足の血管が青く見えるのは自然な現象?それとも病気のサイン?
「最近、足の血管が青く浮き出て見える」「夕方になると血管がくっきり目立つ」そんな症状に心当たりはありませんか?
足の血管が青く見えること自体は、必ずしも異常ではありません。皮膚の薄い方や色白の方は、もともと血管が透けて見えやすい傾向があります。しかし、以前よりも血管が目立つようになった、だるさやむくみを伴う、血管がボコボコと盛り上がっているといった場合は注意が必要です。
これらは「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」という足の血管の病気のサインかもしれません。
下肢静脈瘤は、足の静脈にある逆流防止弁が壊れることで血液が心臓へ戻れず、足に溜まってしまう病気です。日本人の約9%、推定1000万人が罹患しているとされ、決して珍しい病気ではありません。特に女性や長時間の立ち仕事をされている方に多く見られます。
この記事では、放射線科・循環器内科の専門知識を持つ医師の視点から、足の血管の色でわかる下肢静脈瘤の特徴と注意点について詳しく解説します。
血管の色が教えてくれる下肢静脈瘤のタイプ
下肢静脈瘤には、血管の見え方によっていくつかのタイプがあります。血管の色や形状は、病気の進行度や治療の必要性を判断する重要な手がかりになります。
青色に見える「伏在型静脈瘤」と「側枝型静脈瘤」
最も一般的なのが、足の表面近くを走る太い静脈が拡張する「伏在型静脈瘤」です。
大伏在静脈や小伏在静脈という本幹となる血管に逆流が生じると、血管が太く蛇行し、皮膚の表面に青く浮き出て見えます。立った状態で直径3mm以上に拡張した表在静脈は、医学的に静脈瘤と診断されます。
伏在静脈から枝分かれした血管に逆流が発生するのが「側枝型静脈瘤」です。時間の経過とともに拡張・蛇行し、皮膚に近い場所を走るため血管の浮き出しやうねりが目立ちやすいのが特徴です。
これらのタイプは、足のだるさ・重さ・むくみ・夜間のこむら返りなどの症状を引き起こすことが多く、進行すると皮膚炎や色素沈着、さらには皮膚潰瘍といった深刻なトラブルにつながる可能性があります。
青色の網目状に見える「網目状静脈瘤」
皮膚の下2~3mmの浅い部分にある細い静脈が拡張したものが「網目状静脈瘤」です。
直径2~4mm程度の青い血管が網の目のような模様に見えることからこの名前が付きました。太ももの外側や膝の周りに多く見られます。
痛みやだるさは軽度で、主に美容的な悩みとして相談されるケースが多いタイプです。基本的には無症状ですが、クモの巣状静脈瘤と交通していることもあります。
赤紫色に見える「クモの巣状静脈瘤」
皮膚の表面近くにある直径1mm以下の非常に細い毛細血管が拡張したものが「クモの巣状静脈瘤」です。
赤や紫色の細い線状の血管がクモの巣のように細かく皮膚表面に広がる状態で、太ももや膝周辺に多く見られます。痛みやだるさはほとんどなく、主に美容上の問題として相談されます。
思春期や妊娠期に発症しやすい傾向があり、医学的な治療の必要性は低いですが、気になる場合は硬化療法などの美容的な治療を受けることができます。
下肢静脈瘤が起こるメカニズムと発症しやすい人の特徴
なぜ足の静脈に逆流が起きるのでしょうか?
