下肢静脈瘤とは?基本を理解しましょう
足の血管がボコボコと浮き出てきた・・・そんな症状に気づいたことはありませんか?
下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)は、足の静脈が瘤(こぶ)のように膨らんだ状態を指します。足の静脈には多くの「逆流防止弁」があり、血液が心臓へ戻るのを助けています。この弁が機能不全を起こすと、血液が逆流して静脈に溜まり、静脈が拡張・蛇行して瘤を形成してしまうのです。
日本国内では10人に1人が何らかの症状を経験するといわれており、決して珍しい病気ではありません。命に直接的な危険を及ぼすことはありませんが、放置すると症状が進行し、日常生活の質(QOL)に大きく影響します。
下肢静脈瘤には、いくつかのタイプがあります。
- 伏在静脈瘤:足の内側やふくらはぎの皮膚表面近くにある大きな血管(伏在静脈)の逆流により起こるもの。大きな瘤ができることが多く、進行すると大腿部まで広がります。
- 側枝静脈瘤:伏在静脈から枝分かれした直径3mm程度の血管に逆流が起こるもの。下腿にできやすい症状です。
- 網目状静脈瘤:皮膚下の細い静脈が拡張した状態。下肢静脈瘤の中でもっとも多い症状です。
- クモの巣状静脈瘤:皮膚内の毛細血管が拡張した状態。血管がクモの巣のように広がって見えます。
初期段階では、静脈瘤が見られるだけで特に症状がないことが多いですが、血液の流れが悪いため、足のむくみ・だるさ・重さ・かゆみ・こむら返りなどの症状が出ることもあります。
下肢静脈瘤でやってはいけないこと7選
下肢静脈瘤の悪化を防ぐために、日常生活で避けるべきことがあります。
ここでは、特に重要な7つのポイントをご紹介します。
1. 長時間同じ姿勢を続けること
立ちっぱなしや座りっぱなしなど、長時間同じ姿勢でいることは下肢静脈瘤の大敵です。
同じ姿勢を続けると、下肢の筋肉が動かず、血液が足に滞留しやすくなります。重力の影響で血液が下に溜まり、静脈の壁や逆流防止弁に大きな負担がかかるのです。これにより、静脈瘤が発症したり、既にある静脈瘤が悪化したりします。
立ち仕事の方は、休憩時間にかかとの上下運動をしたり、椅子に浅く座って足首の曲げ伸ばしをしたりすることが効果的です。デスクワークの方も、1時間に1回は立ち上がって歩くなど、意識的に足を動かす習慣をつけましょう。
2. 締めつけの強い衣服や靴を着用すること
ウエストがきついスカートやズボン、締め付けが強いガードルやコルセットは、下肢の血流を阻害します。
血流が悪くなると、静脈瘤の発生や悪化の原因となります。同様に、高いヒールの靴を長時間履き続けることも好ましくありません。ふくらはぎの筋肉の動きを制限し、筋肉ポンプ機能を阻害するためです。
市販の着圧ソックスも、サイズや圧力を間違えると逆効果になることがあります。静脈瘤の予防や軽減のためには、医療用の弾性ストッキングを医療機関で処方してもらい、正しいサイズと着用方法を指導してもらうことが大切です。
3. 運動不足の生活を続けること
運動不足は、ふくらはぎの筋肉ポンプ機能を低下させます。
ふくらはぎの筋肉は「第二の心臓」と呼ばれ、足先から心臓へ血液を送り返す重要な役割を担っています。運動不足でこの筋肉が衰えると、血液の流れが滞り、静脈瘤のリスクが高まります。
ウォーキング、自転車、かかと上げなど、足の筋肉を使う運動が最も予防効果があります。階段を使う、車ではなく自転車で移動するなど、日常生活の中で足を動かす機会を意識的に作りましょう。
4. 肥満を放置すること
肥満は下肢静脈瘤の発症リスクを高める要因の一つです。
体重が増えると、腹圧が高くなり、下肢静脈や弁への負荷が大きくなります。また、血液中の脂質やコレステロール値が高いと、血栓性静脈炎を発症するリスクがあり、静脈瘤に痛みが生じることもあります。
バランスの良い食事と適度な運動で、適正体重を維持することが大切です。
5. 喫煙を続けること
喫煙は血管の健康状態を悪化させます。
タバコに含まれる有害物質は、血管内皮機能を障害し、血管の柔軟性を低下させます。これにより、静脈瘤の発症や悪化のリスクが高まるのです。
禁煙は、下肢静脈瘤だけでなく、全身の血管の健康を守るために非常に重要です。
