膝の痛みが治らない・・・その原因は血管にあるかもしれません
整形外科で「変形性膝関節症」と診断され、湿布を貼ったり、リハビリに通ったりしても、なかなか膝の痛みが改善しない。そんな経験はありませんか?
実は、従来の整形外科的治療で改善しない膝痛の背景には、**下肢静脈瘤**などの血管トラブルが隠れている可能性があります。
近年の研究では、変形性膝関節症患者の約60%に下肢静脈瘤が合併しており、静脈瘤の治療によって膝の痛みが軽減するケースが報告されています。膝の軟骨がすり減っているから痛いのだと思い込んでいた方にとって、血管が関係しているという事実は意外かもしれません。
本記事では、放射線診断科・血管治療の専門医として多くの患者様を診てきた経験から、血管性の膝痛について詳しく解説します。
整形外科では見逃されがちな「血管性の膝痛」とは
膝の痛みといえば、多くの方が整形外科を受診されます。レントゲンやMRIで軟骨のすり減りや半月板の損傷を確認し、「変形性膝関節症」と診断されるのが一般的な流れです。
しかし、整形外科の診察では血管の状態まで詳しく調べることは少なく、静脈瘤などの血管トラブルが見逃されてしまうことがあります。
血管トラブルが膝痛を引き起こすメカニズム
下肢の静脈には、血液が心臓に戻るのを助ける「静脈弁」という逆流防止弁があります。この弁が加齢や疲労によって機能障害を起こすと、血液が逆流して血管内に溜まり、静脈瘤となります。
血液が下肢に停滞すると、膝周辺の組織に慢性的な炎症が起こります。この炎症が膝の痛みやだるさ、重さといった症状を引き起こすのです。
静脈瘤と変形性膝関節症の深い関係
変形性膝関節症は、加齢により膝関節の軟骨が擦り減ることで炎症が起こり、痛みが生じる疾患です。中年以降の方に好発し、女性の発症率は男性の約4倍にのぼります。
興味深いことに、変形性膝関節症の患者様の多くに下肢静脈瘤が合併していることが分かっています。静脈瘤による血液の停滞が膝関節周囲の炎症を悪化させ、痛みを増強させている可能性が指摘されています。
実際に、静脈瘤の治療を行うことで、膝の痛みが軽減したという報告が増えてきています。
こんな症状があれば血管性の膝痛かもしれません
以下のような症状に心当たりがある方は、血管トラブルが膝痛の原因となっている可能性があります。
下肢静脈瘤の主な症状

- 足の血管がボコボコと浮き上がっている
- 足の血管が青く目立つ
- 膝から下がだるい、重い
- 夕方になると足がむくむ
- 夜中にこむら返り(足がつる)が頻繁に起こる
- 足が疲れやすく、痛みがある
- 足の皮膚に黒ずみや色素沈着がある
これらの症状は、長時間立っていると悪化し、足を上げて休むと軽くなる傾向があります。
変形性膝関節症との見分け方
変形性膝関節症の症状は進行度により3段階に分かれます。
**初期症状**では、膝を動かし始めたときの痛み、朝起きて1~2歩目の膝の痛みがあり、歩いているうちに痛みが和らぐのが特徴です。
**中期症状**では、膝を動かしているあいだの痛み、特に膝の内側の痛み、両足の膝の間隔が広くなるO脚が見られ、動作開始時だけでなく継続中も痛みが続きます。
**末期症状**では、安静時を含めて常に膝が痛み、動作時は特に痛みが強く、O脚が悪化します。
一方、血管性の膝痛の場合は、膝の動きそのものよりも、長時間の立ち仕事や同じ姿勢でいることで症状が悪化する傾向があります。また、足全体のだるさやむくみを伴うことが多いのも特徴です。
なぜ静脈瘤の治療で膝痛が改善するのか
静脈瘤の治療によって膝痛が改善するメカニズムには、いくつかの要因が考えられます。
血液循環の改善による炎症の軽減
静脈瘤があると、血液が下肢に停滞し、組織への酸素や栄養の供給が不足します。この状態が続くと、膝周辺の組織に慢性的な炎症が起こります。
静脈瘤を治療することで血液循環が改善されると、炎症を引き起こす物質が適切に排出され、新鮮な酸素や栄養が組織に届くようになります。その結果、炎症が軽減し、膝の痛みが和らぐと考えられます。
異常な血管の塞栓による痛みの軽減
変形性膝関節症などの慢性炎症に伴って、膝周辺に異常な血管(モヤモヤ血管)が生じることがあります。これらの異常な血管は、痛みの原因となる炎症物質を運び、痛みを増強させます。
**動注治療**では、動脈に薬剤を直接注入することで、これらの異常な血管を塞栓し、炎症と痛みを和らげることができます。この治療は手術をしない方法として注目されており、日帰りで施術が可能です。
静脈圧の低下による組織への負担軽減