その根本的な原因は、静脈の中にある「弁」の機能不全です。
静脈弁の機能不全が引き起こす血液の逆流
足の血液は、筋肉のポンプ作用により心臓に送り返されます。この時、血液が重力に負けて逆流しないように、静脈には逆流防止弁が備わっています。
しかし、加齢・遺伝・妊娠出産・長時間の立ち仕事などさまざまな要因により弁が壊れると、血液が本来の流れに逆らって足側に戻り、静脈内に滞留(うっ滞)します。
この血液の滞留によって静脈の内圧が上昇し、血管の壁が押し広げられ、さらに血管がクネクネと蛇行して皮膚表面に浮き出るようになります。一度壊れた弁は再生することはないため、時間とともに少しずつ弁の破壊が進み、強い逆流へとつながります。
下肢静脈瘤になりやすい人の特徴
下肢静脈瘤は男女問わず起こる疾患ですが、男性より女性に多く見られます。男性の約2~3倍と言われています。
**遺伝的要因**としては、家族に下肢静脈瘤の人がいる方、生まれつき静脈壁が弱い方が発症しやすい傾向があります。
**生活習慣・職業**では、長時間の立ち仕事(美容師、調理師、販売員など)に従事する方に非常に多く見られます。デスクワークで座りっぱなしの方や運動不足の生活を送っている方も注意が必要です。
**身体的要因**としては、妊娠・出産の経験がある女性に多く発症します。妊娠すると腹圧が高くなり、下肢からの血液の流れが障害され、下肢の静脈の圧力が高くなってしまいます。その結果、逆流防止弁に負担がかかり壊れてしまうのです。肥満体型の方や40歳以降の方も発症率が高くなります。
**その他の要因**として、高いヒールを履く機会が多い方、便秘がちで力みやすい方、締め付けの強い衣服を着用する方なども注意が必要です。
見逃してはいけない下肢静脈瘤の症状
下肢静脈瘤の症状は、見た目の変化だけではありません。
血液が溜まることで血の巡りが悪くなり(循環不全)、さまざまな不快な症状を引き起こします。
初期に現れやすい症状
**足のだるさ・重さ**は、下肢静脈瘤の代表的な症状です。本来静脈を伝って心臓に返っていくはずの血液が逆流して足の静脈や筋肉にたまってしまうことで起こります。
朝や午前中に比べて夕方になると足がだるくなってくることが多く、特にふくらはぎが重だるく感じます。疲れがたまって足がだるくて眠れないという方もいらっしゃいます。
**むくみ**も頻繁に見られる症状です。逆流して足にたまった血液の水分が皮膚の下にしみ出てむくみが生じます。特に下肢静脈瘤によるむくみはふくらはぎの内側(くるぶし周辺)や足首の後ろ側(アキレス腱の周辺)に目立つことが多いです。
立ち時間が長くなるほどむくみは強くなるので、夕方や夜になるといつも靴下の跡がついてしまうという方も多いです。
**夜間や明け方のこむら返り**も特徴的な症状です。突然ふくらはぎの筋肉がつる「こむら返り」が起きやすくなり、特に朝方に多い傾向にあります。
進行すると現れる皮膚の症状
下肢静脈瘤は足の血液循環が悪くなるため、皮膚にも影響が出てきます。
最初は**皮膚にかゆみ**を感じます。だんだん進行すると湿疹のように慢性化し、赤みがかった皮膚の色が茶色や黒っぽく変色し**色素沈着**を起こします。これが下肢静脈瘤による皮膚炎(うっ滞性皮膚炎)です。
静脈瘤が進行すると血流が滞り、皮膚の代謝が落ちて古い角質が溜まり、全体的にくすんだ印象になります。さらに毛細血管が破れやすくなり、血液中の鉄分(ヘモジデリン)が皮膚に沈着して、茶色~黒色の色素沈着が起きます。
一見「日焼けかな?」「加齢かな?」と見過ごしがちですが、実は体の中で起きている血液の循環障害が原因かもしれません。
最も重症な状態:皮膚潰瘍
皮膚炎を起こした皮膚は傷つきやすく、小さな刺激でも皮膚が欠損してしまいます。
皮膚がえぐれて穴のような傷ができるのが**皮膚潰瘍(ひふかいよう)**です。皮膚潰瘍は下肢静脈瘤が最も悪化した状態です。
健康な皮膚であれば傷はすぐ治りますが、下肢静脈瘤による皮膚潰瘍は皮膚の血流が悪くなっているせいで治りが遅いです。長年皮膚科に通院しているが治らないという方もいらっしゃいます。根本原因の下肢静脈瘤が治療されなければ、いくら皮膚の治療を続けてもなかなか良くはならないのです。
皮膚潰瘍は強い痛みを伴い、毎日とても辛いと言う方もいます。皮膚潰瘍の治療は長期化しますので、皮膚潰瘍になる前に下肢静脈瘤の治療をすることをおすすめしています。
下肢静脈瘤の診断と治療方法
下肢静脈瘤の診断には、基本的に痛みを伴う検査は必要ありません。
視診・触診による診断をより確実にするために、超音波検査などの非侵襲的な検査を行います。
超音波(エコー)による精密診断
足の静脈は皮膚の下に隠れており、見た目だけでは診断できません。
当院では、血管診療に精通した医師が超音波検査で「どの血管に逆流があるか」「どの程度進行しているか」を正確に評価します。超音波検査は人体に無害・無痛な検査で、繰り返して行えるため、病気の早期発見・経過観察に大変有効です。
皮膚の上からプローブという器具を体表に当てることで体内臓器の形態や血流情報をリアルタイムで表示し、血管系疾患を速やかに診断することが可能です。正確な診断が良質な治療の第一歩です。
身体への負担が少ない日帰り・低侵襲治療
症状・血管の状態に応じて、最適な治療法をご提案します。
**高周波/レーザー治療(血管内焼灼術)**は、現在の主流となっている治療法です。皮膚を大きく切らず、血管の内側から静脈を閉鎖します。日帰りで可能で、術後の痛みやダウンタイムが少なく、短期間で日常生活や仕事への復帰が可能です。
熱を加えて拡張した血管を閉塞させる方法で、大きな傷跡が残らず、痛みが少ないのが特徴です。局所麻酔で行え、体の負担が少なく、手術時間は片足約10~15分で、すぐに歩けます。
