コラム

2025.11.20

【医師監修】片足だけふくらはぎに違和感がある原因と対処法

足の不調は日常生活に大きな影響を与えます。特に「片足だけふくらはぎに違和感がある」という症状は、多くの方が一度は経験するものではないでしょうか。

この記事では、私が西梅田静脈瘤・痛みのクリニック院長として多くの患者さんを診てきた経験から、片足だけのふくらはぎの違和感の原因と対処法について詳しく解説します。

単なる疲労と思って放置すると、重大な病気のサインを見逃してしまう可能性もあります。症状の原因を正しく理解して、適切な対処をしましょう。

片足だけふくらはぎに違和感がある主な原因

片足のふくらはぎだけに違和感を感じる場合、いくつかの原因が考えられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。

ふくらはぎの違和感は、単なる疲労から重大な疾患まで、さまざまな原因で生じます。片足だけに症状が出る場合は、特に注意が必要です。

下肢静脈瘤

下肢静脈瘤は、足の表在静脈の逆流防止弁が機能低下することで発生します。本来は心臓へ戻るはずの血液が逆流し、静脈がうっ滞して拡張・蛇行する状態です。

片足だけに下肢静脈瘤が生じることも多く、その場合はその足のふくらはぎに違和感を感じます。特徴的な症状として、以下のようなものがあります。

  • 夕方に向かって徐々に悪化するだるさや重さ
  • 長時間立っていると増す鈍い痛み
  • 足の表面に浮き出た血管(静脈瘤)
  • むくみ(特に夕方から夜にかけて)
  • 皮膚の色素沈着(茶色く変色)

長時間立ち仕事をされる方、妊娠・出産を経験された方、加齢により静脈弁の機能が低下した方は特にリスクが高まります。

放置すると、うっ滞性皮膚炎や静脈性潰瘍といった合併症を引き起こす可能性があります。

深部静脈血栓症(DVT)

深部静脈血栓症は、ふくらはぎの深部を走る静脈に血栓(血の塊)ができる病気です。片足だけに発症することが多く、以下のような症状が現れます。

  • ふくらはぎのズキズキとした痛みや違和感
  • 腫れや熱感
  • 皮膚の赤みや色の変化
  • 押すと痛む

血栓がふくらはぎの静脈にとどまっている間は局所症状にとどまりますが、血流に乗って肺の血管に詰まると「肺塞栓症」という命に関わる状態に進展する危険性があります。

特に以下の方はリスクが高いとされています。

  • 長時間の飛行機移動・車移動(エコノミークラス症候群)
  • 手術後の安静期間
  • 妊娠・産後
  • 高齢者
  • 喫煙者
  • がん患者
  • ホルモン治療中の女性

片足だけのふくらはぎに違和感があり、腫れや熱感を伴う場合は、深部静脈血栓症の可能性を考慮して早めに医療機関を受診することが重要です。

坐骨神経痛

坐骨神経痛は、腰から足先まで伸びる「坐骨神経」が圧迫されることで生じる症状です。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症が原因となることが多いです。

片側の脚に症状が出ることが特徴で、以下のような症状が見られます。

  • お尻から太ももの裏側、ふくらはぎにかけての痛みやしびれ
  • 電気が走るような鋭い痛み
  • ジンジンとした違和感
  • 足の動きに制限を感じる

坐骨神経痛の場合、腰を曲げたり伸ばしたりする動作で症状が変化することが多いのが特徴です。また、咳やくしゃみなどで腹圧がかかったときに痛みが増すこともあります。

筋肉の疲労や肉離れ

過度な運動や長時間の立ち仕事などで、片方のふくらはぎに負担がかかると、筋肉の疲労や軽度の肉離れを起こすことがあります。

特徴的な症状としては、以下のようなものがあります。

  • 動かすと痛みが増す
  • 筋肉を触ると痛みを感じる
  • 安静にしていると徐々に改善する
  • 突然の激しい痛みが起きた後に違和感が続く(肉離れの場合)

運動後や長時間同じ姿勢を続けた後に発症することが多く、通常は安静にしていれば数日から数週間で改善します。

片足ふくらはぎの違和感と病気の見分け方

ふくらはぎの違和感が単なる疲労なのか、それとも医療機関での受診が必要な状態なのかを見分けるポイントをご紹介します。

以下のような症状がある場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

要注意の症状
  • 片足だけの急な腫れや熱感
  • 安静にしていても改善しない、または悪化する痛み
  • 皮膚の色の変化(赤み、青紫色、茶色など)
  • 歩行困難なほどの痛みや違和感
  • ふくらはぎを押すと強い痛みがある
  • 突然の息切れや胸痛を伴う(肺塞栓症の可能性)

特に深部静脈血栓症は早期発見・早期治療が重要です。上記の症状がある場合は、血管外科や循環器内科、整形外科などを受診してください。

自己チェックの方法

ホーマンズ徴候という簡単なセルフチェック法があります。仰向けに寝て、膝を伸ばした状態で足首を強く背屈(つま先を上に向ける)させたとき、ふくらはぎに痛みが生じる場合は、深部静脈血栓症の可能性があります。

