足の血管が浮き出る現象とは?下肢静脈瘤の可能性
足の血管が浮き出て見える現象に悩んでいませんか?これは単なる見た目の問題ではなく、「下肢静脈瘤」という病気の可能性があります。
下肢静脈瘤とは、足の静脈の逆流防止弁に異常をきたし、血液が溜まってしまうために静脈が太くなってしまう病気です。ふくらはぎやふとももが静脈でボコボコと盛り上がった様子がよく知られていますが、少しだけ浮き出ていたり、平面的に透けて見えたりするものもあります。
日本国内では約10人に1人の割合で静脈瘤が見られるという統計があります。決して珍しい病気ではなく、身近でありふれた症状なのです。
見た目の問題だけでなく、足のだるさやむくみなどの症状も伴います。早期発見・早期治療が重要ですので、足の血管が浮き出る原因と対策について詳しく見ていきましょう。
足の血管が浮き出る主な原因
なぜ足の血管が浮き出るのでしょうか?その仕組みを理解することが、効果的な対策の第一歩です。
下肢の血液を心臓・肺に戻す時には、重力に逆らった力が働くことになります。その働きを支える機能として、下肢静脈には「逆流防止弁」が備わっています。
この逆流防止弁が壊れたり、変形するなどして異常をきたすと、下肢静脈に血液が溜まり、静脈の壁が引き伸ばされ、太くなったり、異常な形態へと変化することで、外からも血管が浮き出たように見えるのです。
下肢静脈瘤の種類と特徴
下肢静脈瘤には主に4つの種類があります。それぞれ症状が現れる箇所や見た目の特徴が異なります。
- ・伏在静脈瘤:膝の内側(大伏在静脈瘤)やふくらはぎ(小伏在静脈瘤)に瘤ができてボコボコする。治療が必要。
- ・側枝静脈瘤:ふくらはぎや太ももの内側に現れる。伏在静脈瘤よりは目立たない。
- ・網目状静脈瘤:太ももの外側やくるぶしに青い網目状に浮き出る。基本的に治療不要。
- ・クモの巣状静脈瘤:太ももの外側や膝の内側に赤いクモの巣状に見える。
血管が浮き出る原因となる生活習慣
下肢静脈瘤の原因としては、以下のような生活習慣や要因が挙げられます。
- ・立ち仕事やデスクワークなど長時間同じ姿勢を続ける仕事
- ・激しい運動
- ・肥満
- ・加齢
- ・遺伝的要因
女性の場合は、妊娠・出産が原因になることもあります。そのため、やや女性に多く見られる病気です。
なぜこれらの要因が血管を浮き出させるのでしょうか?
長時間の立ち仕事やデスクワークなど一か所に動かないでいる仕事に従事する方や妊娠などで足の血流が滞ったりすると、足の静脈に圧力がかかり、血管が膨らんで広がってきます。すると静脈弁が働きにくくなったり、圧力により静脈弁が破壊されてしまいます。
足の血管が浮き出る際の症状と進行
下肢静脈瘤の初期には足が重い、だるい、少し痛む、むくむなどの症状が出ます。とくに長時間の立ち仕事などに従事している方に出やすく、この時点では疲労との区別はつきづらいものです。
夜中に足がつる症状もよく見られます。これは多くの方が経験したことがあるのではないでしょうか?
やがて網目状やクモの巣状に血管が透けて見えたり、ボコボコと血管が浮いて見えてきたりします。
放置するとどうなる?
下肢静脈瘤は命にかかわるような症状になることはありませんが、妊娠・出産による一時的なものを除いて自然に治ることはありません。
放置しておくと色素沈着して肌が黒ずんだり、皮膚炎、潰瘍を起こしたりします。
「足の血管が浮いているだけだから大丈夫」と思っていると、症状が進行してしまう可能性があります。早めに専門医に相談することをおすすめします。
血管年齢を若返らせる効果的な対策
「人は血管とともに老いる」というアメリカの内科医の言葉があります。実は、血管も肌などと同じように加齢とともに老化することが知られています。
血管が老化すると弾力が低下して、柔軟性に乏しい血管になってしまいます。この状態は、新しくてしなやかなホース(=しなやかな血管)と、古くなって硬くボロボロになったホース(=柔軟性の失われた血管)にたとえるとわかりやすいでしょう。
むくみ解消で血管の負担を軽減
足のむくみは下肢静脈瘤の症状の一つですが、むくみを解消することで血管への負担を軽減できます。
- ・こまめに水分補給をする
- ・塩分の摂りすぎに注意する
- ・足を高くして休む時間を作る
- ・軽いストレッチや運動を取り入れる
- ・弾性ストッキングを活用する
特に弾性ストッキングは、足の静脈を外から圧迫することで血液の逆流を防ぎ、むくみを軽減する効果があります。
長時間同じ姿勢でいることが多い方は、1時間に1回程度は立ち上がって軽く歩くなど、血流を促す工夫をしましょう。
血管を若返らせる食事法
血管を若返らせるためには、食事も重要です。血管の若さを保つには、血管自体をしなやかに保つこと、そして中を流れる血液をサラサラにすること、この両面に着目する必要があります。
血管を若返らせる食事の3原則は以下の通りです。
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低塩分:塩分のとりすぎは、血圧を上げ、血管を硬くします。
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高血糖:血液中の糖の濃度が高い「高血糖」の状態になると、血管が傷み、詰まりやすくなります。
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善玉のHDLコレステロールを増やす:HDLコレステロールは、動脈の中で余ったコレステロールを回収して肝臓に運ぶ「回収役」の役割を持っています。
具体的には、納豆、ねぎ、お茶、きのこ類、トマトなどを意識的に摂取するとよいでしょう。また、シナモンやルイボスティーも血管の健康に良いとされています。
下肢静脈瘤の検査と診断方法
足の血管が浮き出る症状がある場合、医療機関ではどのような検査が行われるのでしょうか?