静脈瘤があると、静脈内の圧力(静脈圧)が高くなり、周囲の組織に浮腫や炎症が生じやすくなります。静脈瘤を治療することで静脈圧が正常化し、組織への負担が軽減されます。
実際の研究では、弾性ストッキングを着用して静脈瘤を治療した変形性膝関節症患者の約60%で膝の痛みが軽減し、その半数ほどで足の動きが良くなったり、お薬の使用が減ったという効果が確認されています。
血管性の膝痛に対する治療法
血管トラブルが原因の膝痛に対しては、いくつかの治療法があります。症状の程度や患者様の状態に応じて、最適な治療法を選択します。
保存療法:弾性ストッキングの着用

最も手軽で効果的な治療法が、弾性ストッキングの着用です。弾性ストッキングは、足に適度な圧力をかけることで血液の逆流を防ぎ、静脈の血流を改善します。
研究では、弾性ストッキングを着用することで、変形性膝関節症患者の膝痛が改善することが確認されています。特に、軽度から中等度の静脈瘤がある方に有効です。
血管内焼灼術:レーザーや高周波による治療
静脈瘤が進行している場合は、血管内焼灼術が選択されます。これは、細い医療用ファイバーを血管内に挿入し、レーザーや高周波の熱で静脈瘤の原因となっている血管を閉塞させる治療法です。
メスを使わないため体への負担が少なく、傷跡も目立ちません。局所麻酔で行え、手術時間は短く、術後の回復も早いため、入院の必要がなく日帰りでご帰宅いただけます。
血管内塞栓術:ぐるー
「血管内塞栓術(けっかんないそくせんじゅつ)」は、カテーテルを用いて病変部の血管を内側から閉塞させ、出血の制御や腫瘍への血流遮断を目的とする低侵襲治療です。コイル、粒子、液体塞栓物質(NBCAなど)を用います。
「ぐるー」は、医療用接着剤タイプの液体塞栓物質(シアノアクリレート系=NBCA)を指すことが多く、血液と接触すると瞬時に重合して血管内で固まり、確実に血流を止めます。動静脈奇形(AVM)、消化管出血、肝腫瘍、産科出血などで用いられ、速効性が利点です。
一方で、非標的部位への流入(迷入)や組織壊死、アレルギー反応などのリスクがあり、熟練した術者による適切な濃度調整・手技が重要です。術後は疼痛や発熱などが一時的にみられることがあります。
動注治療:異常な血管を塞栓する新しいアプローチ
保険診療で改善しない方、さらなる症状の改善を希望する方には、**動注治療**があります。動注治療とは、動脈に薬剤を直接注入する治療で、変形性膝関節症などの慢性炎症に伴って生じる異常な血管を塞栓し、炎症と痛みを和らげます。
この治療は手術をしない方法として注目されており、身体への負担が少ない点が特徴です。日帰りで施術が可能であり、多くの患者様に喜ばれています。
エクソソーム注射:組織修復をサポートする最新治療
**エクソソーム注射**は、細胞から分泌される極めて小さな物質を関節内に注入し、炎症の抑制や組織の修復をサポートする新しい治療法です。
ヒアルロン酸注射や鎮痛薬などで十分な効果が得られなかった方にとって、新たな選択肢となり得る治療法です。施術は日帰りで可能であり、身体への負担が少ない点も特徴とされています。また、メディカルダイエットによる物理的負荷の軽減も効果的です。体重減少により関節や心肺への負担が軽減し、腰痛・膝痛の改善や運動時の息切れが緩和され、日常生活の動作が楽になります。
当院での治療の流れ
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせた最適な治療を提供しています。
初診:問診・触診・画像検査
まず、問診と触診を行い、患者様の症状や生活習慣を詳しくお伺いします。その後、レントゲンや超音波検査などで膝の状態と血管の状態を確認します。
超音波検査では、静脈瘤の有無や程度、静脈弁の機能、血液の逆流の度合いなどを診断することができます。
保険診療での治療
診断結果に基づき、まずは保険診療で可能な限りの治療を行います。ヒアルロン酸注射やステロイド注射、運動療法などを組み合わせて、症状の改善を目指します。
また、弾性ストッキングの着用指導も行います。適切な圧力のストッキングを選び、正しい着用方法をお伝えします。
改善しない場合の追加治療
保険診療で改善しない方、さらなる症状の改善を希望する方へは、手術をしない方法として動注治療やエクソソーム注射やメディカルダイエットを提案します。
これらの治療は、患者様の状態や希望に応じて選択します。治療前には、効果やリスクについて丁寧に説明し、納得いただいた上で施術を行います。
日常生活で気をつけるべきこと
血管性の膝痛を予防・改善するためには、日常生活での工夫も大切です。
