コラム

2025.11.19

下肢静脈瘤治療の最新ガイド|診療科選びから治療法まで

下肢静脈瘤とは?症状と原因を理解しよう

足の表面に血管が浮き出て見える状態、それが下肢静脈瘤です。この状態は単なる見た目の問題ではなく、足のむくみやだるさ、重さ、痛み、かゆみなど様々な不快症状を引き起こします。夜間のこむら返りに悩まされている方も多いでしょう。

下肢静脈瘤は、足の静脈内にある逆流防止弁(静脈弁)が壊れることで発生します。正常であれば、この弁が血液の逆流を防いでいるのですが、弁が機能しなくなると血液が下方へ逆流し、静脈が膨張・蛇行してしまうのです。

放置すると症状は徐々に悪化し、皮膚の色素沈着や湿疹、さらには潰瘍といった合併症を引き起こすこともあります。日常生活の質を大きく損なう原因にもなりかねません。

では、なぜ静脈弁が壊れてしまうのでしょうか?

長時間の立ち仕事や歩き回る仕事など、長時間立位を保つ職業の方に多く見られます。また、妊娠中にお腹が大きくなることで静脈に圧力がかかり、静脈瘤になることもあります。遺伝的な要素も関係しているようです。

下肢静脈瘤は中高年の女性に多い傾向がありますが、男性にも発症します。早期発見・早期治療が重要な疾患なのです。

下肢静脈瘤の診断方法と専門医の選び方

下肢静脈瘤の診断には、まず医師による視診と触診が行われます。しかし、より詳細な状態を把握するためには超音波検査が最も重要です。

超音波検査では、静脈の逆流の有無や程度、静脈弁の状態などを確認できます。これにより、適切な治療法を選択するための重要な情報が得られるのです。

以前は侵襲的な検査が必要でしたが、現在は超音波検査だけで精度の高い診断が可能になっています。特に血管診療技士(CVT)の資格を持つ臨床検査技師が行う検査は信頼性が高いでしょう。

では、下肢静脈瘤の治療を受けるなら、どの診療科を選べばよいのでしょうか?

下肢静脈瘤の治療は主に以下の診療科で行われています:

  • 血管外科:下肢静脈瘤治療の専門性が最も高い科です
  • 心臓血管外科:血管全般の治療を行う科で、下肢静脈瘤にも対応しています
  • 皮膚科:小さな静脈瘤や蜘蛛の巣状静脈瘤の硬化療法などを行うことがあります
  • 形成外科:美容的な観点からの治療も行うことがあります

医師の専門資格も重要な選択基準です。特に「下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医の資格を持つ医師は、最新の治療法に精通しています。また、本IVR学会や日本心臓血管外科専門医の専門医資格も信頼の目安となります。

治療を受ける際は、医師の経験症例数や、クリニックでどのような治療法に対応しているかも確認しておくとよいでしょう。

下肢静脈瘤の最新治療法を徹底比較

下肢静脈瘤の治療法は近年大きく進化しました。2025年現在、主流となっている治療法を比較してみましょう。

保存療法(弾性ストッキング)

初期段階では、医療用弾性ストッキングによる圧迫療法が選択されます。静脈瘤そのものを治すものではありませんが、症状緩和や進行予防には効果的です。

医療用弾性ストッキングは保険適用外で、費用は3,750円~7,700円程度です。正しい着用方法が重要なので、医師や看護師の指導を受けましょう。

血管内焼灼術(レーザー・高周波)

現在の下肢静脈瘤治療の主流となっている方法です。カテーテルを使い、静脈内からレーザーや高周波を照射して内側から血管を閉塞させます。

小さな傷で済み、回復も早いのが特徴です。日本では2011年に保険適用となり、多くの医療機関で実施されています。治療効果も高く、5年後の再発率は約5%程度と報告されています。

ただし、熱を使用するため周囲組織へのダメージによる内出血や痛みが生じることがあります。このリスクを減らすために「TLA麻酔」という特殊な麻酔法が用いられます。

血管内塞栓術(グルー治療)

2019年に日本で保険適用となった最新の治療法です。医療用接着剤(シアノアクリレート)を注入して静脈を閉塞させます。

熱を使わないため、TLA麻酔が不要で痛みが少なく、術後の弾性ストッキングも不要なケースが多いのが特徴です。早期に職場復帰したい方や、術中の負担を少なくしたい方に適しています。

ただし、比較的新しい治療法のため長期的な治療成績のデータがまだ十分に蓄積されていません。また、まれに接着剤に対するアレルギー反応が生じる可能性もあります。

硬化療法

硬化剤を注射して静脈を閉塞させる方法です。小さな静脈瘤や蜘蛛の巣状静脈瘤、また他の治療後の残存瘤に用いられます。費用が安価で身体的負担も軽いのが特徴です。

ストリッピング手術

静脈を物理的に引き抜く従来の手術法です。以前は主流でしたが、現在は血管内焼灼術や血管内塞栓術に置き換わりつつあります。ただし、静脈瘤の状態によっては今でも選択される場合があります。