ドプラー検査
皮膚の上から超音波を血管に当てて逆流の有無を診断します。
プローベという器具を皮膚の上から血管に当てふくらはぎを手でつかんで圧迫します。すると血液が押し上げられザッという音として聞こえます。ふくらはぎの圧迫を解くと、血管が正常で逆流を起こしていない場合には何も音がしませんが、逆流があると検査機からザーという音がします。
この音の大きさと長さで逆流の程度を診断します。短時間で済み、痛みを感じることもありません。
超音波検査(カラードプラー検査)
ドプラー検査と同じく超音波を利用した検査で、現在では最も一般的で有効な検査です。血流の方向、血管の太さ、逆流の有無などを観察します。
カラードプラー検査ともいい、血流の様子を色分けして表示することができます。血管の太さや逆流を視覚的に画像で確認することができます。
下肢静脈瘤の治療法と最新技術
下肢静脈瘤の治療法には、日帰り手術から入院を伴う手術まで、さまざまな選択肢があります。
血管内焼灼術
機能不全を起こしてうっ滞を起こしている静脈血管をレーザーや高周波の熱で焼き固めて(焼灼と言います)閉塞させます。
事前に超音波検査で詳細に血管の状態を調べておき、機能不全を起こしている静脈血管の中にカテーテルを挿入します。膝あたりから細いカテーテルを静脈内に挿入し、患部まで誘導してレーザーや高周波の熱で血管を内側から焼き固め、静脈を閉塞させます。
焼かれて閉塞した血管は数ヵ月(3~6か月程度)かけて線維化し吸収されます。
手術は局所麻酔で行われ、傷跡が目立たず美容的にも優れており、日帰り手術も可能なので現在では第一選択の治療となっています。
その他の治療法
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高周波カテーテル治療
:膝のあたりの血管からカテーテルを挿入し、高周波によって加熱し、静脈瘤を焼灼します。レーザーカテーテル治療と比べて、より高い効果が期待できます。
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グルー治療
:医療用瞬間接着剤を、カテーテルを通して静脈瘤へと注入する治療です。これにより、静脈瘤の血管を閉塞させます。
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ストリッピング手術
:脚の付け根に約2センチの切開を加えて、大伏在静脈を切断します。その上で、膝の内側に約1センチの切開を加え、ストリッピングワイヤーを挿入します。最後に、ワイヤーを大伏在静脈ごと、抜去します。根治性の高い治療です。
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硬化療法
:極細の針を静脈瘤に刺し、硬化剤を注入することで、静脈瘤の血管を固める治療です。その後、弾性ストッキングを着用して残った血管を潰します。
日常生活での予防と対策
下肢静脈瘤を予防するためには、日常生活での対策が重要です。
生活習慣の改善
以下のような生活習慣の改善が効果的です。
- 長時間の立ち仕事や座り仕事を避け、定期的に姿勢を変える
- 適度な運動(ウォーキングや水泳など)を習慣にする
- 肥満を解消する
- 喫煙を避ける(喫煙は血管を収縮させ、血流を悪くします)
- 足を高く上げて休む習慣をつける
運動による血管若返り効果
適度な運動は血管を若返らせる効果があります。特に有酸素運動は血管の弾力性を改善することが研究で明らかになっています。
英国で行われた研究では、マラソン初心者がフルマラソン完走を目指したトレーニングを行うことによって、血圧が下がり、大動脈の弾力性が改善して血管年齢が若返ることが明らかになりました。
血管の若返り効果は、中高年の、フルマラソンを比較的ゆっくり走った人に特に大きく現れました。
ただし、いきなり激しい運動を始めるのではなく、ウォーキングから始めて徐々に運動量を増やしていくことが大切です。
まとめ:足の血管の健康を守るために
足の血管が浮き出る現象は、下肢静脈瘤という病気の可能性があります。放置すると症状が進行する可能性があるため、早めに専門医に相談することが大切です。
血管年齢を若返らせるためには、むくみ解消、適切な食事、適度な運動が効果的です。特に、低塩分、低血糖、善玉コレステロールを増やす食事を心がけましょう。
日常生活では、長時間同じ姿勢を続けないこと、定期的に軽い運動を行うこと、足を高く上げて休む習慣をつけることなどが予防に効果的です。
血管は年齢に関わらず若返らせることができます。今日から生活習慣を見直して、健康な血管を維持しましょう。
足の血管が浮き出る症状でお悩みの方は、専門医による適切な診断と治療を受けることをおすすめします。西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、日本IVR学会専門医、下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医・実施医の資格を持つ医師が、豊富な知識と経験を活かした下肢静脈瘤治療を行っています。日帰り手術も可能ですので、お気軽にご相談ください。
詳しくは西梅田静脈瘤・痛みのクリニックのホームページをご覧ください
【著者】
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義
【略歴】
現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。
下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、
患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。
早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。
【所属学会・資格】
日本医学放射線学会読影専門医、認定医
日本IVR学会専門医
日本脈管学会専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医
マンモグラフィー読影認定医
本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。
インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。
特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。