「指を曲げると引っかかる」「朝起きたら指が動かしにくい」・・・このような症状に悩まされていませんか?
ばね指は、指の腱鞘に炎症が起こることで、指の動きがスムーズでなくなる疾患です。多くの方が経験する症状ですが、適切な対処をしないと症状が長引き、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。
実は、ばね指が治らない背景には、いくつかの見落としがちな原因が隠れています。
本記事では、放射線診断科医としての経験と、下肢静脈瘤や痛みの治療に携わってきた知見を活かし、ばね指が治らない理由と、見直すべき生活習慣について詳しく解説します。
ばね指とは?基本的なメカニズムを理解する

ばね指は、正式には「弾発指」や「屈筋腱腱鞘炎」と呼ばれる疾患です。
指の曲げ伸ばしという動作は、屈筋腱が筋肉の収縮を関節に伝えることで実現されます。この屈筋腱は「腱鞘」と呼ばれるトンネルのような構造の中を通っており、腱鞘が滑車のような役割を果たすことで、力を正しく伝えているのです。
ばね指では、この腱鞘で炎症が起こることで、腱がスムーズに動かなくなります。炎症によって腱鞘が厚くなり、腱の通り道が狭くなることで、腱と腱鞘が擦れて痛みを感じるようになるのです。
どの指に起こりやすいのか
ばね指はどの指にも起こりますが、特に親指、中指、薬指での発症頻度が高くなります。
多くの場合、第二関節で症状が現れます。親指の付け根の関節や第二関節での痛み、指の可動域の制限、指を伸ばすときの引っ掛かり感やバネのように伸びる現象が見られます。
朝だけ症状が出るのはなぜ?

ばね指の症状が朝だけ出るケースは少なくありません。
夜間には指を安静にしているため、炎症で腱がむくむことが関係しているのではないかと言われています。寝ている間、指をほとんど動かさないことから、血液の循環が悪くなり、腱にむくみや炎症が起きやすくなるのです。
朝起きて指を使い始めると、腱が引っかかりやすく、痛みを伴うことが多くなります。日中になると、動かしているうちに血流が改善され、症状が軽減していくことが一般的です。
ばね指が治らない主な理由
適切な治療を受けているにもかかわらず、ばね指の症状が改善しない場合があります。
その背景には、いくつかの見落としがちな原因が隠れています。
指の使いすぎを続けている
ばね指の最も大きな原因は、指の酷使です。
タイピングなど仕事で指を酷使する人、テニス、バドミントン、卓球などのラケット競技をする人、家事をする人や趣味で手指を使う人は、腱や腱鞘に大きな負担がかかり続けます。
治療を受けていても、日常生活で同じ動作を繰り返していると、炎症が治まらず症状が長引いてしまうのです。
安静が不十分である
炎症が起こっている状態では、安静が基本となります。
しかし、仕事や家事で指を使わざるを得ない状況が続くと、十分な安静が保てません。安静が難しい場合には装具療法を導入することもありますが、それでも完全に指の動きを制限することは困難です。
ホルモンバランスの変化が影響している
更年期や妊娠・出産については、女性ホルモンのバランスの変化が影響していると考えられています。
女性ホルモンの分泌により、腱や腱鞘の状態が弱く傷みやすくなる上、血行不良により腱鞘の内部が狭くなり、ばね指発症のリスクが高くなります。妊娠中や産後の女性はホルモンのバランスが乱れやすく、一時的に更年期と似たような状態になるため、症状が長引くことがあるのです。
持病が関係している可能性
糖尿病や関節リウマチ、人工透析などの持病がある場合、血流が悪化しやすく、腱や腱鞘への栄養供給が不足します。
これらの持病がある方は、ばね指のリスクが高くなるだけでなく、治療効果が出にくい傾向があります。持病の管理と並行して、ばね指の治療を進めることが重要です。
無理なストレッチやマッサージをしている
指の動きづらさを感じると、ついストレッチで筋肉や腱を伸ばしたくなります。
しかし、炎症が起こっている状態でのストレッチは、逆効果になることがあります。特に、痛みが強くなるような無理なストレッチは絶対に行わないようにしてください。指で強く押すなどの無理なマッサージも厳禁です。炎症が悪化するおそれがあります。
放置すると起こるリスク
ばね指を放置していると、次第に拘縮が進みます。
曲がったまま伸ばすことが難しい、一定以上曲がらないといったことが起こり、日常生活への影響も大きくなります。長期間放置したことで、隣の指が動きにくくなることもあります。
拘縮が進むとどうなるのか
拘縮とは、関節が固まって動かなくなる状態のことです。
ばね指を放置すると、炎症が続くことで腱や腱鞘が硬くなり、関節の可動域が制限されます。拘縮が進むと、指を曲げたまま伸ばすことができなくなったり、逆に伸ばしたまま曲げることができなくなったりします。
こうなると、日常生活での細かい作業が困難になり、生活の質が大きく低下してしまいます。
早期受診の重要性
炎症がごく軽い場合など限られたケースでは、安静に努めることで自然に治癒することがあります。
しかし通常、安静の必要性に気づくのはある程度炎症・痛みが強くなってからです。症状に気づいた時点で、自然治癒に期待するのではなく、安静を保って早めに医療機関を受診することが推奨されます。
見直すべき生活習慣
ばね指の症状を改善し、再発を防ぐためには、日常生活の見直しが不可欠です。
指を酷使する動作を減らす
スマホやパソコンを長時間使用しない、スポーツで無理をしないなど、腱鞘炎の原因となるような生活習慣を改めることが大切です。
特にスマートフォンを片手で操作する習慣は、親指に大きな負担をかけます。長時間のパソコン作業やゲームのプレイ、ゴルフやテニスなど手首をよく使うスポーツ、ピアノなど指を頻繁に使う楽器の演奏、重いフライパンを頻繁に使う家事なども、ばね指のリスクを高めます。
適切な温熱療法を取り入れる
手指を使いすぎて鈍い痛みが出たり、炎症が起きて熱感がある場合はアイシングが効果的です。
患部を冷やすことで炎症を抑えることができます。反対に、血流の悪さから手指がこわばる時や痛みが長く続く時は、手を温めてください。洗面器などにお湯を溜めてしばらく手指を温めると、血流が改善し、痛みを和らげることができます。
38〜40℃程度のぬるいお湯に手を5〜10分間浸けると、血液の循環が改善され、指の動きが楽になります。
栄養バランスを整える

