コラム

2026.02.14

慢性前立腺炎が治らない人の共通点とは?泌尿器科医が教える検査・治療・専門外来受診の目安

なかなか治らない違和感、それ慢性前立腺炎かもしれません

「下腹部が重だるい」「会陰部にジワッとした不快感が続く」「排尿後もスッキリしない」。

こうした症状が数週間から数か月以上続いていませんか?我慢できない激痛ではないものの、弱い不快感が長く続く状態は、慢性前立腺炎でみられることがあります。若年から中年男性にも多く、適切な評価と治療により改善が期待できる疾患といえるでしょう。

慢性前立腺炎は、男性人口の10~15%の人がかかっていると言われています。多くの男性が悩んでいる症状にもかかわらず治療法が確立されていないため、通常は痛み止めなどの薬で対処されています。この病気の患者さんの生活の質(Quality of life)に与えるインパクトについては、心筋梗塞や狭心症、クローン病などの病気と同じ位と言われ、生活の質が著しく下がってしまうことが知られています。

当院では、放射線科・IVR専門医として多くの慢性前立腺炎の患者さんと向き合ってきた経験から、画一的な治療ではなく、患者さんそれぞれの症状、生活背景、そして何に一番困っているのかを丁寧にお伺いすることを何よりも大切にしています。

慢性前立腺炎とは何か

慢性前立腺炎とは、前立腺に慢性的な炎症や機能異常が起こり、3か月以上症状が続く状態を指します。

膀胱のすぐ下にあり、精子への栄養供給、pHの調整、精液の濃縮などを行う器官が「前立腺」です。この前立腺に炎症が起こった状態が前立腺炎であり、急性前立腺炎と、3カ月以上症状が続く慢性前立腺炎に分けられます。

急性前立腺炎のほとんどは細菌感染を原因としますが、一方の慢性前立腺炎ではほとんどが原因を特定できません。細菌感染が確認されない「慢性骨盤痛症候群(CPPS)」が多く、排尿や射精に関連する症状が出やすいのが特徴といえるでしょう。

慢性前立腺炎のうちの約1割は、細菌感染を原因として発症します。しかしそれ以外の多くの症例では、はっきりとした原因が特定できません。現在のところ、長時間の坐位や自転車などの圧迫に伴う前立腺への刺激や血流障害、尿の逆流、骨盤周辺の知覚過敏、ホルモンの分泌異常、免疫異常などが発症に影響しているのではないか、と考えられています。

慢性前立腺炎が治らない人の共通点

長引く慢性前立腺炎の患者さんには、いくつかの共通する特徴があります。

まず、生活習慣の中に潜む増悪因子が見逃されているケースが多いです。長時間のデスクワーク、自転車やバイクでの長距離移動、過度の飲酒や喫煙などの血行不良の要因となる生活習慣が続いていると、症状は改善しにくくなります。

また、ストレスや過労、睡眠不足などの自律神経の乱れも症状を悪化させる大きな要因です。慢性的な疲労感や集中力低下を伴う場合、精神的なストレスが痛みを増幅させている可能性があります。

さらに、適切な検査を受けていないケースも少なくありません。慢性前立腺炎の診断は、他の似た症状を呈する疾患(尿路感染症、性感染症、前立腺がん、過活動膀胱など)の可能性を除外した上で行う必要があります。そのため、検査項目がいくつか必要になることもありますが、これは的確な診断と適切な治療方針決定のために不可欠です。

治療に関しても、薬物療法だけに頼っているケースでは改善が難しいことがあります。生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせることで、初めて効果を実感できる方も多くいらっしゃいます。

慢性前立腺炎の症状は?

慢性前立腺炎では、会陰痛(男性で肛門と陰嚢の間)、恥骨上部の痛みに頻尿、切迫尿意、排尿困難などの骨盤全面の症状や肛門直腸周辺に波及し、時には膀胱痛などの症状もあります。

具体的には、以下のような症状が現れます。

  • 排尿困難、頻尿
  • 排尿時の痛み
  • 陰部、下腹部の痛み・不快感
  • 下肢の痛み、しびれ
  • 血尿、残尿感
  • 勃起時の痛み
  • 排尿時、射精時の痛み

坐位で増悪する会陰部、股関節付け根の痛み、排尿時痛などの異常を感じたら、年齢のせいと決めつけず、早めにご相談ください。

臨床経験上、特に会陰部の鈍痛や不快感を訴えられる方が多い印象です。また、症状の強さも一定ではなく、日によって、あるいは時間帯によって変動することがあり、ストレスや疲労が蓄積した翌日に症状が悪化するパターンも少なくありません。

原因は局所的な症状と、その痛みやそれによるストレスの悪循環により引き起こされる全身的な障害を起こすこともあります。頻尿と一日中つづく会陰部や鼠径部の不快感、それが常に気になる感じが更にストレスになります。このストレスと違和感が、睡眠障害を引き起こし更に症状を悪化させます。

