「足の冷え」は血流だけの問題ではありません
夕方になると足がだるい。
冬場になると足先が冷たくて眠れない。
こうした症状を「年齢のせい」「冷え性だから仕方ない」と諦めていませんか?
実は、足の冷えやだるさの背景には、**下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)**という血管の病気が隠れていることがあります。下肢静脈瘤は、足の静脈内にある逆流防止弁が壊れて血液が心臓に戻りにくくなり、足に血液が溜まってしまう病気です。命に関わるものではありませんが、放置すると症状は徐々に進行し、むくみ・こむら返り・皮膚炎といったトラブルにつながります。
この記事では、放射線科・循環器内科の専門医として下肢静脈瘤の診療に携わってきた経験をもとに、足の冷えと下肢静脈瘤の関係、そして改善のための具体的な方法を解説します。
下肢静脈瘤とは?足の血流トラブルのメカニズム
下肢静脈瘤は、足の表面に近い静脈が膨らんでボコボコと浮き出る病気です。
足の静脈には、血液が心臓に戻る際に逆流しないよう「逆流防止弁」が備わっています。この弁が何らかの理由で壊れたり、弁の働きが弱くなったりすると、血液が足に溜まるようになり、静脈が膨らんでしまうのです。
下肢静脈瘤の主な原因として、遺伝的要因・妊娠や出産・長時間の立ち仕事などが知られています。また、男性よりも女性に多く、年齢とともに発症率が高くなる傾向があります。日本人では40%以上の方に何らかの静脈瘤が見られるとされており、決して珍しい病気ではありません。
下肢静脈瘤の種類
下肢静脈瘤にはいくつかの種類があります。
- 伏在静脈瘤・・・太ももや膝の内側にある太い静脈に発生し、血管がボコボコと浮き出るタイプ
- 側枝静脈瘤・・・ふくらはぎから膝の後ろに発症する静脈瘤
- 網目状静脈瘤・・・細い静脈が網目状に膨らんで見えるタイプ
- クモの巣状静脈瘤・・・さらに細い静脈が拡張し、青白い色や赤紫色に見えるタイプ
これらのうち、手術が必要となるのは主に伏在静脈瘤です。
足の冷えと下肢静脈瘤の関係

「足が冷える」と聞くと、多くの方は「血流が悪いから」と考えます。
確かにそれは正しいのですが、血流が悪くなる原因はさまざまです。下肢静脈瘤もそのひとつであり、静脈の逆流によって足に血液が溜まることで、むくみ・だるさ・冷えといった症状が引き起こされます。
静脈瘤があると足が冷える理由
下肢静脈瘤では、静脈内に血液が停滞することで「うっ血」という状態が起こります。うっ血が続くと、足の組織への酸素供給が低下し、冷えやだるさを感じやすくなります。また、静脈の血液が溜まることで足全体の血流バランスが崩れ、冷感が強くなることもあります。
季節による症状の変化
下肢静脈瘤の症状は季節によって変化します。
夏場は気温の上昇により血管が拡張し、足の血液が心臓に戻りにくくなるため、むくみやだるさが悪化しやすくなります。一方、冬場は寒さで血管が収縮するため、一時的に症状が軽く感じられることがあります。しかし、これは根本的な改善ではなく、活動量の低下により筋肉のポンプ作用が弱まり、結果的に静脈の流れは悪化していきます。
冬に「足が冷える」と感じる場合、それは単なる冷え性ではなく、下肢静脈瘤による血流低下が原因かもしれません。
下肢静脈瘤のセルフチェック
以下のような症状がある方は、下肢静脈瘤の可能性があります。
- 足のだるさ・重さが続く
- 夕方になると足がむくむ
- 夜中にこむら返りが起きる
- 足の血管がボコボコと浮き出ている
- クモの巣状の細かい血管が気になる
- 足がかゆい・皮膚が黒ずんでいる
- 足の冷えが改善しない
これらは下肢静脈瘤の典型的なサインです。
特に、立ち仕事をされている方・妊娠や出産の経験がある方・家族に静脈瘤の方がいる方は、発症リスクが高いとされています。気になる症状がある場合は、早めに専門医に相談することをおすすめします。
放置するとどうなる?