治療法別の費用相場と保険適用について

下肢静脈瘤の治療費用は治療法によって大きく異なります。2025年現在の保険適用時の費用相場を見てみましょう。

治療法保険点数自己負担(3割)実費目安備考

血管内焼灼術約10,200点約30,600円40,000円前後両足なら約1.5〜2倍

血管内塞栓術約14,360点約40,380円50,000円前後弾性ストッキング不要

硬化療法約1,720点約5,160円6,000円前後小静脈瘤向け

※別途、初診料・検査料(約2,000〜3,000円)が加わります。

治療費に影響する要素としては、片足か両足か、静脈瘤の本数や状態、麻酔や検査内容、弾性ストッキングの有無などがあります。

下肢静脈瘤の治療は保険適用となる場合が多いですが、いくつか条件があります。

一般的に、下肢静脈瘤による症状(むくみ、痛み、皮膚の変化など)があり、医学的に治療が必要と判断された場合に保険が適用されます。単に見た目の問題だけでは保険適用されない場合もあるので注意が必要です。

また、医療費控除や民間の医療保険の給付金も活用できる場合があります。年間の医療費が一定額を超えた場合に適用される医療費控除や、手術給付金が出る民間保険に加入している場合は、事前に確認しておくとよいでしょう。

下肢静脈瘤治療の日帰り手術について

現在の下肢静脈瘤治療は、多くが日帰り手術で行われています。特に血管内焼灼術や血管内塞栓術(グルー治療)は、入院の必要がなく、当日に帰宅できるのが大きな特徴です。

日帰り手術のメリットは、入院費用がかからないこと、仕事や家事への影響を最小限に抑えられることなどが挙げられます。また、入院による精神的ストレスも少なくて済みます。

一般的な日帰り手術の流れは以下のようになります:

  • 来院・受付(術前の最終確認)
  • 着替え・準備
  • 超音波検査・マーキング
  • 局所麻酔(必要に応じて静脈麻酔も)
  • 治療(10分~40分程度
  • 安静・経過観察(30分〜1時間程度)
  • 帰宅

術後は、血管内焼灼術の場合は1ヶ月程度の弾性ストッキング着用が必要です。グルー治療の場合は、ストッキングが不要なケースも多いです。

術後の注意点としては、当日の激しい運動や入浴は避け、翌日からは普通の生活に戻れますが、1週間程度は激しい運動を控えるよう指示されることが多いです。

日帰り手術は便利ですが、術後に異常を感じた場合にすぐに医療機関に連絡できる体制が整っているかどうかも、医療機関選びの際のポイントになります。

下肢静脈瘤治療後のケアと再発予防

下肢静脈瘤の治療後は、適切なケアと生活習慣の改善で再発を予防することが大切です。

まず、医師の指示に従って弾性ストッキングを着用しましょう。血管内焼灼術後は1〜2週間、状態によってはそれ以上の期間、着用が必要です。正しい着用方法を守ることが重要です。

長時間の立ち仕事や同じ姿勢を続ける方は、定期的に足を動かしたり、足を高く上げて休憩したりすることをお勧めします。

適度な運動も効果的です。特にウォーキングや水泳などの有酸素運動は、下肢の血流を改善し、静脈瘤の再発予防に役立ちます。

体重管理も重要です。肥満は静脈に余分な圧力をかけるため、適正体重を維持することが再発予防につながります。

また、定期的な通院と超音波検査で経過観察を行うことも大切です。早期に変化を発見できれば、再発しても軽度のうちに対処できます。

下肢静脈瘤は完全に治療しても、新たに別の場所に発生する可能性があります。そのため、治療後も継続的なケアと予防が重要なのです。

まとめ:適切な治療選択で生活の質を向上させよう

下肢静脈瘤は放置すると症状が悪化し、生活の質を大きく損なう可能性がある疾患です。しかし、適切な治療を受ければ、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。

治療法の選択は、静脈瘤の状態や症状、ライフスタイルなどを考慮して、医師と相談しながら決めることが大切です。それぞれの治療法にメリット・デメリットがあるため、自分に合った方法を選びましょう。

また、治療を受ける医療機関選びも重要です。医師の専門性や経験、設備の充実度、アクセスの良さなどを総合的に判断するとよいでしょう。

下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんが、適切な治療を受けることで日常生活の快適さを取り戻すことができます。足の症状でお悩みの方は、ぜひ専門医に相談してみてください。

西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医・実施医の資格を持つ医師が、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療をご提案しています。日帰り手術にも対応しており、仕事や家事で忙しい方でも安心して治療を受けていただけます。

足のむくみや痛み、血管の浮き出しなどでお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

詳細はこちら:西梅田静脈瘤・痛みのクリニック

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。