
「夕方になると靴下の跡がくっきり残る」「ふくらはぎが重だるくて、マッサージに通っている」・・・こんな症状に心当たりはありませんか?
足のむくみは多くの方が経験する症状ですが、実はその背景に「下肢静脈瘤」が隠れているケースが少なくありません。
下肢静脈瘤は、足の表在静脈で逆流防止弁が壊れることで血液がうっ滞し、静脈が拡張・蛇行してコブ状になる疾患です。見た目のボコボコだけでなく、むくみ・だるさ・こむら返りといった不快な症状を引き起こします。
本記事では、下肢静脈瘤専門医として多くの患者さんを診てきた経験をもとに、なぜ下肢静脈瘤で足がむくむのか、その原因と自宅でできる対策について詳しく解説します。
下肢静脈瘤とむくみの関係
下肢静脈瘤によるむくみは、単なる「疲れ」や「年齢のせい」ではありません。
足の静脈には、心臓へ血液を戻すための「逆流防止弁」が備わっています。この弁が正常に機能していれば、重力に逆らって血液を上へ送ることができます。
ところが、下肢静脈瘤では弁が壊れてしまい、血液が逆流してしまいます。
逆流した血液は足にたまり続け、静脈内の圧力が高まります。この静脈高血圧により、血液中の水分が血管外へ染み出し、皮膚の下に組織間液として蓄積されます。これが「むくみ」の正体です。
むくみが起こりやすい部位
下肢静脈瘤によるむくみは、特定の部位に現れやすい特徴があります。
ふくらはぎの内側(くるぶし周辺)や足首の後ろ側(アキレス腱の周辺)に目立つことが多く、午後から夕方にかけて症状が強くなるのが典型的なパターンです。
朝起きたときはすっきりしているのに、夕方になると靴下の跡がくっきり残る、足がパンパンに張る・・・こうした日内変動があれば、下肢静脈瘤が原因の可能性が高いです。
むくみと静脈瘤の見た目の関係
興味深いことに、むくみがひどくなると元々あった血管のふくらみ(コブ)が目立たなくなることがあります。
一見、静脈瘤が治ったように見えますが、実際には病状が進行している証拠です。これを「かくれ静脈瘤」と呼びます。
むくみによって皮下組織が膨張し、静脈瘤が埋もれてしまうためです。見た目だけで判断せず、むくみの症状が続く場合は専門医の診察を受けることが大切です。
下肢静脈瘤でむくみが起こる原因
下肢静脈瘤によるむくみには、いくつかの明確な原因があります。
静脈弁の機能不全
最も根本的な原因は、静脈弁の機能不全です。
足の表在静脈(大伏在静脈や小伏在静脈)の弁が壊れると、本来心臓へ戻るはずの血液が重力に負けて逆流します。この逆流により、足の静脈に血液がうっ滞し、静脈内の圧力が上昇します。
圧力が高まった静脈からは、血液中の水分が血管外へ漏れ出し、皮膚の下に組織間液として蓄積されます。これがむくみの直接的なメカニズムです。
立ち仕事や長時間の座位
長時間の立ち仕事やデスクワークは、下肢静脈瘤のリスク要因であると同時に、むくみを悪化させる要因でもあります。
足を動かさない状態が続くと、ふくらはぎの筋肉による「筋ポンプ作用」が十分に働きません。第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉を動かさないと、静脈血が心臓へ戻りにくくなり、足に血液がたまりやすくなります。
美容師、調理師、販売員など立ち仕事に従事する方は、下肢静脈瘤の発症率が高く、むくみの症状も強く出る傾向があります。

妊娠・出産の影響
妊娠中は体内の血液量が増加し、大きくなった子宮が下半身の血管を圧迫します。
これにより足の静脈に血液がたまりやすくなり、下肢静脈瘤が起こりやすくなります。また、妊娠ホルモンの影響で静脈の壁が弱くなることも要因の一つです。
統計的には2回目の妊娠中に静脈瘤が出現または悪化することが多く、出産経験者の約50%に下肢静脈瘤が見られるといわれています。妊娠・出産をきっかけにむくみが慢性化した場合は、下肢静脈瘤の可能性を疑う必要があります。
加齢と遺伝的要因
年齢とともに静脈の弁や血管壁は劣化しやすくなります。
また、家族に下肢静脈瘤の方がいる場合、遺伝的に発症リスクが高まります。遺伝が原因の下肢静脈瘤は、10~20代の若い年代から発症することもあります。
加齢や遺伝的要因は変えられませんが、早期に発見し適切な対策を講じることで、むくみの進行を遅らせることは可能です。
自宅でできるむくみ対策
下肢静脈瘤によるむくみは、自宅でのセルフケアで症状を緩和したり、進行を遅らせることができます。
ただし、これらは根本的な治療ではありません。症状が強い場合や長引く場合は、専門医の診察を受けることが重要です。
弾性ストッキングの着用
弾性ストッキングは、下肢静脈瘤のむくみ対策として最も効果的な方法の一つです。
足首から上に向かって段階的に圧迫力が弱くなる設計により、静脈血の心臓への還流を促進し、血液のうっ滞を防ぎます。
医療用弾性ストッキングと市販の着圧ストッキングは異なります。医療用は圧迫圧が医学的に設計されており、長持ちします(約半年使用可能)。必ず医師に処方してもらい、正しいサイズと圧迫力のものを選び、履き方の指導を受けてください。
朝起きたら履き、寝る前に脱ぐのが基本です。しわを伸ばしながら丁寧に履くことで、適切な圧迫効果が得られます。
適度な運動と筋肉の活用
ふくらはぎの筋肉を動かすことで、筋ポンプ作用が高まり、血液の停滞を防げます。
毎日の軽い運動やジョギングが理想ですが、運動習慣がない方は日常生活の中で足を動かす工夫をしましょう。エレベーターの代わりに階段を使う、駐車場では離れた場所に車を停める、電車やバス通勤の際に一駅分を歩くなど、小さな積み重ねが効果的です。
デスクワークや立ち仕事の方は、定期的に足踏みをしたり、歩き回って足の筋肉を動かすことを心がけてください。
足のマッサージと足上げ
