ばね指とは?指の動きに違和感を感じたら要注意
指を曲げ伸ばしする際に「カクッ」と引っかかる感覚はありませんか?
朝起きたとき、指がこわばって動かしにくいと感じることはないでしょうか。それは「ばね指(弾発指)」のサインかもしれません。ばね指は、指の腱と腱鞘という組織に炎症が起こることで発症する疾患です。腱鞘炎の一種であり、放置すると日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。
ばね指は、指を曲げる屈筋腱が通る腱鞘というトンネル状の組織で炎症が起こり、腱がスムーズに動かなくなる状態を指します。腱鞘が腱の浮き上がりを防ぎ、滑車のような役割で力を正しく伝えていますが、この部分で炎症が起こることで指の動きが制限され、痛みが生じるのです。
どの指にも起こる可能性がありますが、特に親指、中指、薬指での発症頻度が高く、多くは第二関節で発症します。タイピングなど仕事で指を酷使する方、テニスやバドミントンなどのラケット競技をする方、家事で手指を使う方、更年期の方、妊娠・出産後の方に多く見られます。
ばね指でやってはいけないこと7選
ばね指を悪化させないためには、避けるべき行動があります。
良かれと思って行った対処が、実は症状を長引かせたり、悪化させたりする原因になることも少なくありません。ここでは、ばね指のときに絶対に避けるべき7つのNG行動を詳しく解説します。
1. 無理に指を伸ばす・動かす
指が引っかかる状態で無理に伸ばそうとするのは厳禁です。炎症が起こっている腱や腱鞘に対して、さらに物理的な負荷をかけることになり、組織の損傷を広げてしまう可能性があります。
反対の手で力任せに曲がった指を伸ばしたり、痛みを我慢して動かし続けたりすると、炎症を起こした組織がさらに傷つき、症状の悪化や痛みの増強につながります。最悪の場合、関節が固まる「拘縮」へと進行するリスクもあるのです。
2. 自己流でマッサージする
痛みやこわばりがあると、つい患部を強く揉みほぐしたくなります。しかし、専門的な指導のない自己流のマッサージは逆効果になることが多いのです。
指で強く押すなどの無理なマッサージは、炎症部位への過度な刺激となり、炎症が悪化するおそれがあります。患部は炎症によって腫れていたり、熱っぽくなっていたりするため、医師の指示がない限り、患部を安静に保つことを優先しましょう。
3. 無理なストレッチを行う
指の動きづらさを感じると、ストレッチで筋肉や腱を伸ばしたくなるかもしれません。
しかし、炎症が起こっている状態でのストレッチは、逆効果になることがあります。特に、痛みが強くなるような無理なストレッチは絶対に行わないでください。痛みがあるうちは、安静が基本となります。ストレッチと同様に、炎症が悪化するおそれがあるため、医師の指示がない限り控えましょう。
4. 指を酷使する作業を続ける
ばね指は指の使いすぎによって発症することが多いため、症状が出ているときに指を酷使する作業を続けるのはNGです。スマートフォンの長時間操作(特に親指)、キーボードのタイピングやマウス操作のしすぎ、ゴルフやテニスなど強く握るスポーツ、料理で包丁を長時間使用する、ペンを強く握って長時間書く作業などは避けるべきです。
仕事や必要な家事の場合は避けるのが難しいこともありますが、早めに専門機関に相談し、適切な治療を受けることが重要です。
5. 冷やすタイミング・温めるタイミングを間違える
ばね指の症状に対して、冷やすべきか温めるべきかを間違えると、症状が悪化することがあります。炎症が強いとき(初期の段階でズキズキ、ジンジン痛い場合)は冷やした方が良いですが、慢性化してきている場合(血流量を高めて回復を促す段階)は温めた方が効果的です。
状態を見ながら、適切な方法でケアすることが大切です。
6. 症状を放置する
「そのうち治るだろう」と我慢しているうちに悪化することもあります。
ばね指は放置していても自然に治ることは少なく、むしろ悪化する可能性が高いのです。炎症がごく軽い場合など限られたケースでは、安静に努めることで自然に治癒することがありますが、通常、安静の必要性に気づくのはある程度炎症・痛みが強くなってからです。
症状に気づいた時点で、自然治癒に期待するのではなく、安静を保って早めに医療機関を受診することが推奨されます。放置すると、次第に拘縮が進み、曲がったまま伸ばすことが難しい、一定以上曲がらないといったことが起こり、日常生活への影響も大きくなります。長期間放置したことで、隣の指が動きにくくなることもあるのです。
7. 自己判断で市販薬を長期使用する
痛みを和らげるために市販の消炎鎮痛剤を使用することは、一時的な対処としては有効です。しかし、自己判断で長期間使用し続けることは避けるべきです。
根本的な治療にはならず、症状を隠してしまうことで、適切な治療のタイミングを逃す可能性があります。市販薬を使用する場合でも、症状が改善しない場合や長期化する場合は、必ず医療機関を受診しましょう。
ばね指の症状セルフチェックリスト
ご自身の症状がばね指のサインに当てはまるか確認してみましょう。
ばね指は、初めは軽い痛みや違和感から始まりますが、進行すると指の曲げ伸ばしに特徴的な症状が現れます。以下のチェックリストで、1つでも当てはまるものがあれば、ばね指の可能性があります。
- 指の曲げ伸ばしで引っかかり感がある … 指を動かすときにスムーズにいかず、途中で引っかかる感覚がある
- 指がカクンと弾ける「ばね現象」がある … 曲がった指を伸ばそうとすると、ばねのように跳ねて戻る
- 手のひら側、指付け根の痛みや腫れがある … 親指の付け根の関節や第二関節での痛み、圧痛がある
- 朝起きたときに指がこわばる … 朝だけ症状が出るケースも少なくない
- 指が動かなくなる「ロック現象」が見られる … 指が曲がったまま伸びない、または伸ばしたまま曲がらない
上記の項目に1つでも当てはまるものがあれば、ばね指の可能性があるため、医療機関を受診しましょう。治療せずに放置すると、症状が悪化して指関節が固まってしまう「関節拘縮」になる可能性があります。
