静脈瘤、再発血管に適しています。

比較的簡単な処置で、痛みも少なく、日帰りで受けられます。ただし、大きな静脈瘤には効果が限定的で、複数回の治療が必要になることもあります。

ストリッピング手術

従来から行われている手術法で、小さな2カ所の傷から逆流の主たる原因の静脈を引き抜く方法です。再発が少ないという利点がありますが、現在では血管内焼灼術などの低侵襲治療が主流となっています。

蛇行が強くカテーテル挿入できない場合や、血管が太すぎる場合など、血管内焼灼術の適応とならない症例に対して行われることがあります。

専門医に相談すべきタイミング〜見逃せない5つのサイン

下肢静脈瘤は緊急性の高い疾患ではありませんが、早期に専門医に相談することで、症状の進行を防ぎ、より簡単な治療で済む可能性が高まります。以下の5つのサインがあれば、専門医への相談を検討しましょう。

日常生活に支障をきたす症状がある

足のむくみや痛み、だるさなどが日常生活に支障をきたすようになったら、専門医への相談を検討すべきです。仕事や家事に集中できない、趣味の活動が制限されるなど、生活の質が低下している場合は治療の良い適応となります。

私のクリニックを訪れる患者さんの中には、「立ち仕事で足が痛くて集中できない」「趣味のウォーキングができなくなった」という方も少なくありません。適切な治療により、これらの活動を再開できるケースが多いです。

外見的な変化が気になる

足の血管が目立つようになった、足にこぶができた、皮膚の色が変わってきたなど、外見的な変化が気になる場合も専門医への相談を検討しましょう。特に皮膚の色素沈着は血流障害が長期間続いている証拠であり、早めの対応が望ましいです。

美容的な理由での治療も可能です。特に女性の場合、スカートをはくことをためらうほど足の血管が目立つようになると、生活の質に大きく影響することがあります。

夜間のこむら返りが頻繁に起こる

夜間に足がつる(こむら返り)ことが頻繁に起こり、睡眠が妨げられる場合は、下肢静脈瘤が原因かもしれません。特に就寝中に痛みで目が覚めるほどのこむら返りは、血流障害の可能性を示唆しています。

こむら返りは下肢静脈瘤の典型的な症状の一つです。適切な治療により、夜間のこむら返りが劇的に改善するケースも多く見られます。

保存的治療で改善しない

医療用の弾性ストッキングを正しく使用しても効果が限定的な場合は、専門医に相談しましょう。弾性ストッキングをはくと症状が劇的に改善する方は治療は積極的に考えてよいと思います。

保存的治療は症状の緩和には効果的ですが、静脈瘤そのものを治すわけではありません。症状が進行している場合は、血管内焼灼術などのより根本的な治療が必要になることがあります。

皮膚の変化や潰瘍がある

足の皮膚に湿疹、炎症、潰瘍などの変化がある場合は、早急に専門医を受診してください。これらは下肢静脈瘤が重症化している証拠であり、適切な治療が必要です。

皮膚潰瘍は治りにくく、感染症のリスクもあるため、専門的な治療が不可欠です。放置すると症状が悪化し、治療が困難になる可能性があります。

西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでの治療アプローチ

西梅田静脈瘤・痛みのクリニックは、大阪梅田に位置する血管外科と整形外科を専門とする医療機関です。下肢静脈瘤の治療において、患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法を提供しています。

専門医による診断と治療計画

当クリニックでは、下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医・実施医の資格を持つ医師が診察を行います。豊富な知識と経験を活かし、超音波検査などで詳細に血管の状態を評価した上で、最適な治療計画を立てます。

日本医学放射線学会読影専門医・認定医、日本IVR学会専門医、日本脈管学会専門医などの資格を持つ専門医による診療を受けることができます。女性医師による診察・手術も可能となり、より多様なニーズに対応できる体制を整えています。

日帰り手術の選択肢

当クリニックでは、下肢静脈瘤に対する様々な日帰り手術を提供しています。カテーテル治療、高周波カテーテル治療、グルー治療、ストリッピング手術、高位結紮術、硬化療法など、患者さんの病態やニーズに合わせた治療法を選択できます。

日帰り手術は、入院の必要がなく、日常生活への影響を最小限に抑えながら症状の改善・解消を目指すことができます。多くの場合、手術後すぐに歩くことができ、通常の生活に早期に戻ることが可能です。

アクセスと診療時間

クリニックは大阪駅と福島駅の中間に位置し、両駅から徒歩約5分というアクセスの良さが特徴です。平日は18時まで、土曜日も9:00〜13:00まで診療を行っており、仕事で忙しい方でも通院しやすい環境を整えています。

