コラム

2025.12.19

慢性前立腺炎が再発を繰り返す理由と日常でできる予防法

なぜ慢性前立腺炎は再発を繰り返すのか

「治療を受けて症状が良くなったのに、また痛みが戻ってきた」

こうした経験をお持ちの方は少なくありません。慢性前立腺炎は、適切な治療を受けても再発や再燃を繰り返しやすい疾患です。前立腺は膀胱のすぐ下に位置し、精子への栄養供給やpHの調整、精液の濃縮などを行う重要な器官ですが、この前立腺に炎症が起こり、3カ月以上症状が続く状態が慢性前立腺炎と呼ばれます。

35~50歳くらいの男性に好発するとされていますが、中年以降でも発症することがあります。排尿困難、排尿時痛、陰部の痛み、頻尿などの症状を伴い、日常生活に大きな影響を与えることも珍しくありません。

原因が特定できないケースがほとんど

慢性前立腺炎が再発しやすい最大の理由は、約9割の症例で原因が特定できないことにあります。

細菌感染を原因とするものは約1割にすぎず、それ以外の多くの症例では、はっきりとした原因が特定できません。現在のところ、長時間の坐位や自転車などの圧迫に伴う前立腺への刺激や血流障害、尿の逆流、骨盤周辺の知覚過敏、ホルモンの分泌異常、免疫異常などが発症に影響しているのではないかと考えられています。

原因が明確でないため、根本的な治療が難しく、症状が改善しても再び悪化することが多いのです。前立腺周囲の血流障害や自己免疫反応、前立腺内への尿の逆流、知覚過敏などの感覚神経異常、ホルモンの異常などの関与が指摘されていますが、これらが複雑に絡み合っているため、完治に導く治療法はまだ確立されていません。

生活習慣が症状を悪化させる

ストレスや長時間のデスクワーク、過労、飲酒、喫煙、カレーなど辛い物の摂取などは、慢性前立腺炎の症状を悪化させると言われています。

特にデスクワークや自転車・バイクなどによる長時間の座位は、会陰部に負担がかかり、症状を悪化させるおそれがあります。治療によって一時的に症状が改善しても、こうした生活習慣が続いていると、再び炎症が起こりやすくなります。

また、コーヒーや紅茶などのカフェインを含む食品、唐辛子やワサビなどの膀胱粘膜を刺激する食品の摂り過ぎも、症状の再燃につながります。カフェインには利尿作用があり、頻尿の原因となるため、注意が必要です。

慢性前立腺炎の多様な症状

慢性前立腺炎の症状は、痛みだけではありません。

排尿困難、頻尿、排尿時の痛み、陰部・下腹部の痛みや不快感、下肢の痛みやしびれ、血尿、残尿感、勃起時の痛み、排尿時・射精時の痛みなど、症状は多岐にわたります。坐位で増悪する会陰部や股関節付け根の痛みは、特に特徴的な症状です。

NIH慢性前立腺炎症状スコアで重症度を評価

診断では、NIH慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)というアンケート形式のテストを用います。

痛みや不快感、排尿の状態、QOL(生活の質)についてアンケート形式で調べるテストで、スコアに応じて軽度、中等度、重度と判定でき、痛みの場所やお困りのことを把握することができます。細菌感染が疑われる場合には尿検査を行い、残尿測定では排尿後に膀胱に超音波を当てて残っている尿の量を測定します。

直腸診では、医師が手袋をはめて指を使って直腸から前立腺の状態(特に圧痛があるかどうか)とマッサージ後の症状の変化を調べます。造影剤を使用したMRIでは、点滴を取って造影剤を入れながらMRIを撮像し、慢性前立腺炎の方は炎症を反映して早いタイミングで造影剤が炎症のある場所に集積します。

日常でできる予防法と生活習慣の改善

慢性前立腺炎の再発を防ぐためには、日常生活での予防が非常に重要です。

長時間の座位を避ける工夫

デスクワークをする場合も、30分に一度は立ち上がってストレッチをしたり、近くを歩いたりして、会陰部を圧迫から解放するようにしてください。

自転車やバイクでの長距離移動もできる限り避けましょう。30分に一度は立ったり、座る際には円座のクッションなどを使用して前立腺への刺激を減らすことが推奨されます。クッションはご自身にあった硬さがあるので、複数のクッションを試す必要があります。

ストレスと疲労の管理

ストレス、長時間のデスクワーク、過労、飲酒、喫煙は、慢性前立腺炎を悪化させます。

これらをできる限り取り除き、食事・運動習慣に気をつけた規則正しい生活を送りましょう。適切な水分摂取を心がけ、最適な尿量を確保することも大切です。水分摂取量が不足すると尿が濃縮されて症状悪化につながることがあります。

食生活の見直し

治療中は、コーヒーや紅茶などのカフェインを含む食品、唐辛子やワサビなどの膀胱粘膜を刺激する食品の摂り過ぎはお控えください。

食事では唐辛子や胡椒など刺激の強い香辛料を控えることが推奨されます。カフェインには利尿作用があり、頻尿の原因となるため、特に注意が必要です。

治療法と改善までの期間

治療では、生活習慣の改善と薬物療法が中心となります。

薬物療法の選択肢

排尿状態を改善するα1ブロッカー、鎮痛薬、抗生物質等を使った治療を行います。

神経性疼痛への効果が期待できるプレガバリンや抗うつ薬、その他漢方を使用することもあります。抗生物質は細菌が検出されなくても有効なケースがあり、レボフロキサシン、テトラサイクリンなどが主に使われます。症状に合わせた薬物療法を2~4週間続けることで症状が改善に向かいます。

難治性の慢性前立腺炎にはカテーテル治療

既存の治療では症状の改善に乏しい難治性の慢性前立腺炎の方に対して、カテーテル治療を積極的に行っています。

前立腺炎に伴い炎症血管が生じている場合には、カテーテル治療が有効です。動脈にカテーテルを挿入し、イミペネム・シラスタチンという塞栓物質/抗生剤を炎症を起こした血管に注入することで、炎症と痛みの緩和が期待できます。術前のMRIではっきりと炎症が確認される方に関しては85%の方で症状の改善が期待できますが、反対に炎症がはっきりしない場合は40%程度の方に症状の改善が見られます。

治療時間は20分~60分程度で術後1時間安静し、帰宅可能です。カテーテル治療は即効性のある治療ではなく、3週間~3か月程度で徐々に効果を実感する治療となります。段階的に改善する方がほとんどなので、6週間~3か月後に2回目のカテーテル治療を行うことをお勧めします。

治療期間の目安

慢性前立腺炎の症状が出始めてからすぐに適切な治療を受けられれば、6週間以内に約半数の症例で症状が改善または消失します。

ただし、生活習慣によって悪化することがあり、改善してからも再燃や再発を繰り返すことが多くなっており、上手に付き合っていくことも重要です。治療効果が出るまで時間がかかることがあり、いったん治っても再発しやすいため、違和感があったら早めにご相談ください。

まとめ

慢性前立腺炎は、原因が特定できないことが多く、再発を繰り返しやすい疾患です。

しかし、適切な治療と日常生活での予防を組み合わせることで、症状の改善と再発の予防が可能です。長時間の座位を避け、ストレスや疲労を管理し、食生活に気をつけることが大切です。薬物療法で症状が改善しない場合には、カテーテル治療という選択肢もあります。

症状が続く場合や再発を繰り返す場合には、早めに専門医にご相談ください。適切な診断と治療によって、生活の質を大きく改善することができます。

詳しい診断・治療については、こちらをご覧ください。

西梅田静脈瘤・痛みのクリニック 慢性前立腺炎

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。