ただし、このテストで痛みがなくても深部静脈血栓症を完全に否定できるわけではありません。気になる症状がある場合は、医療機関での適切な検査を受けることが大切です。

片足ふくらはぎの違和感の対処法

片足のふくらはぎに違和感を感じた場合の対処法について、原因別に解説します。

下肢静脈瘤が原因の場合

下肢静脈瘤による違和感には、以下の対処法が効果的です。

  • 弾性ストッキングの着用(医療用の適切な圧力のもの)
  • 足を心臓より高い位置に上げて休む
  • 長時間の立ち仕事や座り仕事を避け、こまめに歩く
  • 十分な水分摂取
  • 適度な運動(ウォーキングや水泳など)

症状が進行している場合は、専門医による治療が必要です。現在では、日帰りで行える低侵襲な治療法が多数あります。

当院では、血管内焼灼術(高周波/レーザー)、グルー治療、硬化療法、瘤切除など、患者さんの状態に合わせた最適な治療法を提供しています。

深部静脈血栓症が疑われる場合

深部静脈血栓症が疑われる場合は、自己判断での対処は危険です。すぐに医療機関を受診してください。

診断には超音波検査(エコー)やD-ダイマー検査などが行われ、血栓が見つかった場合は抗凝固薬による治療が開始されます。

医師の指示があるまでは、以下のことを避けてください。

  • マッサージ(血栓を剥がして肺に飛ばす危険性)
  • 長時間の安静(かえって血栓形成を促進)
  • 熱いお風呂(血管拡張により血栓が移動する可能性)
坐骨神経痛が原因の場合

坐骨神経痛による違和感には、以下の対処法が効果的です。

  • 急性期は安静と冷却
  • 痛みが落ち着いたら適切なストレッチ
  • 姿勢の改善(長時間同じ姿勢を避ける)
  • 腰部のサポート
    坐骨神経のハイドロリリース

症状が強い場合や長引く場合は、整形外科や脊椎専門クリニックでの治療が必要です。

筋肉疲労や肉離れの場合

筋肉の疲労や軽度の肉離れによる違和感には、RICE処置が基本です。

  • Rest(安静):痛みのある部位を休ませる
  • Ice(冷却):炎症を抑えるために冷やす
  • Compression(圧迫):弾性包帯などで軽く圧迫
  • Elevation(挙上):心臓より高い位置に上げる

症状が2週間以上続く場合や、痛みが強い場合は整形外科を受診しましょう。

片足ふくらはぎの違和感を予防するには

片足のふくらはぎに違和感を感じないようにするための予防法をご紹介します。

日常生活での予防法

日常生活の中で取り入れられる予防法には、以下のようなものがあります。

  • 長時間同じ姿勢を避け、1時間に1回は立ち上がって歩く
  • 適度な水分摂取(1日1.5〜2リットル)
  • バランスの良い食事(特に食物繊維を多く含む食品)
  • 適切な運動(ウォーキング、水泳、サイクリングなど)
  • 体重管理(肥満は下肢静脈瘤のリスク因子)
  • 禁煙(喫煙は血管の健康に悪影響)

これらの習慣を日常に取り入れることで、血流改善や筋力維持につながり、ふくらはぎの違和感を予防できます。

職業別の予防法

職業によって、ふくらはぎへの負担は異なります。職業別の予防法を紹介します。

デスクワークが多い方
  • 足首の運動(足首を回す、つま先の上げ下げ)を定期的に行う
  • 椅子に深く腰掛け、足を組まない
  • 立ち上がって軽いストレッチをこまめに行う
  • 弾性ストッキングの着用を検討する
立ち仕事が多い方
  • 適切なクッション性のある靴を選ぶ
  • 弾性ストッキングの着用
  • 休憩時に足を高く上げて休む
  • 体重を左右の足に均等にかける
  • 足裏のアーチをサポートするインソールの使用

これらの予防法を取り入れることで、職業による足への負担を軽減できます。

まとめ:片足ふくらはぎの違和感は侮れない

片足だけのふくらはぎに違和感がある場合、単なる疲労から重大な疾患まで、さまざまな原因が考えられます。特に以下のような症状がある場合は、早めに専門医に相談することが重要です。

  • 片足だけの腫れや熱感
  • 安静にしていても改善しない痛み
  • 皮膚の色の変化
  • 歩行困難なほどの痛みや違和感

当院では、下肢静脈瘤をはじめとする足の血管トラブルに対して、最新の診断・治療を提供しています。超音波検査による詳細な診断と、患者さん一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案します。

「足が重い」「夕方になるとむくむ」「片足だけふくらはぎに違和感がある」などの症状でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。早期発見・早期治療が、快適な日常生活を取り戻す第一歩です。

西梅田静脈瘤・痛みのクリニックは、JR大阪駅・阪神福島駅・大阪メトロ西梅田駅から徒歩圏内にあり、平日18:00まで、土曜日は午前中も診療を行っています。

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。