6. カフェインの過剰摂取
コーヒーなどのカフェインには利尿作用があります。
カフェインを摂り過ぎると、尿量が増加し、体内の水分やミネラルが不足します。その結果、血液が濃くなり、足の血流がさらに滞る可能性があります。また、筋肉に必要な水分やミネラルが不足して、こむら返りを引き起こすこともあります。
健康な成人においては、1日2~3杯のコーヒーまでが健康に悪くないカフェイン摂取量と考えられています。コーヒーを楽しむ際は、適量を守り、水分補給も忘れずに行いましょう。
7. 症状を放置すること
下肢静脈瘤は、一度壊れた逆流防止弁は元に戻らず、血管のコブも自然に治ることはありません。
何もせず放置すると、少しずつ進行していきます。症状が深刻化すると、皮膚炎や静脈炎が起き、痛みを伴ったり、治りにくい潰瘍になったりすることもあります。また、茶褐色や黒褐色に色素沈着をすることもあります。
足のだるさ・むくみ・こむら返りなどの症状が続く場合は、早めに専門医に相談することが大切です。初期症状として血管が膨らみボコボコと表面に現れ始めたら、早めに診察を受け、医師の正しい指導を受けることが予防の第一歩となります。
下肢静脈瘤の原因と発症しやすい人
下肢静脈瘤は、さまざまな要因が重なって発症します。
ここでは、主な原因と発症しやすい人の特徴をご説明します。
遺伝的要因
下肢静脈瘤には遺伝性があります。
親のいずれかが下肢静脈瘤を持つと、発症確率は約40%で、両親が患っている場合は約80%に上ります。血縁者に下肢静脈瘤を患った人がいる場合は、先天的に発症しやすい体質を持っている可能性があるため、足の状態を定期的にチェックし、むくみやだるさなどの症状が強い場合は早めに受診することが大切です。
妊娠・出産経験のある女性
女性ホルモンは血管を柔らかくする作用があるため、血管が拡張しやすく、弁の閉まり具合が悪くなることがあります。
特に妊娠中は、女性ホルモンが多くなることに加え、お腹の赤ちゃんと羊水による静脈の圧迫により、足の静脈に圧力がかかるため、下肢静脈瘤が発症しやすくなります。通常、多くの場合、症状は出産後に自然に改善しますが、出産後も血管の目立ちやボコボコした状態、だるさやむくみが残る場合があります。また、出産回数が増えるほど、出産後に症状が残りやすくなります。
加齢
年齢が上がるにつれ、下肢静脈瘤の発生頻度が増加します。
年齢とともに逆流防止弁の働きは衰えますが、足への負担は積み重なり、負荷が増えていきます。特に60~70代の発症率は高くなります。ただし、若い方に下肢静脈瘤が少ないというわけではなく、特に30歳以上の方には多く見られます。
立ち仕事・デスクワーク
立ちっぱなしの時間が長いと、下肢静脈瘤の発生が増加することが分かっています。
立位時には、血液は重力に逆らって心臓に向かって上昇する必要があり、大変な労力を必要とします。長時間立ち続けることで、血液の交通渋滞が起こり、足の静脈の逆流防止弁に過度な負担がかかり、最終的には弁が壊れて正常に閉じなくなります。
ただし、同じ立ち仕事でも途中で歩いたり体を動かしたりする場合、筋肉のポンプ作用が機能して、下肢静脈瘤の発生リスクは低くなります。典型的な立ち仕事の例には、美容師、理容師、教師、調理師、板前、販売員、工場作業員などがあります。
座りっぱなしのデスクワークも、血液の滞留が起こりやすくなります。
下肢静脈瘤の予防方法
下肢静脈瘤の進行を遅くすることはある程度可能です。
ここでは、日常生活でできる具体的な予防方法をご紹介します。
適度な運動で足の筋肉を鍛える
静脈瘤を進行させないためには、血流の改善が大切です。
ウォーキング、自転車、かかと上げなど、足の筋肉を使う運動が最も予防効果があります。立ち仕事の合間に、かかとの上下運動をしたり、椅子に浅く座って前に脚を投げ出し、足首の曲げ伸ばしをしたりしましょう。なるべく階段を使い、天気のいい日は車ではなく自転車で移動してみるなど、足を動かす機会を作ると良いです。
特に症状の出やすい午後や夕方に行うと効果的です。
足のマッサージ
入浴時や就寝前、座った状態で、両手のひらで膝上から太ももの付け根に向かってさするように動かします。
