腱鞘炎(ばね指)

指の曲げ伸ばしがしにくくなる「ばね指」とは

指の曲げ伸ばしがしにくくなる「ばね指」とは指の曲げ伸ばしという動作は、屈筋腱が筋肉の収縮を関節に伝えることでなされます。屈筋腱は腱鞘と呼ばれるトンネルの中を通っており、この腱鞘が腱の浮き上がりを防ぎ、かつ滑車のような役割で力を正しく伝えているのです。
「ばね指」では、腱鞘で炎症が起こることで、腱がスムーズに動かなくなる疾患です。指の動きの制限とともに、痛みが生じます。
どの指にも起こりますが、特に親指、中指、薬指での頻度が高くなります。また、多くは第二関節で発症します。

ばね指の原因となりやすい人

指を曲げる屈筋腱は、親指に1本、その他の指には2本存在します。それぞれの腱が通る腱鞘で炎症が起こることで、ばね指を発症します。
特に、以下に該当する人は、ばね指になりやすいと言えます。更年期や妊娠・出産については、女性ホルモンのバランスの変化が影響しているものと考えられます。

ばね指の原因となりやすい人

  • タイピングなど、仕事で指を酷使する人
  • テニス、バドミントン、卓球などのラケット競技をする人
  • 家事をする人、趣味で手指を使う人
  • 更年期の人、妊娠・出産後の人

ばね指の症状と放置するリスク

初期症状について

  • 親指の付け根の関節、第二関節での痛み
  • 指の可動域の制限
  • 指を伸ばすときの引っ掛かり感、バネのように伸びる

主に、上記のような症状が見られます。放置すると、拘縮が起こります。

なぜ朝だけ痛くなる?

ばね指の症状が朝だけ出る、というケースは少なくありません。
なぜこのようなことが起こるのか、はっきりしたことは分かっていません。しかし、夜間には指を安静にしているため、炎症で腱がむくむことが関係しているのではないかと言われています。

放置するとどうなる?

放置するとどうなる?

ばね指を放置していると、次第に拘縮が進みます。
曲がったまま伸ばすことが難しい、一定以上曲がらないといったことが起こります。当然、日常生活への影響も大きくなります。
長期間放置したことで、隣の指が動きにくくなることもあります。

ばね指の検査・診断

問診、触診を行い、診断します。
関節リウマチやヘバーデン結節、ブシャール結節との鑑別のため、レントゲン検査を追加することもあります。

ばね指の治療法

保存療法

安静の上、消炎鎮痛剤の内服・外用による薬物療法、温熱療法を行います。安静が難しい場合には、装具療法を導入することもあります。 その他、痛みが強い場合など、限定的にステロイド注射を行うこともあります。
ステロイド注射は超音波で腱とその周辺を観察しながら、薬液(ステロイド)を注入して炎症を改善させる治療です。
筋肉の動きが改善され、痛みの軽減が期待できます。

動注治療(動脈注射治療)

炎症により異常な新生血管が生じている場合には、動注治療を行います。 動脈に細い針を刺して、そこから新生血管に蓋をして、炎症・痛みの軽減を図ります

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切らないばね指の治療

ばね指(狭窄性腱鞘炎)は、指の曲げ伸ばしがスムーズにできず「カクッ」と引っかかる症状が特徴です。
近年、切らないばね指治療(超音波ガイド下腱鞘リリース)が注目されており、従来の切開手術に比べて身体への負担が少なく、早期復帰が期待できます。

ここでは、切らない治療と従来の手術の違い、メリット・デメリット、治療の流れ、費用の目安について詳しく解説します。

切らないばね指の治療
どんな治療?

超音波(エコー)を使って、A1プーリーを正確に確認しながら、1~2mmほどの極小の針穴から腱鞘を切開する治療です。

皮膚を切開しないため、「切らないばね指手術」と呼ばれています。

特徴・メリット
  • 皮膚を切らないため傷がほぼ残らない
  • 痛みや腫れが軽度
  • 5~10分で終了する短時間治療
  • 日常生活や仕事への復帰が早い
  • 感染リスクが極めて低い
  • 複数指も同日に対応しやすい
デメリット・注意点
  • 重度の腱の変性がある場合は適応とならないことがある
  • エコー操作と技術が必要なため、実施施設が限られる
従来のばね指手術(切開手術)とは?
方法

手のひらを約1~2cm切開してA1プーリーを直接目で確認しながら切開します。

局所麻酔で行う外来手術です。

メリット
  • どのような状態のばね指にも広く対応可能
  • 歴史が長く、標準的な治療として確立している
デメリット
  • 皮膚に切開が必要なため傷跡が残る
  • 術後の痛み・腫れが比較的強い
  • 縫合が必要で抜糸まで約1~2週間かかる
  • 仕事・家事の復帰に時間がかかることもある
  • 感染や神経障害などのリスクがわずかにある
切らない治療 vs 従来手術の比較表
切らないばね指治療(超音波ガイド下) 従来の切開手術
皮膚の切開 ほぼなし(針穴のみ) 約1–2cmの切開
傷跡 ほとんど目立たない 手のひらに残りやすい
手術時間 5〜10分程度 15〜20分
術後の痛み 少ない やや強いことがある
仕事・家事復帰 当日〜翌日 数日〜1週間以上
感染リスク 非常に低い 低いがゼロではない
適応 中等度までが中心 すべてのばね指に対応可能
実施施設 限られる 多い
費用 70,000円(自費診療) 10,000円(保険診療)

※親指は切らないばね指の手術は対応できません。

どちらの治療が良いのか?
  • できるだけ早く復帰したい
  • 傷跡を残したくない
  • 痛みや腫れを最小限にしたい

→ 切らないばね指治療が適していることが多い

  • 重度の腱変性がある
  • 再発例で癒着が強い
  • 周囲組織の評価が必要

→ 従来の切開手術が適する場合がある 個々の状態により最適な治療は異なるため、エコーでの詳細な診察が重要です。

まとめ|ばね指は“切らない手術”が新しいスタンダードに
  • 傷がほぼ残らない
  • 早期復帰
  • 痛みが少ない

こうした理由から、超音波ガイド下腱鞘リリースは現代のばね指治療として急速に広まりつつあります。

ばね指になったときにやってはいけないこと

無理なストレッチ

無理なストレッチ

指の動きづらさを感じると、ついストレッチで筋肉や腱を伸ばしたくなります。しかし、炎症が起こっている状態でのストレッチは、逆効果になることがあります。特に、痛みが強くなるような無理なストレッチは絶対に行わないようにしてください。
痛みがあるうちは、安静が基本となります。

無理なマッサージ

指で強く押すなどの無理なマッサージも厳禁です。ストレッチと同様に、炎症が悪化するおそれがあります。
症状が気になるかとは思いますが、医師の指示がない限り、マッサージは控えましょう。

放置する

炎症がごく軽い場合など、限られたケースでは、安静に努めることで自然に治癒することがあります。
しかし通常、安静の必要性に気づくのはある程度炎症・痛みが強くなってからです。症状に気づいた時点で、自然治癒に期待するのではなく、安静を保って早めに医療機関を受診することをおすすめします。

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