ばね指の適切な対処法と治療
ばね指のサインに気づいたら、症状を悪化させないための適切な対処が必要です。
自宅でできるセルフケア
症状が軽度の場合、自宅でできるセルフケアとして、まず患部を安静に保つことが最も重要です。テーピングやサポーターで指を固定し、負担を軽減することも有効です。
炎症が強い初期段階では、患部を冷やすことで痛みや腫れを抑えることができます。一方、慢性化してきた段階では、温めることで血流を改善し、回復を促すことができます。ただし、自己判断でのマッサージやストレッチは避け、医師の指導のもとで行うようにしましょう。
医療機関で受けられる治療
当院では、痛みを軽減しながら指の動きを取り戻す治療を行っています。状態に合わせて、保存療法(手術をしない治療)を中心に、症状が強い場合は注射治療などを組み合わせます。
保存療法では、安静の上、消炎鎮痛剤の内服・外用による薬物療法、温熱療法を行います。安静が難しい場合には、装具療法を導入することもあります。その他、痛みが強い場合など、限定的にステロイド注射を行うこともあります。
ステロイド注射は、超音波で腱とその周辺を観察しながら、薬液(ステロイド)を注入して炎症を改善させる治療です。筋肉の動きが改善され、痛みの軽減が期待できます。
動注治療(動脈注射治療)では、炎症により異常な新生血管が生じている場合に、動脈に細い針を刺してそこから新生血管に蓋をして、炎症・痛みの軽減を図ります。当院では切らないばね指の治療が対応可能で、日帰り治療が可能、30分程度で帰宅できます。
多くの方は、これらの治療で症状が軽くなり、日常生活に支障がなくなります。痛みが強く、指が動かせなくなっている場合は、腱鞘の一部を切開する手術(腱鞘切開術)が必要になることもあります。当院では、必要に応じて専門の整形外科・手外科医と連携し、安心して手術やその後のリハビリが受けられる体制を整えています。
切らないばね指の治療では、針で直接肥厚した腱鞘を切開する方法で、傷口も小さく、日帰り治療が可能で30分程度で帰宅できます。手術と異なり、当日から入浴や水仕事ができることがメリットです。
手術療法では、ストレッチで十分な回復が得られないもの、注射をしても痛みが十分に取れない場合や、痛みが取れてもまたすぐ症状がぶり返す場合、あるいは痛みが取れても引っかかりが残って不便な場合は、手術による治療に進みます。
局所麻酔を行い、指の付け根の手のひら側を1㎝程度切開し、腱の通り道にあるトンネル(靭帯性腱鞘)を切り開きます。30分程度の手術で、入院の必要はありません。手術の傷は10日程度で治りますが、2週間程度入浴や水仕事ができません。手術は症状をとるために確実な方法ですが、感染の危険性や神経障害の危険性など、合併症の可能性が無いわけではありません。
ばね指になりやすい人の特徴
ばね指は誰にでも起こりうる疾患ですが、特定の条件に該当する方はリスクが高くなります。
指を曲げる屈筋腱は、親指に1本、その他の指には2本存在します。それぞれの腱が通る腱鞘で炎症が起こることで、ばね指を発症します。特に以下に該当する人は、ばね指になりやすいと言えます。
タイピングなど、仕事で指を酷使する人 … デスクワークでキーボードやマウスを頻繁に操作する人- テニス、バドミントン、卓球などのラケット競技をする人 … 手を酷使するスポーツをする人
- 家事をする人、趣味で手指を使う人 … 料理や掃除など、日常的に手指を使う人
- 更年期の人、妊娠・出産後の人 … 女性ホルモンのバランスの変化が影響していると考えられる
更年期や妊娠・出産については、女性ホルモンのバランスの変化が影響しているものと考えられています。女性ホルモンの分泌が低下した場合、腱や腱鞘が炎症を起こしやすくなり、ばね指を発症する可能性が高まります。
まとめ|早期発見・早期治療が重要です
ばね指は、放置すると痛みが強くなり、指が動かなくなることもある疾患です。
手や指は日常生活に欠かせない大切な部位。痛みや不便を我慢せず、早い段階で正しい治療を受けることで、「また自由に動かせる喜び」を取り戻せます。
無理なストレッチや無理なマッサージは炎症を悪化させるため厳禁です。症状に気づいた時点で安静を保って早めに医療機関を受診することが推奨されます。「いつか治るだろう」と我慢しているうちに悪化することもあるため、指の付け根が痛くて物を握るのがつらい、朝、指が固まって動かない、指を伸ばすと「カクン」と引っかかる、注射や湿布をしても痛みが続く、仕事や家事に支障が出ているといった症状でお悩みの方は、ぜひご相談ください。
当院では、患者さんの症状に合わせた最適な治療法をご提案し、一日も早い回復をサポートいたします。気になる症状があれば、お気軽にお問い合わせください。
【著者】
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義
【略歴】
現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。
下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、
患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。
早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。
【所属学会・資格】
日本医学放射線学会読影専門医、認定医
日本IVR学会専門医
日本脈管学会専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医
マンモグラフィー読影認定医
本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。
インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。
特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。