次にふくらはぎも同様に、下から上へと片足ずつ2~3分間さすります。このマッサージで足表面の血液のうっ滞だけでなく、リンパ液の流れも良くなります。1日数回行うことで、症状の改善や予防につながります。
医療用弾性ストッキングの着用
下肢静脈瘤専用の弾性ストッキングは、自分の足に合ったサイズのものを正しく履けば、非常に高い予防効果があります。
足首に一番強い圧力がかかり、上に向かうほど弱くなる構造になっており、医療機関で測定し着用することをおすすめします。朝起きたら履き、寝る前に脱ぐのが基本です。きちんとした圧迫力が必要で、しわを伸ばしながら履くことが大切です。
市販の着圧ストッキングとは異なり、医療用弾性ストッキングは圧迫圧が適切で、足首が一番圧が高い段階圧設計になっており、半年程使用可能で長持ちします。間違ったものを選ぶと、むくみがひどくなったり、締めつけが強すぎて血行障害が起こったり、心不全が悪化したりすることもあるため、必ず医療機関で処方してもらいましょう。
足を高くして寝る
就寝時に足を少し高くすることで、重力の影響を軽減し、血液の心臓への戻りを助けます。
クッションや枕を使って、足を心臓より少し高い位置に保つと良いでしょう。
バランスの良い食事
肥満は下肢静脈瘤のリスクを高めるため、適正体重を維持することが大切です。
バランスの良い食事を心がけ、塩分の摂り過ぎに注意しましょう。塩分の摂り過ぎは、むくみの原因にもなります。
下肢静脈瘤の治療方法
下肢静脈瘤の治療は、患者さまの症状によって適切な方法を用います。
当院では、身体への負担を最小限にする日帰り・低侵襲治療を中心に行っています。
圧迫療法(弾性ストッキング)
軽度~中等度の症状に用い、治療後の再発予防にも使用します。
弾性ストッキングを履くことで、静脈拡張や下肢静脈の血液停滞を抑えます。履くだけで足のむくみや、足が重い、だるい、痛いといった症状は軽減することができます。手軽な治療ですが、静脈瘤を消失することはできないため、症状の重い方には手術療法と併用して行います。また、静脈瘤の悪化予防・再発予防には有効な治療といえます。
高周波/レーザー治療(血管内焼灼術)
皮膚を大きく切らず、血管の内側から静脈を閉鎖します。日帰りで可能です。
静脈の内側から熱を加えて閉塞させる方法で、切開がほとんどなく、日帰り・短時間で受けられます。痛みが少なく、局所麻酔で行えるため、体の負担が少ない治療です。手術時間は片足約15~20分で、すぐに歩けます。
レーザー焼灼術(EVLA)は、ファイバー先端からレーザーを照射し血管壁を焼灼閉鎖します。高周波(ラジオ波)焼灼術(RFA)は、ラジオ波が血管壁の蛋白を直接熱凝固変性させることにより血管壁を閉鎖します。焼灼方法が若干異なりますが、手術時間、合併症、再発に大差はありません。
硬化療法
薬剤を注入し、クモの巣状・網目状静脈瘤にも対応します。
ポリドカスクレロールという注射剤を血管に注入し、血管に炎症を起こさせることにより血管を閉塞させる治療法です。簡便な治療法ですが、再発が多い点と治療後に血管に沿って色素沈着が残る場合があることがデメリットです。
ストリッピング手術(伏在静脈抜去切除術)
下肢静脈瘤のもっとも標準的な手術です。
局所麻酔下に皮膚を小さく切開し、拡張したり瘤化してしまった静脈を抜き取る手術です。悪化した静脈を切除するため重症の方にも有効で、再発率は低いといわれています。エコー検査やCT検査を行うことで悪い部分を正確に探し出して手術を行います。原則として日帰り手術を行っていますが、1泊して手術を行うこともできます。
高位結紮術(こういけっさつじゅつ)
高位結紮術はストリッピング手術と違い、悪い静脈を抜き取るのではなく、逆流している静脈を逆流しないように血管を縛ります。
局所麻酔でできるため日帰りで手術を行うことができます。小伏在静脈や側枝静脈(交通枝)に症状が見られる場合に推奨されます。
グルー治療(血管内塞栓術)
グルー治療は、医療用の接着剤を使って、下肢静脈瘤の原因となっている血管を内側から閉じる治療法です。
細いカテーテルを使って血管の中に接着剤を注入し、血液の逆流を止めます。熱を使わないため、体への負担が少なく、神経への影響が起こりにくいのが特徴です。局所麻酔で行うため、治療中の痛みはほとんどありません。