慢性前立腺炎の検査と診断

慢性前立腺炎の診断は、他の疾患がないことを確認して診断します。そのため検査の順番は一律ではなく、症状により異なります。疼痛部位によりその対応が異なるため、丁寧な診察や直腸診も重要な検査となります。

NIH慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)

痛みや不快感、排尿の状態、QOL(生活の質)についてアンケート形式で調べるテストです。スコアに応じて、軽度、中等度、重度と判定でき、痛みの場所やお困りのことを把握できます。

尿検査

尿路の炎症がないことを確認します。細菌感染が疑われる場合には、尿検査を行います。前立腺液の細菌検査を行ないます。一般細菌に加え感染のリスクがある場合はクラミジア感染症のチェックも追加します。また、治療に反応しない場合はマイコプラズマ・ウレアプラズマ感染症の検査をお勧めすることもあります。

残尿測定

排尿後、膀胱に超音波を当てて、残っている尿の量を測定します。前立腺炎の多くでは排尿障害の患者さんも多くみられるため、排尿状態の確認を行ないます。

直腸診

前立腺の腫れなどを調べる検査です。医師が手袋をはめて、指を使って直腸から前立腺の状態(特に圧痛があるかどうか)またマッサージ後の症状の変化を調べます。骨盤の状態や、骨盤の痛みを触診にて探ります。

造影剤を使用したMRI

点滴を取って造影剤を入れながらMRIを撮像します。慢性前立腺炎の方は炎症を反映して、早いタイミングで造影剤が炎症のある場所に集積します。

造影剤を使った前立腺のDynamic造影MRI検査では、過敏タイプの前立腺は比較的均一な灰色に見えるのがわかります。それに対して、炎症タイプでは、前立腺が白い部分と黒い部分が入り乱れていて、まだらな模様になっています。慢性前立腺炎全体でみてどちらのタイプの方が多いかと言うと、炎症タイプの方のほうが多くいらっしゃいます。

当院では、各検査の必要性について丁寧にご説明し、ご納得いただいた上で進めてまいりますので、ご不明な点は遠慮なくお尋ねください。

慢性前立腺炎の治療方法

治療では、生活習慣の改善と薬物療法が中心となりますが、それでも中々よくならないという方にはカテーテルによる治療が必要になります。

生活習慣の改善

ストレス、長時間のデスクワーク、過労、飲酒、喫煙は、慢性前立腺炎を悪化させます。これらをできる限り取り除き、食事・運動習慣に気をつけた規則正しい生活を送りましょう。

自転車やバイクでの長距離移動も、できる限り避けましょう。30分に一度は立ったり、座る際円座のクッションなどを使用して前立腺への刺激を減らしましょう。クッションはご自身にあった硬さがあるので、複数のクッションを試す必要があります。

冷えや過度の飲酒、喫煙などの血行不良の要因となる生活習慣は避けましょう。また、座り仕事が続く際には適度に体を動かすこともお勧めしています。短時間の睡眠や休みを取ることも痛みを和らげてくれます。

薬物療法

排尿状態を改善するα1ブロッカー、鎮痛薬、抗生物質等を使った治療を行います。神経性疼痛への効果が期待できるプレガバリンや抗うつ薬、その他漢方を使用することもあります。

アセトアミノフェンや非ステロイド系消炎鎮痛剤を用います。神経障害疼痛に用いられるプレガバリンの有用性が示されています。SSRI等の抗うつ薬も心因性の痛みのみならず、身体性の痛みにも効果があります。漢方薬も有効な場合があり末梢血液循環の改善による効果が支持されています。

薬物療法は疼痛部位により薬剤単独での投与よりも、いくつかを組み合わせることで効果を現すこともあり、当院では、いくつかの種類を組み合わせ使い分けています。

カテーテル治療

前立腺炎に伴い炎症血管が生じている場合には、カテーテル治療が有効です。動脈にカテーテルを挿入し、イミペネム・シラスタチンという塞栓物質/抗生剤を炎症を起こした血管に注入することで、炎症と痛みの緩和が期待できます。

前立腺炎にできた異常な血管を標的とした全く新しい治療法です。血管の内側には神経が走っていないため、カテーテルを操作しても全く痛くありません。足の付け根にカテーテルを入れる際にチクッと言う採血の時と同じような痛みがあります。その後は特に痛くなく治療を終えることができます。

術前のMRIではっきりと炎症が確認される方に関しては85%の方で症状の改善が期待できますが、反対に炎症がはっきりしない場合は40%程度の方に症状の改善が見られます。治療時間は20分~60分程度で術後1時間安静し、帰宅可能です。

全身麻酔ではなく局所麻酔で治療します。日帰り治療で、30分~1時間ほどで終わります。そのまま歩いて帰って日常生活を続けられますし、翌日以降も仕事もできます。

カテーテル治療は完全自費診療になりますが、医療行為の区分としては「手術」にあたります。そのため医療保険に加入されている方であれば、加入された保険のタイプによっては給付金が受け取れることがあります。詳細は加入されている保険会社の相談窓口などでお問い合わせください。

