コラム

2025.11.19

下肢静脈瘤は何科を受診すべき?専門医が解説する選び方

足の血管がボコボコと浮き出たり、むくみやだるさを感じたりして「これは下肢静脈瘤かもしれない」と思ったとき、多くの方が「どの診療科に行けばいいのだろう?」と悩まれます。下肢静脈瘤は静脈の病気ですが、実は複数の診療科で治療が行われているため、受診先選びに迷うことも少なくありません。

私は下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医・実施医として、これまで多くの患者さんの治療に携わってきました。この記事では、下肢静脈瘤の診療科選びのポイントから、専門医の見分け方、そして治療を成功させるためのアドバイスまで詳しく解説します。

適切な診療科・医師選びは、治療の成功率や満足度に大きく影響します。ぜひ最後までお読みいただき、あなたに最適な医療機関選びの参考にしてください。

下肢静脈瘤の治療を行っている主な診療科

下肢静脈瘤は静脈の病気ですが、実はさまざまな診療科で治療が行われています。それぞれの診療科の特徴を理解することが、適切な受診先を選ぶ第一歩となります。

下肢静脈瘤の治療を行っている主な診療科には、血管外科、心臓血管外科、循環器内科、形成外科、皮膚科などがあります。それぞれの診療科によって、得意とする治療法や診療のアプローチが異なるのが特徴です。

血管外科・心臓血管外科

血管外科や心臓血管外科は、血管を専門に扱う診療科です。下肢静脈瘤の治療においては、これらの診療科が最も一般的な選択肢となります。

血管外科医は血管の構造や機能に精通しており、カテーテル治療から外科的手術まで幅広い治療法に対応できるのが強みです。特に血管内焼灼術(レーザーや高周波を用いた治療)やストリッピング手術など、様々な治療法を状況に応じて選択できます。

ただし、総合病院の血管外科や心臓血管外科では、命に関わる心臓や動脈の疾患が優先されるため、下肢静脈瘤の治療に十分な時間を割けない場合もあります。

放射線科・循環器内科

循環器内科も下肢静脈瘤の治療を行うことがあります。特にカテーテル治療を得意としている医師が多く、カテーテル治療で培った繊細な技術を活かした治療が期待できます。

放射線科・循環器内科の強みは、内科的な視点から全身状態を評価できる点や画像評価に強い点です。下肢静脈瘤の症状の一つである「むくみ」は心臓や腎臓の問題が原因となっている場合もあるため、総合的な診断が可能です。

また、下肢静脈瘤の治療後に心臓に戻る血液量が増えることで、心不全のリスクがある患者さんには、循環器内科医による治療前後のリスク管理が有効です。

形成外科・皮膚科

形成外科や皮膚科でも下肢静脈瘤の治療を行っているクリニックがあります。特に見た目の改善を重視する場合には、美容的な観点からのアプローチが期待できます。

クモの巣状静脈瘤など、皮膚表面に現れる細い静脈瘤に対しては、皮膚照射レーザー治療などを行っている形成外科や皮膚科が適している場合もあります。

ただし、これらの診療科ではカテーテル治療の経験が少ない傾向にあるため、大きな下肢静脈瘤の治療には不向きな場合があります。

下肢静脈瘤専門クリニックの増加と選ぶメリット

近年、下肢静脈瘤を専門に扱うクリニックが全国的に増加しています。これらの専門クリニックには、一般の病院と比較していくつかの大きなメリットがあります。

下肢静脈瘤専門クリニックでは、その名の通り下肢静脈瘤の治療に特化しているため、最新の治療法や機器を導入していることが多いです。また、治療実績も豊富なため、様々なケースに対応できる経験と技術を持っています。

専門クリニックのもう一つの大きなメリットは、待ち時間の短縮です。総合病院では緊急性の高い疾患が優先されるため、下肢静脈瘤の治療は後回しにされがちです。専門クリニックであれば、予約から治療までスムーズに進むことが期待できます。

専門クリニック選びの3つのポイント

下肢静脈瘤専門クリニックを選ぶ際には、以下の3つのポイントを参考にするとよいでしょう。

  • 実際に治療を受けた人の体験談を聞く
  • 下肢静脈瘤は非常に一般的な疾患のため、身近な人で治療経験者がいる可能性があります。実際の体験談は最も信頼できる情報源です。
  • かかりつけ医に相談する
  • 普段から診てもらっている医師に相談するのも良い方法です。医師同士のネットワークを通じて、信頼できる専門医を紹介してもらえることがあります。
  • 複数のクリニックで相談してから決める
  • 下肢静脈瘤は緊急性の低い疾患なので、いくつかのクリニックを訪問して医師の説明を聞き比べてから決めることをおすすめします。

「どの診療科に行けばよいか」という問いの答えは、「下肢静脈瘤の治療実績が豊富な医師がいるクリニックに行くこと」です。診療科名よりも、その医師の専門性と経験を重視することが大切です。