外食やコンビニ食、加工食品中心の生活は、ビタミンやミネラル不足を招きやすく、腱や神経の健康に悪影響を及ぼします。
特にビタミンB12は、神経の正常な働きや赤血球の生成に不可欠な栄養素です。不足すると神経の伝達がうまくいかず、手先のしびれや感覚の鈍化が生じることがあります。魚介類、レバー、卵、乳製品などを日常的に取り入れると、不足を予防し、ばね指の悪化防止にもつながります。
適度なストレッチを行う
痛みがあると、指を動かさなくなり安静にするため、長い間固定していると、さらに血流が悪くなり関節自体も固くなります。
適度な運動で柔軟性を保つことが大切です。ただし、痛みを感じない範囲で行うことが重要です。無理に引っ張ったり、強い力を加えたりすると悪化する可能性があります。
軽いストレッチを1〜2回行うだけでも十分効果的です。長時間のストレッチは避けましょう。ストレッチを過度に行うと、指を使いすぎるばね指の原因と同じ状態になりかねません。
西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでの治療アプローチ
当院では、ばね指に対して切らない治療を提供しています。
保存療法を中心とした治療
安静の上、消炎鎮痛剤の内服・外用による薬物療法、温熱療法を行います。
安静が難しい場合には、装具療法を導入することもあります。その他、痛みが強い場合など、限定的にステロイド注射を行うこともあります。
ステロイド注射は、超音波で腱とその周辺を観察しながら、薬液(ステロイド)を注入して炎症を改善させる治療です。筋肉の動きが改善され、痛みの軽減が期待できます。
動注治療(動脈注射治療)という選択肢
炎症により異常な新生血管が生じている場合には、動注治療を行います。
動脈に細い針を刺して、そこから新生血管に蓋をして、炎症・痛みの軽減を図ります。この治療法は、従来の保存療法で効果が得られなかった方にも有効な場合があります。
切らないばね指の治療
針で直接肥厚した腱鞘を切開する方法で、傷口も小さく、日帰り治療が可能で30分程度で帰宅できます。手術と異なり、当日から入浴や水仕事ができることがメリットです。
日帰り治療が可能
当院では切らないばね指の治療が対応可能です。
日帰り治療が可能で、30分程度で帰宅できます。入院の必要がないため、仕事や家事への影響を最小限に抑えることができます。
まとめ
ばね指が治らない理由には、指の使いすぎ、安静不足、ホルモンバランスの変化、持病の影響、無理なストレッチやマッサージなど、さまざまな要因があります。
放置すると拘縮が進み、日常生活に大きな支障をきたすため、早めの受診と適切な治療が重要です。
生活習慣の見直しとして、指を酷使する動作を減らす、適切な温熱療法を取り入れる、栄養バランスを整える、適度なストレッチを行うことが効果的です。
当院では、保存療法を中心に、ステロイド注射や動注治療など、患者さまの状態に合わせた治療を提供しています。日帰り治療が可能で、30分程度で帰宅できるため、お気軽にご相談ください。
ばね指の症状でお悩みの方は、我慢せずに早めに専門医へご相談ください。適切な治療で、また自由に動かせる喜びを取り戻しましょう。
詳しい治療内容や診療時間については、西梅田静脈瘤・痛みのクリニック ばね指のページをご覧ください。
【著者】
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義
【略歴】
現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。
下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、
患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。
早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。
【所属学会・資格】
日本医学放射線学会読影専門医、認定医
日本IVR学会専門医
日本脈管学会専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医
マンモグラフィー読影認定医
本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。
インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。
特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。