**グルー治療**は、医療用接着剤で静脈を閉塞させる方法で、焼灼が難しい症例に選択肢となります。
**硬化療法**は、薬剤を注入してクモの巣状・網目状静脈瘤にも対応する治療法です。簡単な手術や血管内治療と組み合わせて行うこともあります。
**圧迫療法(弾性ストッキング)**は、軽度~中等度の症状に用います。治療後の再発予防にも使用します。逆流を抑え込み、よどんだ血液・リンパ液を押し流す効果があります。
医療用弾性ストッキングは必ず医師に処方してもらってください。圧迫力、サイズ、型が異なり、履き方の指導を受ける必要があります。朝起きたら履き、寝る前に脱ぐのが基本です。
患者さまの年齢・仕事・生活環境も考慮し、過不足のない最適な治療をご提案いたします。
治療の必要性と適応
無症状で皮膚に異常がない場合は、まずは経過観察を選択することも可能です。
しかし、足のだるさやむくみなどの自覚症状が現れている場合、または湿疹や色素沈着といった皮膚症状が出現している場合には、症状の進行や重症化を防ぐため、早期の手術治療が推奨されます。
特に皮膚潰瘍に至ると治癒までに長期間を要し、再発リスクも高まるため、早めの介入が非常に重要です。下肢静脈瘤は良性疾患で足切断や死亡することはありませんが、生活の質(QOL)に大きく影響します。
症状が軽いうちの受診が治療効果を高めるポイントです。
生活習慣の改善と再発予防
血管の病気には、立ち仕事・冷え・姿勢・運動不足など日常生活の影響が少なくありません。

当院では治療後、再発しにくい足の環境づくりをサポートしています。
日常生活での注意点
**長時間の同一姿勢を避ける**ことが重要です。立ちっぱなし・座りっぱなしは静脈に負担をかけます。こまめに足を動かしましょう。
**日常的にふくらはぎを動かす運動**を取り入れてください。ウォーキングや足首の上下運動は血流を促進し、静脈瘤や皮膚炎の予防になります。
**適切な体重管理**も大切です。肥満は静脈に負担をかけ、下肢静脈瘤のリスクを高めます。
**弾性ストッキングの適切な使用**も効果的です。医師の指導のもと、適切な圧力の着圧ソックスを使うことで血流を助け、症状の進行を抑えることができます。
治療後のケアと再発予防
治療後は、足の血流を良くする運動、姿勢や歩き方のアドバイス、弾性ストッキングの適切な使い方などを丁寧にお伝えします。
皮膚に一度ついてしまった色はとれませんが、下肢静脈瘤の治療後から少しずつ色が薄くなったとおっしゃる方はいます。
下肢静脈瘤は進行性の疾患であり、早期診断・治療が重要です。適切な治療と生活習慣の改善により、足の軽さが戻る、こむら返りの改善、見た目の悩み解消、むくみの軽減など、生活の快適さが大きく変わります。
まとめ:足の血管の色は健康のバロメーター
足の血管が青く浮き出て見えること自体は、必ずしも病気のサインではありません。
しかし、以前よりも血管が目立つようになった、だるさやむくみを伴う、血管がボコボコと盛り上がっているといった場合は、下肢静脈瘤の可能性があります。
下肢静脈瘤は、足のだるさ・重さ、夕方に悪化するむくみ、夜中のこむら返り、血管がボコボコ浮き出る、クモの巣状の細かい血管が気になる、足がかゆい・色が黒ずむといった症状が典型的なサインです。
これらの症状がある方は、早期の受診が治療効果を高め、生活の質の改善につながります。
足のむくみ・だるさ・血管の浮きなど、一見「よくある症状」と思われがちなトラブルの背景には、静脈の逆流や血流低下が隠れていることがあります。当院では、放射線科の専門性を活かし、患者さまの負担が少ない安全な治療を提供しています。
「歳だから仕方ない」と我慢せず、専門医のもとで適切に治療すれば、健康な足で過ごせる日常を取り戻すことができます。
足の血管の色や形状が気になる方、だるさやむくみでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。超音波検査による精密診断で、あなたの足の状態を正確に評価し、最適な治療法をご提案いたします。
【著者】
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義
【略歴】
現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。
下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、
患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。
早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。
【所属学会・資格】
日本医学放射線学会読影専門医、認定医
日本IVR学会専門医
日本脈管学会専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医
マンモグラフィー読影認定医
本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。
インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。
特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。