避けるべき動作・習慣
- 長時間の立ちっぱなし、座りっぱなし
- お尻を床につけて座る(正座や横座り)
- 和式トイレの使用
- 布団で寝る(横になる、起き上がる、布団を上げ下げする時に膝に負担がかかります)
- 喫煙(軟骨を構成するコラーゲンの生成に欠かせないビタミンCを減少させます)
- 飲み過ぎ(軟骨の弾力性を低下させたり、炎症を悪化させたりします)
おすすめの生活習慣

**適度な運動**は、血液循環を改善し、筋力を維持するために重要です。痛みのない範囲でのウォーキングは、筋力維持・強化に有効です。
**足を高くして休む**ことで、血液が心臓に戻りやすくなり、むくみや痛みが軽減されます。就寝時には、足の下にクッションを置いて、少し高くするとよいでしょう。
**水分補給**も大切です。水分不足は血液の粘度を高め、血流を悪化させます。こまめに水分を摂るよう心がけましょう。
**体重管理**も重要です。肥満は膝への負担を増やすだけでなく、静脈瘤のリスクも高めます。適正体重を維持することで、膝と血管の両方に良い影響があります。
自己流の治療は危険です
変形性膝関節症は、膝の軟骨が擦り減る疾患です。そのため、自然に治るということはありません。
ストレッチや筋力トレーニングなどによって膝への負担を軽減することができますが、自己流でのストレッチ・トレーニングは炎症を強めたり、軟骨のすり減りを加速させる原因になることがあります。
また、血管トラブルが原因の膝痛の場合、整形外科的な治療だけでは改善しないことがあります。適切な診断と治療を受けるためには、血管の状態も評価できる医療機関を受診することが大切です。
ダイエットも有効ですが、食事療法・運動療法を組み合わせて正しく行うためには、やはり医療機関での治療・指導を受けることをおすすめします。
まとめ:膝痛が改善しないときは血管も疑ってみましょう
湿布やリハビリで改善しない膝痛の背景には、下肢静脈瘤などの血管トラブルが隠れている可能性があります。
血液循環の悪化や静脈圧の上昇が、膝周辺の慢性的な炎症を引き起こし、痛みやだるさの原因となります。静脈瘤の治療によって血流が改善されると、膝の痛みが軽減し、歩行が楽になるケースが報告されています。
弾性ストッキングの着用や血管内焼灼術、血管内塞栓術、動注治療、エクソソーム注射など、症状に応じた様々な治療法があります。まずは専門医による適切な診断を受け、血管の状態も含めて総合的に評価してもらうことが大切です。
膝の痛みでお悩みの方は、一度、血管の状態もチェックしてみてはいかがでしょうか。
西梅田静脈瘤・痛みのクリニックへのご相談
当院では、下肢静脈瘤と変形性膝関節症の両方に対応した専門的な治療を提供しています。
放射線診断科専門医として、血管の状態を正確に診断し、患者様一人ひとりに最適な治療法を提案します。保険診療から自費診療まで、幅広い選択肢をご用意していますので、お気軽にご相談ください。
膝の痛みでお悩みの方、従来の治療で改善しなかった方、ぜひ一度、当院にお越しください。血管の視点から、新しい解決策が見つかるかもしれません。
あなたの膝痛、血管トラブルが原因かもしれません。まずは専門医にご相談を。
【著者】
西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義
【略歴】
現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。
下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、
患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。
早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。
【所属学会・資格】
日本医学放射線学会読影専門医、認定医
日本IVR学会専門医
日本脈管学会専門医
下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医
マンモグラフィー読影認定医
本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。
インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。
特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。

