コラム

2026.02.13

変形性膝関節症なのに治らない膝の痛み…実は下肢静脈瘤が原因?血流改善で楽になるケースを専門医が解説

「変形性膝関節症と診断されて治療を続けているのに、なかなか痛みが良くならない・・・」

そんな悩みを抱えている方は、実は少なくありません。

膝の痛みの原因として最も多い変形性膝関節症ですが、実は別の病気が隠れていて、それが痛みを長引かせている可能性があります。

その隠れた原因の一つが「下肢静脈瘤」です。

近年の研究により、変形性膝関節症と下肢静脈瘤は併発しやすく、静脈瘤を治療することで膝の痛みが改善するケースが報告されています。この記事では、下肢静脈瘤が膝の痛みにどう関係しているのか、そして血流改善によって症状が軽減するメカニズムについて、専門医の視点から詳しく解説します。

変形性膝関節症とは?基本を理解する

変形性膝関節症は、加齢などを原因として膝関節の軟骨が擦り減ることで炎症が起こり、痛みが生じる疾患です。

中年以降の方に好発し、特に女性の発症率は男性の約4倍にのぼります。

症状は進行度により3段階に分かれます。

初期症状の特徴

初期症状では、膝を動かし始めたときの痛み、朝起きて1~2歩目の膝の痛みがあります。

歩いているうちに痛みが和らぐのが特徴です。

「動き始めだけ痛い」という状態ですね。

中期症状の特徴

中期症状では、膝を動かしているあいだの痛み、特に膝の内側の痛みが見られます。

両足の膝の間隔が広くなるO脚が目立つようになり、動作開始時だけでなく継続中も痛みが続きます。

この頃になると、歩く時だけでなく座る・立ち上がる・しゃがむといった動作でも痛みが出るようになります。

末期症状の特徴

末期症状では、安静時を含めて常に膝が痛み、動作時は特に痛みが強くなります。

O脚が悪化し、膝を曲げ伸ばしする動作そのものに痛みが出るようになります。

座ったまま足を伸ばすなどの動作も辛くなり、日常生活に大きな支障をきたします。

下肢静脈瘤とは?膝の痛みとの意外な関係

下肢静脈瘤は、足の血管がコブのようにふくらんだ状態になる病気です。

足の血液が心臓に戻る際に逆流し、静脈が膨らんでしまうのです。

一見すると膝の痛みとは無関係に思えるかもしれませんが、実は密接に関係しています。

下肢静脈瘤の主な症状

下肢静脈瘤の症状はほとんどがふくらはぎにおこります。

足に血液がたまることによっておこるので、午後から夕方に症状が強くなるのが特徴です。

具体的には、足の血管が浮き出て見える、ふくらはぎがだるい・重苦感がある、足のむくみ、足のこむら返り(つり)、足がほてる・熱く感じる、足のむずむず感・不快感、足のかゆみ・湿疹、足の色素沈着、足の潰瘍(かいよう)などがあります。

変形性膝関節症との併発率の高さ

近年の研究により、変形性膝関節症と下肢静脈瘤は併発しやすいことがわかってきました。

変形性膝関節症患者が下肢静脈瘤の治療として弾性ストッキングを着用すると、膝痛が改善するという研究結果も報告されています。

実際、静脈瘤を治療した患者の約70%が膝の症状も改善したという報告もあります。

なぜ下肢静脈瘤が膝の痛みを引き起こすのか?