理学療法

多くの慢性骨盤痛症候群(CPPS)の病因は骨盤の緊張でおこるともいわれます。そのため、生活指導を中心に治療を行うこともあります。多くの患者さまで、ジョギングや下肢の運動を推奨もしています。また、骨盤のストレッチや骨盤底筋体操の指導も行っております。

治るまでどれぐらいかかる?専門外来受診の目安

慢性前立腺炎の症状が出始めてからすぐに適切な治療を受けられれば、6週間以内に約半数の症例で症状が改善または消失します。

当院では既存の治療では症状の改善に乏しい難治性の慢性前立腺炎の方に対して、カテーテル治療を積極的に行っています。カテーテル治療は即効性のある治療ではなく、3週間~3か月程度で徐々に効果を実感する治療となります。段階的に改善する方がほとんどなので、6週間~3か月後に2回目のカテーテル治療を行うことをお勧めします。

以下のような場合は、専門外来の受診を検討してください。

  • 会陰部や下腹部の違和感が1か月以上続く場合
  • 泌尿器科で「異常なし」と言われたのに症状が続いている
  • 座っていると会陰部に痛みや違和感がある
  • 排尿や性行為に関する悩みを誰にも相談できない
  • 痛み止めを飲んでも改善しない
  • 「ストレスが原因」と言われたが納得できない

痛みや違和感は”気のせい”ではありません。早めに原因を見つけて、体も心も楽になる治療を始めましょう。

慢性前立腺炎は長期にわたって症状が続く場合もありますが、適切な治療と自己管理により症状を改善し、生活の質を向上させることが可能です。

治療中にやってはいけないことはある?生活上の注意点

コーヒーなぜよくない?注意すべき食べ物とは

治療中は、コーヒーや紅茶などのカフェインを含む食品、唐辛子やワサビなどの膀胱粘膜を刺激する食品の摂り過ぎはお控えください。カフェインには利尿作用があり、頻尿の原因となります。

ストレッチや運動をして長時間の座位をさける

デスクワーク、自転車・バイクなどによる長時間の座位は、会陰部に負担がかかり、症状を悪化させるおそれがあります。自転車・バイクなどを趣味で楽しんでいる方もいらっしゃいますが、少なくとも治療中はできる限り控えましょう。

デスクワークをする場合も、30分に一度は立ち上がってストレッチをしたり、近くを歩いたりして、会陰部を圧迫から解放するようにしてください。

治療中の性行為について

クラミジアなどの細菌感染でない限り、治療中に性行為をすることに問題はありません。細菌感染が原因である場合には、医師から許可を得てから再開するようにしてください。

まとめ

慢性前立腺炎は、見えない痛みや不安に悩まされる病気です。

当院では、症状の原因を丁寧に探り、骨盤・神経・血流・生活習慣など、全身を視野に入れた治療を行っています。つらい痛みを我慢せず、どうぞお気軽にご相談ください。

慢性前立腺炎の診療には、長期にわたる経過観察と治療の工夫が必要です。丁寧な問診と個別対応を重視しています。

「何をしても治らない」とあきらめていた方が、痛みが軽くなり、日常生活を取り戻しているケースも多くあります。

どこに相談すれば良いか分からない、他の医療機関ではなかなか改善しなかったという方も、どうぞ諦めずにご相談ください。

慢性前立腺炎でお悩みの方、詳しい検査や治療についてお知りになりたい方は、ぜひ一度当院までご相談ください。西梅田 慢性前立腺炎の専門外来で、あなたに合った治療法をご提案いたします。

【著者】

西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック 院長 小田 晃義

【略歴】

現在は大阪・西梅田にて「西梅田 静脈瘤・痛みのクリニック」の院長を務める。

下肢静脈瘤の日帰りレーザー手術・グルー治療(血管内塞栓術)・カテーテル治療、再発予防指導を得意とし、

患者様一人ひとりの状態に合わせたオーダーメイド医療を提供している。

早期診断・早期治療”を軸に、「足のだるさ・むくみ・痛み」の原因を根本から改善することを目的とした診療方針を掲げ、静脈瘤だけでなく神経障害性疼痛・慢性腰痛・坐骨神経痛にも対応している。

【所属学会・資格】

日本医学放射線学会読影専門医、認定医

日本IVR学会専門医

日本脈管学会専門医

下肢静脈瘤血管内焼灼術指導医、実施医

マンモグラフィー読影認定医

本記事は、日々の臨床現場での経験と、医学的根拠に基づいた情報をもとに監修・執筆しています。

インターネットには誤解を招く情報も多くありますが、当院では医学的エビデンスに基づいた正確で信頼性のある情報提供を重視しています。

特に下肢静脈瘤や慢性疼痛は、自己判断では悪化を招くケースも多いため、正しい知識を広く伝えることを使命と考えています。