下肢静脈瘤は自然に治ることはなく、徐々に進行する病気です。
放置すると、むくみやだるさが悪化するだけでなく、皮膚に色素沈着(皮膚が黒ずむ)や皮膚炎が生じることがあります。さらに進行すると、皮膚潰瘍(皮膚が崩れてえぐれたようになる状態)や表在性血栓性静脈炎(静脈に炎症と血栓が生じる状態)を引き起こす可能性もあります。
早期に発見し、適切な治療を受けることが、症状の悪化を防ぐ鍵となります。
下肢静脈瘤の診断と治療
下肢静脈瘤の診断には、超音波(エコー)検査が欠かせません。
足の静脈は皮膚の下に隠れており、見た目だけでは正確な診断ができません。当院では、血管診療に精通した医師が超音波検査を用いて「どの血管に逆流があるか」「どの程度進行しているか」を詳しく評価します。正確な診断が、良質な治療の第一歩です。
当院の治療法
下肢静脈瘤の治療法は、症状や血管の状態に応じて選択します。
高周波/レーザー治療(血管内焼灼術)は、皮膚を大きく切らずに血管の内側から静脈を閉鎖する方法です。日帰りで治療が可能であり、身体への負担が少ないのが特徴です。
グルー治療は、医療用接着剤で静脈を閉塞させる方法で、焼灼が難しい症例に選択肢となります。
硬化療法は、薬剤を注入して血管を閉じる治療法で、クモの巣状・網目状静脈瘤にも対応できます。
圧迫療法(弾性ストッキング)は、軽度から中等度の症状に用いられ、治療後の再発予防にも使用します。
当院では、患者さまの年齢・仕事・生活環境も考慮し、過不足のない最適な治療を提案しています。
自宅でできる足の冷え・むくみ対策
下肢静脈瘤の予防や症状の悪化を防ぐために、日常生活でできるセルフケアがあります。
ふくらはぎを動かす
ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれ、筋肉の収縮により血液を心臓に押し上げる役割を果たしています。長時間の立ち仕事や座り仕事では、こまめに足を動かすことが大切です。つま先立ちや屈伸運動を取り入れると効果的です。
マッサージを行う
足先から膝裏(太もも)方向へ、手のひら全体で優しくさするようにマッサージします。強い力を入れすぎると逆効果になるため、軽く撫でる程度で十分です。寝る前や入浴時に2〜3分行うだけでも、むくみやだるさの軽減が期待できます。
弾性ストッキングの活用
医師の指示に従って弾性ストッキングを着用することで、足の静脈圧を適切に保ち、血液の逆流を防ぐことができます。特に立ち仕事の方には有効です。
生活習慣の見直し
長時間の立ち仕事や座位を避ける、足を上げて休憩する、適度な運動を取り入れるなど、日常生活の工夫が予防につながります。また、冷房の効いた室内でも足を冷やしすぎないよう注意し、シャワーだけでなく湯船に浸かって血行を改善することも大切です。
専門医への相談が大切な理由

足の冷えやむくみは「よくある症状」として見過ごされがちです。
しかし、その背景には下肢静脈瘤という進行性の病気が隠れている可能性があります。下肢静脈瘤は自然に治ることはなく、放置すると症状は徐々に悪化します。早期に発見し、適切な治療を受けることで、足の軽さが戻り、こむら返りの改善、見た目の悩み解消、むくみの軽減など、生活の質が大きく向上します。
当院では、放射線科・循環器内科の専門性を活かし、超音波検査による精密な診断と、患者さまの負担が少ない日帰り・低侵襲治療を提供しています。むくみ・しびれ・血管のコリなど、足の血流低下に関わる幅広い症状を総合的に診療し、治療後には足の血流を良くする運動、姿勢や歩き方のアドバイス、弾性ストッキングの適切な使い方なども丁寧にお伝えしています。
「足のだるさ」「夕方のむくみ」「夜中のこむら返り」「血管の浮き」など、気になる症状がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
まとめ
足の冷えは血流だけの問題ではなく、下肢静脈瘤という血管の病気が関係していることがあります。
下肢静脈瘤は、足の静脈内にある逆流防止弁が壊れて血液が足に溜まる病気であり、むくみ・だるさ・冷え・こむら返りといった症状を引き起こします。放置すると徐々に進行し、皮膚炎や潰瘍につながる可能性もあるため、早期の診断と治療が重要です。
当院では、超音波検査による精密診断と、高周波/レーザー治療・硬化療法・圧迫療法など、患者さまの状態に応じた最適な治療を提供しています。また、日常生活でできるセルフケアとして、ふくらはぎを動かす・マッサージを行う・弾性ストッキングを活用するなどの方法も有効です。
足の症状でお悩みの方は、「年齢のせい」と諦めず、専門医に相談することをおすすめします。健康な足で過ごせる日常を取り戻すために、私たちがサポートいたします。
西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、下肢静脈瘤をはじめとした足の血流・血管のトラブルを専門的に診療しています。放射線科・循環器内科を含む血管の専門医が、根拠に基づいた治療を提供し、患者さまの負担を最小限にする日帰り・低侵襲治療を中心に行っています。足のだるさ・むくみ・こむら返り・血管の浮きなど、気になる症状がある方は、ぜひ一度安心してご相談ください。【著者】
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義
【略歴】
現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。
下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、
患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。
早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。
【所属学会・資格】
日本医学放射線学会読影専門医、認定医
日本IVR学会専門医
日本脈管学会専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医
マンモグラフィー読影認定医
本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。
インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。
特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。