下肢静脈瘤があると、血流が悪化し、膝関節にも悪影響を及ぼします。

その主な理由は3つあります。

血行不良による膝関節の酸素不足

静脈瘤によって血流が悪化すると、膝の関節や周辺の筋肉に十分な酸素や栄養が行き届かなくなります。

その結果、痛みや炎症が悪化する可能性があります。

組織の修復力も低下するため、一度痛めた部分がなかなか治らないという悪循環に陥ります。

むくみが膝の動きを制限する

静脈瘤があると、足のむくみが発生しやすくなります。

むくみによって膝の可動域が制限されることがあり、膝関節が硬くなり、動きが悪くなります。

これが膝への負担をさらに増やし、痛みを悪化させる要因となります。

歩き方の悪化で膝の負担が増加

静脈瘤によるふくらはぎの違和感やむくみのせいで、歩行バランスが崩れることがあります。

結果的に膝に余計な負担がかかり、変形性膝関節症が悪化する可能性があります。

正常な歩行パターンが崩れることで、膝関節への負荷が不均等になり、特定の部位に過度なストレスがかかるのです。

血流改善で膝の痛みが軽減するメカニズム

下肢静脈瘤の治療により血流が改善されると、膝の痛みが軽減するケースが多く報告されています。

そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。

組織への酸素・栄養供給の回復

血流が改善されることで、膝関節や周辺組織に十分な酸素と栄養が供給されるようになります。

これにより、損傷した組織の修復が促進され、炎症が抑えられます。

特に軟骨周辺の組織が健康な状態を保つことができるようになり、痛みの軽減につながります。

むくみの解消による可動域の改善

静脈瘤の治療によってむくみが解消されると、膝の可動域が改善されます。

膝の動きがスムーズになることで、関節への負担が軽減され、痛みが和らぎます。

また、可動域が広がることで日常生活の動作も楽になり、生活の質が向上します。

歩行バランスの正常化

血流が改善され、ふくらはぎの違和感やむくみが解消されると、歩行バランスが正常化します。

正しい歩き方ができるようになることで、膝への負担が均等に分散され、特定の部位への過度なストレスが軽減されます。

これにより、変形性膝関節症の進行を遅らせる効果も期待できます。

当院での治療アプローチ:保存療法から先進治療まで

当院では、変形性膝関節症と下肢静脈瘤の両方を診察し、患者様の状態に合わせた最適な治療を提供しています。

まずは保険診療での治療から

まず問診・触診、レントゲンや超音波などで診察を行います。

ヒアルロン酸注射やステロイド注射、運動療法など保険診療で可能な限り治療を行います。

これらの治療で十分な効果が得られる方も多くいらっしゃいます。

保険診療で改善しない場合の選択肢

保険診療で改善しない方、さらなる症状の改善を希望する方へは、手術をしない方法として動注治療を提供しています。

動注治療とは、動脈に薬剤を直接注入する治療です。

変形性膝関節症などの慢性炎症に伴って生じる異常な血管を塞栓し、炎症・痛みを和らげます。

メディカルダイエットによる物理的負荷の軽減も効果的です。体重減少により関節や心肺への負担が軽減し、腰痛・膝痛の改善や運動時の息切れが緩和され、日常生活の動作が楽になります。

エクソソーム注射という新しい選択肢

エクソソーム注射は、細胞から分泌される極めて小さな物質を関節内に注入し、炎症の抑制や組織の修復をサポートする新しい治療法です。

エクソソームは細胞間の情報伝達を担っており、関節内に投与することで損傷した組織の再生を助け、痛みや腫れの軽減、関節の動きの改善が期待できます。

ヒアルロン酸注射や鎮痛薬などで十分な効果が得られなかった方にとって、新たな選択肢となり得る治療法です。

施術は日帰りで可能であり、身体への負担が少ない点も特徴とされています。

日常生活で気をつけるべきこと

治療と並行して、日常生活での注意点も重要です。

避けるべき動作・習慣

痛みに負けまいと無理にスポーツを継続することは絶対におやめください。

ただし、痛みのない範囲でのウォーキングは筋力維持・強化に有効です。

また、できるだけ避けるべき動作・習慣としては、お尻を床につけて座る、和式トイレを使う、布団で寝る(横になる、起き上がる、布団を上げ下げする時に膝に負担がかかります)、喫煙(軟骨を構成するコラーゲンの生成に欠かせないビタミンCを減少させます)、飲み過ぎ(軟骨の弾力性を低下させたり、炎症を悪化させたりします)などがあります。

血流改善のためのセルフケア

下肢静脈瘤の進行を防ぐためには、血流の改善が大切です。

ウォーキング、自転車、かかと上げなど、足の筋肉を使う運動が最も予防効果があります。

また、下肢静脈瘤専用の弾性ストッキングの使用は、進行を予防できます。

入浴時や就寝前に、両手のひらで膝上から太ももの付け根に向かってさするように動かすマッサージも効果的です。

次にふくらはぎも同様に、下から上へと片足ずつ2~3分間さすります。

このマッサージで足表面の血液のうっ滞だけでなく、リンパ液の流れも良くなります。

まとめ:膝の痛みが治らない時は下肢静脈瘤も疑ってみる

変形性膝関節症と診断されて治療を続けているのに痛みが改善しない場合、下肢静脈瘤が隠れた原因である可能性があります。

下肢静脈瘤による血流障害が膝関節に悪影響を及ぼし、痛みや機能障害を引き起こしているケースは決して少なくありません。

血流を改善することで、膝の痛みが軽減する可能性があります。

変形性膝関節症は、膝の軟骨が擦り減る疾患のため、自然に治ることはありません。

自己流でのストレッチ・トレーニングは炎症を強めたり、軟骨のすり減りを加速させる原因になることがあるため、必ず医療機関で治療を受ける必要があります。

当院では、変形性膝関節症と下肢静脈瘤の両方の診察が可能です。

膝の痛みで内服薬やヒアルロン酸注入などの治療をしている方で効果がない方は、静脈瘤が原因の可能性があります。

是非一度ご相談ください。

西梅田静脈瘤・痛みのクリニックでは、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案いたします。

お気軽にお問い合わせください。

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。