下肢静脈瘤治療における専門医の見分け方

下肢静脈瘤の治療を成功させるためには、専門的な知識と技術を持った医師を選ぶことが重要です。では、どのように専門医を見分ければよいのでしょうか。

資格と経験を確認する

下肢静脈瘤の治療、特に血管内焼灼術(レーザーや高周波を用いた治療)を行うためには、「血管内焼灼術実施医」という資格が必要です。さらに、「血管内焼灼術指導医」の資格を持つ医師は他の専門医も有しており、より高度な技術と知識を持っていると言えます。

また、日本脈管学会専門医、日本血管外科学会専門医などの資格も、血管疾患に関する専門性の高さを示す指標となります。クリニックのホームページなどで、医師の保有資格を確認することをおすすめします。

資格とともに重要なのが治療実績です。年間どれくらいの症例数を扱っているか、これまでの治療経験などを確認できると安心です。

治療方針の説明を評価する

専門性の高い医師は、患者さん一人ひとりの状態に合わせた治療方針を提案します。初診時には、超音波検査(エコー検査)を行い、静脈の逆流の状態や瘤の大きさなどを詳しく評価するはずです。

その上で、複数の治療選択肢とそれぞれのメリット・デメリットを説明してくれる医師は信頼できると言えるでしょう。逆に、検査が不十分なまま一方的に治療法を決めようとする場合は注意が必要です。

最新の治療法に対応しているか

下肢静脈瘤の治療は近年大きく進化しています。現在の標準治療は「血管内焼灼術」と「血管内塞栓術(グルー治療)」です。これらの最新治療に対応しているかどうかも、クリニック選びの重要なポイントとなります。

特に初回治療で「高位結紮術」や「硬化療法」「ストリッピングのみを勧められた場合は、他のクリニックでもセカンドオピニオンを受けることをおすすめします。これらの治療法は再発率が高い傾向にあるためです。

どうしても不安な場合は、「なぜ血管内焼灼術やグルー治療ではなく、その治療法を勧めるのか」と質問してみるとよいでしょう。明確な理由があれば問題ありませんが、曖昧な回答しか得られない場合は再考の余地があります。

下肢静脈瘤の診断から治療までの流れ

下肢静脈瘤の治療を受ける際には、診断から治療までどのような流れになるのかを知っておくと安心です。ここでは一般的な流れを解説します。

初診時の診察と検査

初診時には、まず問診と視診が行われます。足のだるさやむくみ、こむら返りなどの症状や、発症時期、日常生活での悪化要因などを詳しく聞かれます。

次に超音波検査(エコー検査)が行われます。これは下肢静脈瘤の診断において最も重要な検査で、静脈の逆流の有無や程度、瘤の位置や大きさなどを詳細に評価します。この検査は痛みもなく、放射線被曝もないので安心です。

検査結果に基づいて、医師から病状の説明と治療方針の提案があります。この時点で不明点があれば、遠慮なく質問することが大切です。

治療法の選択と準備

下肢静脈瘤の主な治療法には、保存的治療(弾性ストッキングの着用など)と手術的治療があります。症状が軽度であれば保存的治療から始めることもありますが、症状が進行している場合は手術的治療が勧められることが多いです。

現在の標準的な手術治療は「血管内焼灼術」と「血管内塞栓術(グルー治療)」です。これらは局所麻酔で行える日帰り手術で、傷跡も最小限に抑えられます。

治療法が決まったら、手術日の予約と術前の注意事項の説明があります。抗血栓薬を服用している場合は、一時的な休薬が必要になることもあるので、必ず医師に相談しましょう。

治療当日と術後のケア

治療当日は、超音波ガイド下で正確に治療が行われます。血管内焼灼術やグルー治療は30分〜1時間程度で終了し、その後短時間の安静の後、歩行して帰宅できるのが一般的です。

術後は圧迫療法(弾性ストッキングの着用)が必要です。これは治療効果を高め、合併症を予防するために重要なステップです。また、適度な歩行も血流改善に役立ちます。

術後1週間程度で診察があり、超音波検査で治療結果を確認します。その後も定期的な経過観察が行われますが、多くの場合は問題なく日常生活に戻れます。

まとめ:下肢静脈瘤治療で失敗しないために

下肢静脈瘤の治療を成功させるためには、適切な診療科・医師選びが非常に重要です。この記事のポイントをまとめると以下のようになります。

  • 下肢静脈瘤の治療は血管外科、心臓血管外科、循環器内科、形成外科、皮膚科など複数の診療科で行われている
  • 診療科名よりも、下肢静脈瘤の治療実績が豊富な医師を選ぶことが重要
  • 専門医の見分け方として、資格(血管内焼灼術実施医・指導医など)と治療実績を確認する
  • 現在の標準治療は「血管内焼灼術」と「血管内塞栓術(グルー治療)」であり、これらに対応しているかを確認する
  • 初回治療で「高位結紮術」や「硬化療法」のみを勧められた場合は、セカンドオピニオンを検討する

下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんが、適切な治療を受けることで生活の質を大きく向上させることができます。焦らず、複数の医療機関を比較検討し、あなたに最適な医師・クリニックを見つけることをおすすめします。

私たち西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医の資格を持つ医師が、最新の治療法を用いて患者さん一人ひとりに最適な治療を提供しています。下肢静脈瘤でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

詳しい情報や予約方法については、西梅田静脈瘤・痛みのクリニックの公式サイトをご覧ください。

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。