数分間の簡単なマッサージを1日数回行うことで、むくみの予防や症状の進行抑制効果が期待できます。
足全体を下から上にかけて、手のひらで2~3分マッサージします。足の血液を心臓へ送り出すようなイメージで、下から上に両手のひらでさするように押し上げましょう。
ただし、痛みを伴う場合や症状によっては刺激がかえって悪化につながる場合もあるため、まずは医療機関を受診することが大切です。
また、就寝時に足を少し高くして休むことで、重力による血液のうっ滞を軽減できます。クッションなどを使って足を心臓より高い位置に保つと効果的です。
生活習慣の改善
肥満や運動不足は血液循環を悪化させ、むくみを引き起こす要因となります。
バランスの取れた食事と適度な運動により、適正体重を維持することが大切です。また、塩分の過剰摂取は体内に水分を蓄積させ、むくみを悪化させる可能性があります。
長時間の立位や座位を避け、こまめに姿勢を変えることも重要です。同じ姿勢を続けることで血液が足にたまりやすくなるため、意識的に体を動かす習慣をつけましょう。
専門医による治療が必要なケース
自宅でのセルフケアで症状が改善しない場合や、以下のような症状がある場合は、専門医の診察を受けることを強くお勧めします。
受診の目安となる症状
足の血管が浮き出る・網目状に透ける・ボコボコするといった見た目の変化は、下肢静脈瘤の典型的なサインです。
むくみ・だるさ・夜間のこむら返りが増えた場合も要注意です。特に夕方に症状が悪化する場合は、静脈のうっ滞が原因の可能性が高いです。
皮膚の色素沈着・湿疹・かゆみ・潰瘍が気になる場合は、病状が進行している証拠です。放置すると難治性皮膚潰瘍に進行する恐れがあります。
産後や立ち仕事で症状が夕方に悪化する場合も、下肢静脈瘤の可能性を疑う必要があります。
専門医による検査と診断
当院では、まず問診・視触診・超音波検査(エコー)で、原因となる静脈(大伏在静脈・小伏在静脈・側枝・骨盤内など)と逆流の範囲・程度を特定します。
超音波検査は、ゼリーを塗ってプローブと呼ばれる探子を当てるだけですので痛みはありません。静脈弁が機能しているか、血液の逆流があるか、静脈の直径や逆流時間などを詳しく調べます。
原因血管を見逃すと再発につながるため、解剖学的評価に基づく治療計画を大切にしています。必要に応じて血管造影装置も活用し、低侵襲で確かな根治性を目指します。

当院で提供する治療法
当院では、患者さんの解剖学的特徴と重症度に合わせて、最適な治療法を選択します。
血管内焼灼術(高周波/レーザー)は、皮膚切開が最小限で日帰り可能、保険適用の治療です。術後痛や皮下出血が少ないのが利点ですが、蛇行や径の大きい静脈は適応外となる場合があります。
グルー治療は、医療用接着剤で静脈を閉塞させる方法で、焼灼が難しい症例に選択肢となります。
硬化療法は、クモの巣状や網目状など表在の目立ちに有効です。
瘤切除・高位結紮・ストリッピングは、形態改善や再発抑制を目的に、症例に応じて併用します。
すべての治療は、IVR(画像下治療)専門医である院長が診察から治療、術後ケアまで一貫して担当します。術後は弾性ストッキングの指導や生活アドバイスを通じて、再発リスクに配慮したケアを行っています。
まとめ
下肢静脈瘤によるむくみは、静脈弁の機能不全により血液が逆流し、足に血液がうっ滞することで起こります。
午後から夕方にかけて症状が強くなる、ふくらはぎの内側や足首周辺にむくみが目立つ、といった特徴があれば、下肢静脈瘤の可能性を疑う必要があります。
自宅でできる対策として、弾性ストッキングの着用、適度な運動、足のマッサージ、生活習慣の改善などが効果的です。ただし、これらは症状の緩和や進行の抑制に役立ちますが、根本的な治療ではありません。
症状が長引く場合や、皮膚の色素沈着・湿疹・潰瘍などが見られる場合は、専門医の診察を受けることが重要です。早期に適切な治療を受けることで、むくみの改善だけでなく、将来的な合併症の予防にもつながります。
西梅田静脈瘤・痛みのクリニックは、JR大阪駅・阪神福島駅・大阪メトロ西梅田駅から徒歩圏内の好立地にあり、平日18:00まで、土曜午前も診療しています。24時間Web予約に対応しており、お忙しい方でも通いやすい環境です。
足のむくみやだるさでお悩みの方は、「もう年だから」「仕方ない」と諦めず、ぜひ一度ご相談ください。足の健康を取り戻し、快適な日常生活を送るお手伝いをさせていただきます。
【著者】
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義
【略歴】
現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。
下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、
患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。
早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。
【所属学会・資格】
日本医学放射線学会読影専門医、認定医
日本IVR学会専門医
日本脈管学会専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医
マンモグラフィー読影認定医
本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。
インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。
特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。