診療カレンダーはクリニックのウェブサイトで確認できます。休診日は日曜・祝日となっています。

治療後のフォローアップ

下肢静脈瘤の治療後は適切なフォローアップが重要です。当クリニックでは、治療後の経過観察を丁寧に行い、必要に応じて追加治療や生活指導を行います。

治療後も生活の質をサポートすることを目指し、患者さんの健康維持をサポートします。下肢静脈瘤や慢性的な痛みにより日常生活やスポーツなどが制限され、生活の質が損なわれている患者さんに対して、身近に高度な治療を提供しています。

下肢静脈瘤の予防と日常生活での注意点

下肢静脈瘤は完全に予防することは難しいですが、日常生活での工夫により発症リスクを下げたり、症状の進行を遅らせたりすることができます。以下に重要な注意点をまとめました。

適度な運動習慣

適度な運動は血液循環を促進し、下肢静脈瘤の予防に役立ちます。特にウォーキング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動が効果的です。筋肉を動かすことで、静脈の血液を心臓に戻すポンプ作用を助けます。

ただし、重量挙げなどの強い力を入れる運動は、腹圧が上がって静脈圧を上昇させる可能性があるため、注意が必要です。自分の体力に合った適度な運動を心がけましょう。

長時間の立ち仕事や座り仕事の対策

長時間同じ姿勢でいることは、下肢静脈瘤のリスク要因となります。立ち仕事や座り仕事が多い方は、1時間に5分程度でも良いので、足を動かす時間を作りましょう。

足首を回す、つま先立ちを繰り返す、足を上げ下げするなどの簡単な運動でも効果があります。また、座っている時は足を組まないようにしましょう。足を組むと血流が妨げられます。

体重管理と食生活

肥満は下肢静脈瘤のリスク要因の一つです。適正体重を維持することで、足への負担を減らし、静脈瘤の発症リスクを下げることができます。

食生活では、食物繊維が豊富な野菜や果物を積極的に摂り、便秘を予防することも大切です。便秘は腹圧を上昇させ、静脈圧を高める原因となります。また、適切な水分摂取も血液の循環を良くするために重要です。

弾性ストッキングの活用

リスク要因がある方や初期症状がある方は、医療用弾性ストッキングの活用を検討しましょう。特に長時間の立ち仕事や座り仕事、長時間のフライトなど、静脈うっ滞が起こりやすい状況では効果的です。

ただし、市販の着圧ソックスと医療用弾性ストッキングは異なります。適切な圧迫圧と正しいサイズの弾性ストッキングを選ぶために、専門医に相談することをお勧めします。

定期的な専門医のチェック

下肢静脈瘤のリスク要因がある方や、家族歴がある方は、定期的に専門医のチェックを受けることをお勧めします。早期発見・早期治療により、より簡単な治療で済む可能性が高まります。

特に足のむくみ、だるさ、こむら返りなどの症状がある場合は、一度専門医に相談してみましょう。適切な診断と治療により、症状の改善が期待できます。

まとめ〜下肢静脈瘤と上手に付き合うために

下肢静脈瘤は足の血管の病気で、静脈弁の機能不全により血液が逆流し、静脈がコブ状に膨らむ状態です。2人に1人が発症するとも言われる一般的な疾患ですが、放置すると徐々に進行し、自然治癒することはありません。

足のむくみ、だるさ、こむら返り、血管の浮き出りなどの症状がある場合は、下肢静脈瘤の可能性があります。症状が進行すると、皮膚の変色や潰瘍形成などの合併症を引き起こす可能性もあります。

現在では様々な治療選択肢があり、多くは日帰りで受けられるようになっています。弾性ストッキングによる保存的治療から、血管内焼灼術、血管内塞栓術、硬化療法などの低侵襲治療まで、症状の程度や静脈瘤のタイプに応じた治療が可能です。

専門医に相談すべきタイミングとしては、日常生活に支障をきたす症状がある、外見的な変化が気になる、夜間のこむら返りが頻繁に起こる、保存的治療で改善しない、皮膚の変化や潰瘍があるなどの場合が挙げられます。

西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医・実施医の資格を持つ医師による専門的な診断と治療を提供しています。患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な治療計画を立て、日帰り手術や保存的治療を行っています。

下肢静脈瘤の予防と管理には、適度な運動習慣、長時間の立ち仕事や座り仕事の対策、体重管理と食生活の改善、弾性ストッキングの活用、定期的な専門医のチェックなどが重要です。

足の健康は全身の健康と生活の質に大きく影響します。気になる症状があれば、早めに専門医に相談し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。

詳細な情報や診療予約については、西梅田静脈瘤・痛みのクリニックのウェブサイトをご覧いただくか、お電話でお問い合わせください。専門医による適切な診断と治療で、足の健康を取り戻しましょう。

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。