治療後はすぐに歩くことができ、弾性ストッキングを着用する必要がない点も大きなメリットです。レーザー治療や高周波治療と同程度の効果が期待できますが、血管の曲がりが強い場合やアレルギー体質の方には適さないことがあります。
こんな症状がある方はご相談ください
以下のような症状がある方は、早めに専門医にご相談ください。
- 足のだるさ・重さ
- 夕方に悪化するむくみ
- 夜中のこむら返り
- 血管がボコボコ浮き出る
- クモの巣状の細かい血管が気になる
- 足がかゆい・色が黒ずむ
これらは下肢静脈瘤の典型的なサインです。
早期の受診が治療効果を高め、生活の質の改善につながります。痛みなど、それまでなかった症状が出現する場合には速やかに受診することが必要です。足の血管が浮き出て痛みが出現する状態の場合、下肢静脈瘤が進行して悪化している可能性があります。
また、血液が足にたまった状態となることで、血の塊(血栓)ができやすくなり、それによって皮膚の炎症が生じ、痛みやかゆみなどが生じることもあります。このような痛みが出現している状態では、自分で治すことは基本的には難しく、なかには感染を起こしている場合や、えぐれたような深い傷ができていることもあり、治療が遅れてしまうと重症になってしまうこともあるため、早急に受診し、適切な治療を受けることが大切です。
まとめ|下肢静脈瘤は早期発見・早期治療が大切です
下肢静脈瘤は、足の静脈の逆流防止弁が壊れることで発症し、放置すると少しずつ進行していく病気です。
やってはいけないことを理解し、日常生活で予防を心がけることが大切です。長時間同じ姿勢を続けない、締めつけの強い衣服や靴を避ける、適度な運動を行う、肥満を防ぐ、禁煙する、カフェインの摂り過ぎに注意する、そして症状を放置しないことが重要なポイントです。
下肢静脈瘤は命に関わる病気ではありませんが、症状が進行すると、むくみ・だるさ・こむら返り・皮膚炎などが悪化し、日常生活の質(QOL)に大きく影響します。早期に診断を受け、医師の正しい指導を受けることが予防の第一歩となります。
当院では、超音波(エコー)による精密診断を行い、「どの血管に逆流があるか」「どの程度進行しているか」を正確に評価します。放射線科・循環器内科の知見を活かした専門治療で、患者さまの年齢・仕事・生活環境も考慮し、過不足のない最適な治療をご提案いたします。
足のむくみ・だるさ・血管の浮きなど、一見「よくある症状」と思われがちなトラブルの背景には、静脈の逆流や血流低下が隠れていることがあります。健康な足で過ごせる日常を取り戻すために、ぜひ一度ご相談ください。
西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、下肢静脈瘤をはじめとした足の血流・血管のトラブルを専門的に診療しています。患者さまの負担が少ない安全な治療を提供し、再発しにくい足の環境づくりをサポートいたします。
【著者】
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義
【略歴】
現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。
下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、
患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。
早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。
【所属学会・資格】
日本医学放射線学会読影専門医、認定医
日本IVR学会専門医
日本脈管学会専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医
マンモグラフィー読影認定医
本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。
インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。
特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。

